「手取りが26万円から45万円くらいになった」という、いわゆる中堅層の会社員に向けた記事です。額面の年収がいくらなのか、そして年収が上がるほど手取りの増え方がどう変わっていくのかを、編集部で実際に試算しました。
なお、社会保険料や税金の内訳、天引きされる仕組みの基礎については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 手取り26万〜45万円は、額面でいくらの年収に当たるか
まずは、今回の対象となる手取り帯が、額面ではどのくらいの年収に当たるのかを確認します。
1.1 5段階で見る、手取りと額面年収の対応
編集部で、東京23区在住・40歳未満・独身・扶養家族なし・ボーナスなし(月給×12を年収とする)という条件で、毎月の手取りが26万円・30万円・35万円・40万円・45万円になる額面の月収と年収を試算しました。
標準報酬月額の32等級による端数は考慮していない概算です。ボーナスの有無や扶養家族の人数、住んでいる地域によっても、必要な額面は変わります。
1.2 【手取り26万〜45万円に対応する額面年収の早見表】
手取り約26万円の場合
- 手取り月額:約26万円
- 額面月収:約32万7000円
- 額面年収:約393万円
- 所得税の基礎控除:104万円
手取り約30万円の場合
- 手取り月額:約30万円
- 額面月収:約38万円
- 額面年収:約456万円
- 所得税の基礎控除:104万円
手取り約35万円の場合
- 手取り月額:約35万円
- 額面月収:約44万7000円
- 額面年収:約536万円
- 所得税の基礎控除:104万円
手取り約40万円の場合
- 手取り月額:約40万円
- 額面月収:約51万6000円
- 額面年収:約620万円
- 所得税の基礎控除:104万円
手取り約45万円の場合
- 手取り月額:約45万円
- 額面月収:約59万5000円
- 額面年収:約714万円
- 所得税の基礎控除:67万円
2. なぜ「額面の75〜80%」という目安ではズレるのか
ネット上でよく見かける「手取りは額面のおおむね75〜80%」という目安は、あくまで大まかな傾向にすぎません。実際に引かれているのは、性質の異なる2種類の負担です。
2.1 社会保険料と税金、増え方の違う2つの引かれ方
1つは、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・子ども子育て支援金といった社会保険料です。会社員の場合、本人負担はおおむね収入に比例して増えていきます。
具体的な料率で見ると、健康保険料は労使折半で本人負担4.925%、厚生年金保険料は同じく本人負担9.15%です。雇用保険料は本人負担0.5%、令和8年4月分から徴収が始まった子ども・子育て支援金は本人負担0.115%です。
もう1つは所得税・住民税です。こちらは収入が増えるほど税率区分そのものが上がっていく累進課税のため、社会保険料よりも増え方が急になります。
国税庁の民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の令和6年分の平均給与は478万円でした。今回試算した手取り月30万円台(額面年収456万円)は、平均給与とほぼ同じ水準にあたります。
いわゆる「年収の壁」は、扶養控除や配偶者控除の対象から外れるかどうかを分ける基準です(年収の壁178万円の基本や103万・130万など他の「年収の壁」との違いで詳しく解説しています)。今回の記事が扱うのは、扶養の有無とは関係のない、税額計算そのものの中にある壁です。
3. 【核心】基礎控除は額面年収666万円を境に104万円→67万円へ一気に縮む
先ほどの表で、基礎控除の欄がほとんど104万円で、手取り45万円の行だけ67万円になっていたことに、あらためて注目してください。所得税の基礎控除は、所得の区分に応じて段階的に決まる仕組みになっています。
国税庁が令和8年4月に公表した資料によると、令和8年分・令和9年分の基礎控除は、合計所得489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円、655万円超2350万円以下なら62万円です。489万円という1つの区切りで、控除額が37万円も変わります。
3.1 額面年収666万円が、手取り26万〜45万円の中に潜む分岐点
この489万円という所得区分の境目を、額面年収に編集部で換算しました。給与所得控除を差し引いた後の所得が489万円に達するのは、額面年収がおよそ666万円のときです。
手取り月額に換算すると、およそ42万4000円にあたります。今回の記事が扱う手取り26万〜45万円という範囲では、45万円の行だけがこの分岐点を超え、26万〜40万円の4パターンはすべて104万円の側にとどまります。
