10月15日に振り込まれた年金を見て、8月と金額が違うことに気づく人もいらっしゃるでしょう。数百円のこともあれば、数千円動くこともあります。

手続きをした覚えもないのに、なぜ変わるのか。理由は、10月が年金からの天引きの切り替わり月にあたるためです。

加藤 聖人
秋になると「年金が減ったのはなぜか」というご相談を毎年いただきます。多くは制度どおりの動きで、ご本人に落ち度はありません。それでも理由が分からないままだと、不安だけが残ります。金額が動いたときこそ、内訳を確かめる機会だとお考えください。

厚生年金の平均は月15万289円(基礎年金を含む)。この金額から何がいくら引かれ、手元にいくら残るのか、2026年10月に何が起きるのかとあわせて解説します。

なお、年金から天引きされるものの内訳については、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

1. 【2026年10月】後期高齢者医療の負担が変化。「医療分」の平均保険料は年6935円増

今年の10月に効いてくるのは、後期高齢者医療保険料の引き上げです。保険料率は2年ごとに見直され、2026年度がその改定年にあたります。

1.1 保険料は全国平均で年6935円上がった

厚生労働省によると、後期高齢者医療制度の被保険者一人当たり平均保険料額(医療分)は、2026・2027年度の全国平均で年額9万5875円。2024・2025年度は8万8940円でした。

差は年6935円、率にして7.8%の増加です。

均等割額は年5万389円から5万6083円へ増加。所得割率は10.21%から10.17%へわずかに下がりましたが、均等割の上げ幅がそれを上回りました。

所得の低い人ほど均等割の影響を受けやすいため、この形の改定は負担感が広く出ます。

※2026年度からは「子ども・子育て支援金」も医療保険料とあわせて徴収されます。

1.2 増えた分は10月からの3回に寄る

年6935円の増加は、4月から均等に薄まるわけではありません。10月からの3回に集中して反映されます。

理由は次章で説明しますが、仮に年間保険料が前年より6000円増えたとします。

4~8月の仮徴収額が前年2月と同額だった場合、差額は10月・12月・翌2月の本徴収で調整されるため、後半3回の天引き額が1回あたり約2000円増えるケースがあります。

2. なぜ10月なのか|仮徴収と本徴収

年金からの天引きは、1年を前半と後半に分けて考えます。前半を「仮徴収」、後半を「本徴収」と呼びます。

2.1 4月・6月・8月は原則「前年度2月と同額」

保険料は前年の所得をもとに決まります。ところが、その年度の保険料額が確定するのは夏ごろ。4月の時点では、まだ金額が出ていません。

そこで4月・6月・8月は、前年度の2月に引かれた額をそのまま引いておきます。これが仮徴収です。

その年度の最終的な年間保険料額が確定する前に、暫定的に徴収する金額です。

前年度に特別徴収を受けていなかった人は、前年度の保険料額をもとに算定した額を、4月から9月までの支払い回数で割った額が引かれます。

2.2 10月・12月・2月で1年分のつじつまを合わせる

年度の保険料が確定すると、10月から本徴収に切り替わります。

計算式は、その年度の保険料額から仮徴収の合計を差し引き、残りを10月から翌年3月までの支払い回数、つまり3回で割る。これが1回あたりの本徴収額になります。

仮徴収で多めに引かれていた人は10月から負担が軽くなり、少なめだった人は重くなります。手取りが増える人と減る人が同じ10月に分かれるのは、この仕組みのためです。

ちなみに、この特別徴収の対象になるのは、65歳以上で、老齢・退職・障害・死亡を支給事由とする年金を年額18万円以上受け取っている人です。

介護保険料と後期高齢者医療保険料の合算額が、各支払期に支払われる年金額の2分の1を超える場合は、後期高齢者医療のほうは天引きされず、納付書などで納めることになります。

3. 年金から引かれる4つのお金

天引きされるものは4種類あり、内訳は次のとおりです。

  • 1. 介護保険料:65歳以上の全員が対象。市区町村によって金額が異なります。
  • 2. 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料):75歳未満は国保等、75歳以上は後期高齢者医療制度の保険料が引かれます。
  • 3. 所得税および復興特別所得税:一定の控除額を超えた場合に課税されます。
  • 4. 個人住民税および森林環境税:前年の所得に応じて課税されます。

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

4つのうち、上の2つが社会保険料、下の2つが税金であり、それぞれ性格が違います。

介護保険料には所得段階があり、後期高齢者医療には均等割があるため、社会保険料は所得が低くても一定額がかかります。

対して税金は、各種控除の合計が所得を上回れば、税額はゼロになります。

引かれる割合には幅があり、所得の水準、住んでいる自治体、扶養している家族の有無などで変わります。

次の章で、平均的な受給額の人を例に試算してみましょう。

4. 【試算】平均15万289円の手取りはいくらか

では、額面で月15万円を受け取っている場合、どれだけ引かれるのでしょうか。75歳以上の単身世帯を想定し、全国平均の保険料率で試算しました。

介護保険料は市区町村や所得段階によって異なります。参考として、第9期(2024〜2026年度)の基準額の全国加重平均は月6225円です。

後期高齢者医療保険料は、2026・2027年度の全国平均で均等割が年額5万6083円、所得割率が10.17%と公表されています。

年金収入180万円から公的年金等控除110万円を引くと雑所得は70万円になり、ここから基礎控除43万円を引いた27万円に所得割率をかけると2万7459円です。

均等割と合わせると年額8万3542円、月あたり約6962円となります。

2つを合計すると月1万3187円、年間で約15万8242円です。額面に対して8.8%にあたります。

※あくまでも全国平均値を単純に当てはめた参考試算です
※子ども・子育て支援金分は加味しておりません
※実際の保険料率は都道府県ごとの広域連合で異なります
※低所得者に対する均等割軽減を考慮しておりません
※住民税の調整控除は考慮しておりません

4.1 所得税はかからないが、住民税はかかる

所得税は、雑所得70万円から社会保険料控除15万8242円と基礎控除を差し引いて計算します。令和7年度の税制改正で、合計所得金額132万円以下の人の基礎控除は95万円になりました。

雑所得70万円は基礎控除95万円を下回るため、社会保険料控除を引く前の段階で課税所得はゼロです。この収入水準では所得税はかからない試算となります。

一方、住民税の基礎控除は43万円です。雑所得70万円から社会保険料控除と基礎控除を引くと課税所得が11万円ほど残るため、所得割と均等割を合わせて年間1万6000円程度がかかる計算になります。

自治体によって均等割の額や減免の扱いが異なるため、あくまで標準的な場合の目安です。

これらをまとめると、額面15万円に対する手取りは次のようになります。

  • 額面:15万円
  • 介護保険料:6225円
  • 後期高齢者医療保険料:約6962円
  • 住民税(標準的な場合):約1348円
  • 手取り:約13万5465円

差は月約1万4535円、率にして9.7%です。年間にすると約17万4420円が額面と手取りの差になります。

分布表で「15万円以上」の側にいる方でも、実際に使えるのは13万円台半ばということです。

※全国平均値等を単純適用した参考試算であり、実際の手取り額を示すものではありません。