4. 運用しながら取り崩す。60歳代の「出口戦略」

60歳代の新NISA活用でもうひとつ重要なのが、資産を「増やす」だけでなく「計画的に取り崩す」出口戦略です。

4.1 70歳時点の資産を取り崩すと何年もつか

先ほどの試算で60歳から70歳まで月5万円・年5%で積み立てた資産776万円をもとに、70歳から取り崩した場合の試算をしてみます。運用をせずに取り崩す場合、月5万円なら約12年11か月(82歳頃まで)、月10万円なら約6年5か月(76歳頃まで)、月15万円なら約4年3か月(74歳頃まで)資産がもちます。運用を続けながら年3%で取り崩した場合は、それぞれ約16年4か月(86歳頃まで)、約7年2か月(77歳頃まで)、約4年7か月(74歳頃まで)と、取り崩しながらの運用によって資産の持続期間を延ばせる余地があることがわかります。

70歳時点の資産776万円を毎月取り崩した場合、何年もつかの試算表2/2

70歳時点の資産776万円を毎月取り崩した場合、何年もつかの試算表

LIMO編集部作成

4.2 取り崩し方法の選び方と、年金受給とのタイミング調整

取り崩し方法には、毎月一定額を引き出す「定額取り崩し」と、資産残高に対して一定の割合を引き出す「定率取り崩し」があります。定額取り崩しは生活費の計算がしやすい一方、資産が目減りしていく局面でも同じ金額を取り崩し続けるため、想定より早く資産が尽きるリスクがあります。定率取り崩しは、資産残高に応じて取り崩し額そのものが変動するため、資産を長持ちさせやすいという特徴があります。

また、公的年金の受給開始年齢とのタイミング調整も欠かせません。65歳から年金を受け取り始める場合、60歳から65歳までの「つなぎ」の期間だけ多めに取り崩し、年金受給開始後は生活費の不足分だけを新NISAの資産から補う、といった組み合わせ方も考えられます。取り崩しの計画は、新NISAの資産単体ではなく、公的年金や退職金など老後資金全体の中でどう位置づけるかという視点で考えることが大切です。

和田直子
取り崩しというと「資産を切り崩す」というマイナスのイメージを持たれがちですが、新NISAは非課税保有期間が無期限になったことで、必要なときに必要な分だけ引き出しながら、残りは引き続き非課税で運用し続けられる制度になっています。年金の受給開始時期とあわせて、いつ・いくら取り崩すのかをあらかじめ大まかに決めておくと、いざというときに慌てずに済みます。

5. まとめ

2024年からの新NISAは非課税保有期間が無期限化されたことで、60歳代から始めても長期にわたって非課税の恩恵を受けられる制度になりました。60歳時点の平均余命を踏まえると、数十年単位の時間軸で資産と向き合う余地は十分にあります。

一方で60歳代は、下落から回復するまでの時間的な余裕が現役世代より限られる年代でもあります。退職金などまとまった資金は時間を分けて投資し、資産の一部は値動きを抑えた配分にするなど「守りながら増やす」意識を持ちながら、公的年金の受給時期とあわせて取り崩し方まで計画しておくことが、60歳代からの新NISA活用のポイントです。

参考資料

和田 直子