毎年9月ごろになると、年金受給者の一部に日本年金機構から「扶養親族等申告書」が届きます。
今年(令和8年)秋に届く書類は「令和9年分」の申告書ですが、実は令和9年分から、申告書が届く対象者の基準が大きく広がりました。

「これまで届いたことがないから、今回も自分には関係ない」と確認せずに放置してしまうと、思わぬ損をしてしまうかもしれません。この申告書は、正しく書いて提出することで「年金の手取り額を守れる」「翌年の介護保険料や医療費の負担を抑えられる」「面倒な確定申告の手間を省ける」という大きなメリットがあります。

この記事では、令和9年分から広がった「申告書が届く基準」と、届いた際に見逃せないメリット、そして紙・電子どちらでも提出できる仕組みについて分かりやすく解説します。

1. 申告書を出すことで得られる「3つのメリット」

届いた扶養親族等申告書を忘れずに提出すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。大きなメリットは次の3点です。

1.1 毎回の年金から引かれる所得税が抑えられ、手取りが増える

配偶者控除や障害者控除などが正しく適用されるため、年金から天引きされる所得税が安くなり、受け取れる手取り額を守ることができます。

1.2 翌年の「住民税・介護保険料・医療費自己負担」が安くなる

申告書の内容は市区町村の住民税の計算にも使われます。控除が適用されて課税所得が低く抑えられると、住民税だけでなく、連動して決まる国民健康保険料や介護保険料が安くなったり、病院・介護サービスの窓口負担割合(1割〜3割)の上昇を防げたりします。

1.3 わざわざ混雑する時期に「確定申告」をしなくて済む

もし提出を忘れても後から確定申告を行えば税金は戻ってきますが、冬〜春の混雑する税務署や役所へ出向く手間が発生します。期限内に申告書を出しておけば、余計な手続きなしで自動的に税額が安くなります。

自分や家族の控除が正しく反映されるかどうかで、年間で数万円単位の手取り差が出るケースも少なくありません。

では、なぜ今回からこの申告書が届く人が増えたのでしょうか。制度の仕組みから詳しく見ていきましょう。

2. 扶養親族等申告書は、所得税と住民税、両方の控除のための書類

扶養親族等申告書は、年金から源泉徴収される所得税や、お住まいの市区町村から課税される住民税について、配偶者控除や扶養控除といった控除を受けるために提出する書類です。

2.1 提出しないと、控除が反映されないまま税金が引かれる

申告書を提出しないと、配偶者控除や扶養控除が反映されない状態で所得税が源泉徴収されるほか、住民税の控除も適用されません。後日、確定申告や住民税の申告をすれば控除を受けられますが、それまでの間は税金の負担が本来より重い状態が続きます。住民税の課税所得は、国民健康保険料や介護保険料、医療費の窓口負担割合など、ほかの制度の計算にも使われることがあるため、控除の適用漏れは思わぬところに影響することもあります。

3. 令和9年分から「申告書が届く基準」が大きく広がった

令和8年度の税制改正により、令和9年分の申告書からは住民税の控除手続きもあわせてカバーするため、申告書が届く対象者の範囲が大きく広がりました。

3.1 住民税の非課税限度額をもとに、届く基準が決まる

具体的には、老齢年金の年額が、お住まいの地域の「住民税の非課税限度額」以上になる方に、日本年金機構から申告書のお知らせ(紙または電子)が届きます。非課税限度額は、生活保護の基準にもとづいて市区町村ごとに1級地から3級地に分かれており、金額は次のとおりです。

住民税の非課税限度額(級地区分別)2/4

住民税の非課税限度額(級地区分別)

出所:日本年金機構「扶養親族等申告書の提出」をもとにLIMO編集部作成

ご自身の市区町村がどの級地に当たるかがわからなくても心配はいりません。日本年金機構では、どの地域の方にも漏れなく書類が届くよう、最も基準額が低い「3級地」の金額(65歳未満98万円以上、65歳以上148万円以上、退職共済年金の受給者は70万円以上)を、申告書を送付するかどうかの基準として全国一律に使っています。

3.2 基準を超えていても、家族構成によっては提出不要な場合がある

非課税限度額以上の老齢年金を受け取っている方でも、申告書の提出が必要になるのは、寡婦・ひとり親・障害者に該当する方や、控除対象になる配偶者・扶養親族がいる方です。該当する家族がいない場合は、提出しなくても差し支えありません。

和田直子
「自分の地域が何級地か分からないから、提出していいか判断できない」と迷う必要はありません。届いた申告書に記載されている年金額の基準を満たしていて、配偶者控除や扶養控除の対象になる家族がいるなら、地域にかかわらず提出して問題ありません。控除の適用漏れは、翌年の住民税だけでなく、国民健康保険料や介護保険料などにも影響することがあるため、対象になりそうな方は忘れずに提出しておきましょう。