実はこの基礎控除、令和8年4月の改正前は合計所得132万円以下95万円・132万円超336万円以下88万円・336万円超489万円以下68万円・489万円超655万円以下63万円という、もう少し細かい段差でした。改正後は132万円以下・132万円超336万円以下・336万円超489万円以下の3区分がすべて104万円に統合され、489万円を超えると一気に67万円まで下がります。
489万円の境目での下げ幅は、改正前が5万円(68万円→63万円)だったのに対し、改正後は37万円(104万円→67万円)に広がっています。一方、改正前は独立して存在した336万円の崖(88万円→68万円、20万円分)は、今回の改正で104万円に吸収され姿を消しました。
4. 【編集者の視点】
基礎控除の区分は、給与所得控除を差し引いた後の「合計所得金額」で決まります。年収の額面だけを見て自己判断すると、489万円の境目付近では判断を誤りやすいので注意が必要です。
特に、賞与や残業代の増減で年収が666万円のボーダーをまたいで動くような年は、基礎控除が104万円から67万円に切り替わっている可能性があります。前年の源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の欄を確認すると、自分がどちらの区分に該当するかが分かります。
控除区分をまたいだかどうかを厳密に知りたい場合は、年末調整の書類を提出する前に、勤務先の給与担当窓口や税務署の相談窓口に確認しておくと安心です。
5. 手取りを1万円増やすのに必要な額面は、区分ごとに重くなる
基礎控除が489万円を境に一気に縮小するということは、額面が同じだけ増えても、手取りに反映される割合がその前後で変わるということです。編集部で、額面年収400万円台・550万円台・700万円台のそれぞれについて、額面が10万円増えたときに手取りがいくら増えるかを試算しました。
5.1 【額面10万円増あたりの手取り増加額】
額面年収約400万円の水準
- 額面年収:約400万円
- 実効手取り率:約75.4%
- 手取り1万円増に必要な額面:約1万3300円
額面年収約550万円の水準
- 額面年収:約550万円
- 実効手取り率:約72.1%
- 手取り1万円増に必要な額面:約1万3900円
額面年収約700万円の水準
- 額面年収:約700万円
- 実効手取り率:約62.4%
- 手取り1万円増に必要な額面:約1万6000円
額面年収が400万円台から700万円台に上がると、実効手取り率はおよそ13ポイント下がります。手取りを同じ1万円増やすのに必要な額面も、約1万3300円から約1万6000円へと重くなっていきます。
700万円台で負担が特に重くなるのには、もう1つ理由があります。国税庁の税率表によると、所得税は課税所得330万円を境に税率が10%から20%に上がります。基礎控除の崖と税率区分の上昇が、この収入帯で重なるためです。
6. 中堅層で見落としやすい、もう1つの実務の罠
年収が上がる年ほど、翌年の手取りの感覚に注意が必要です。住民税には、所得税とは違うタイムラグがあるためです。
6.1 住民税は「前年の所得」を基準に、翌年6月から天引きされる
東京都主税局によると、個人住民税の所得割は前年の所得金額に応じて課税されます。給与所得者の場合、6月から翌年5月までの毎月の給与から特別徴収される仕組みです。
つまり、今年大きく昇給した場合、その分の住民税が実際に天引きされ始めるのは翌年6月からになります。逆に、転職や休職で今年の年収が下がった場合も、住民税の負担が軽くなるのは翌年6月からです。
たとえば、課税所得が100万円増えたケースで考えると、住民税の所得割はおよそ10万円増えます。この増加分が給与から天引きされ始めるのは、あくまで昇給した年の翌年6月からです。
7. 【編集者の視点】
中堅層で昇進・異動が重なる年は、額面が上がったのに手取りの増え方が鈍く感じられることがあります。基礎控除の区分が変わったことに加えて、前年の低い年収を基準にした住民税がまだ続いている場合、逆に手取りが一時的に多く感じられることもあります。
年収の変化が大きかった年の翌年は、住民税額決定通知書(給与担当部署から配布される書類)で、前年のどの年収を基準に計算されているかを確認しておくと、家計の見通しが立てやすくなります。
ふるさと納税の控除上限額も、当年の所得を基準に決まります。住民税のタイムラグと混同しないよう、シミュレーションはその年の源泉徴収票の見込み額を使って行ってください。
※本記事は、編集部が国税庁・東京都主税局・全国健康保険協会・日本年金機構・厚生労働省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
8. 自分の位置を給与明細・源泉徴収票で確認する方法
ここまでの試算はあくまで前提条件付きの概算です。自分が実際にどちらの区分にいるのかは、手元の書類で確認できます。
8.1 見るべきは3つの欄
まず、給与明細の「総支給額」を1年分合計すると、自分のおおよその額面年収が分かります。賞与がある場合は、その分も忘れずに合計してください。
次に、年末に勤務先から配られる源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の欄を確認します。この金額が489万円以下か超えるかで、自分の基礎控除額が104万円か67万円かが分かります。
最後に、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」の欄で、その年に実際に天引きされた社会保険料の年間合計を確認できます。今回の試算と照らし合わせる際の目安になります。
3つの欄を毎年見比べておくと、自分がいつ489万円の分岐点をまたいだのかが振り返りやすくなります。昇給や転職のタイミングで手取りの伸びに違和感を覚えたときの、確認の出発点にしてください。
9. まとめ
- 手取り月26万円・30万円・35万円・40万円・45万円に対応する額面年収は、編集部の試算でそれぞれ約393万円・約456万円・約536万円・約620万円・約714万円です。
- 所得税の基礎控除は、額面年収およそ666万円(合計所得489万円)を境に、104万円から67万円へ37万円分縮小します。
- この崖は令和8年4月の改正前(68万円→63万円、5万円分の下げ幅)より、むしろ急になっています。改正前に別途あった336万円の崖は今回の改正で消えました。
- 住民税は前年の所得を基準に翌年6月から反映されるため、昇給の年と手取りの実感がずれることがあります。
手取り26万〜45万円という中堅層の年収帯は、単に額面が増えていくだけの区間ではなく、基礎控除が大きく切り替わる666万円という分岐点に近づいていく区間でもあります。「控除が増えた」という報道だけを見て年収を見積もると、この崖を見落としがちです。
自分がどちらの区分に近いのかを知りたい場合は、まず前年の源泉徴収票にある「給与所得控除後の金額」を確認し、今回の早見表と照らし合わせてみてください。489万円の境目に近い方は、年末調整や確定申告の際に勤務先や税務署へ確認しておくとより安心です。
10. よくある質問
10.1 Q. 手取り30万円は額面でいくらぐらいになりますか?
A. 東京23区在住・40歳未満・独身・扶養家族なし・ボーナスなしという条件で編集部が試算したところ、額面年収は約456万円でした。地域や家族構成、ボーナスの有無によって必要な額面は変わります。
10.2 Q. 手取り35万円と40万円では、必要な額面年収の差はどのくらいですか?
A. 編集部の試算では、手取り35万円が額面年収約536万円、40万円が約620万円です。この2つの水準はどちらも基礎控除104万円の区分に入っており、489万円のような大きな分岐点はまたいでいません。
10.3 Q. 住んでいる地域によって、この試算はどのくらい変わりますか?
A. 協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに毎年見直されており、東京都は令和8年度で9.85%です。他の都道府県では料率が異なるため、同じ手取りでも必要な額面年収が今回の試算とずれる可能性があります。
10.4 Q. なぜ年収が上がるほど、手取りの増え方が鈍く感じるのですか?
A. 所得税の基礎控除が額面年収およそ666万円を境に104万円から67万円へ大きく縮小し、あわせて所得税率の区分も上がっていくためです。額面の伸びに対して、手取りに反映される割合が徐々に小さくなっていきます。
10.5 Q. 扶養家族がいる場合、この記事の年収より低くても同じ手取りになりますか?
A. 扶養控除や配偶者控除の対象がいる場合、所得税・住民税の負担が軽くなるため、今回の試算より低い額面年収で同じ手取りに届く可能性があります。今回の試算は独身・扶養家族なしを前提にしています。
10.6 Q. ボーナスがある場合はどう考えればよいですか?
A. 今回の試算は月給×12を年収とする前提のため、ボーナスを含む年収で同じ手取りを目指す場合は、月給とボーナスの配分によって必要な額面年収の内訳が変わります。厚生年金保険料は賞与にも別枠の上限があります。
10.7 Q. 会社員ではなく個人事業主やフリーランスの場合はどうなりますか?
A. 今回の試算は厚生年金保険・協会けんぽに加入する会社員を前提にしています。個人事業主やフリーランスは国民年金・国民健康保険に加入するため保険料の計算方法が異なり、今回の試算をそのまま当てはめることはできません。
参考資料
- 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」
- 国税庁タックスアンサー No.1410「給与所得控除」
- 東京都主税局「個人住民税」
- 全国健康保険協会「令和8年度保険料額表(東京支部)」
- 全国健康保険協会「子ども・子育て支援金について」
- 厚生労働省「令和8年度雇用保険料率のご案内」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
LIMO編集部年収解説班

