6. 40歳代に多い「不動産と金融資産をどう組み合わせて考えればよいのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・菅原 美優が伝えたいこと

金融資産の運用をいくつかの方法で続けてきた方から、不動産のような現物の資産も含めて考えたほうがよいのか、というご相談をいただくことがあります。どちらか一方に決める話ではないと分かっていても、性質の違うものを並べて考える機会は多くないため、判断の手がかりがつかみにくくなりやすいものです。

6.1 40歳代に多いお悩み相談は「不動産と金融資産をどう組み合わせて考えればよいのか分からない」

40歳代(ご相談者)
これまで、いくつかの方法で金融資産の運用を続けてきました。以前から不動産にも関心があり、一度は検討したこともあるのですが、いま持っている金融資産と不動産を、どう組み合わせて考えればよいのか分かりません。どちらがよいという話でもない気がしていて、手元の資産の持ち方として、このままでよいのかどうか決めきれずにいます。

運用そのものに迷いがあるというより、性質の違うものを同じ土俵で比べようとして行き詰まっている、という段階でご相談に来られる方は少なくありません。

6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原 美優が回答】どちらを選ぶかではなく、性質の違いから見比べる

菅原 美優
不動産と金融資産の組み合わせについてのご相談は多くいただきますが、性質が異なる点をまずは認識しましょう。例えば、現金に換えるまでのかかる時間や、持つ単位と、持ち続けるあいだにかかる費用や手間など、大きく異なります。また、不動産にも金融資産にも、価値が下がった際には元本割れのリスクがあることを理解したうえで、ご自身に合った手段を選ぶことが大切です。性質の違うものを並べて考えようとすると、比べる軸が定まらないまま迷いが長引いてしまうことがあります。それぞれに任せたい役割から組み合わせを考えていくことが、ご自身にとって無理のない持ち方を見極める手がかりとなります。

6.3 ポイント1:現金に換えるまでにかかる時間の違いを確かめる

まず違いが出やすいのが、必要になったときに現金へ換えるまでの時間です。金融資産は、種類にもよりますが、比較的短い期間で現金にできるものが多く、必要な分だけを取り出すこともできます。一方で不動産は、買い手を探し、条件を決め、手続きを終えるまでに時間がかかり、思い立ってすぐに現金にできるとは限りません。急いで現金にしようとすると、希望した条件で手放せないこともあります。ここで大切なのは、どちらが優れているかではなく、近いうちに使う可能性のあるお金がどちらの形で置かれているかという点です。使う時期が読めないお金まで、換金に時間のかかる形で持っていると、いざというときに動かせず、判断の幅がせまくなってしまいます。

6.4 ポイント2:持つ単位と、持ち続けるあいだにかかる費用と手間を見比べる

次に見ておきたいのが、持ち方そのものの違いです。金融資産は細かい単位に分けて持つことができ、少しずつ増やしたり、一部だけを減らしたりといった調整がしやすい性質があります。これに対して不動産は、まとまった単位でしか持てないことが多く、少しだけ増やす、少しだけ減らすといった調整がしにくくなります。また、持ち続けるあいだにも、維持や管理のための費用と手間がかかり続けます。修繕や管理を誰がどのように担うのか、その負担を続けられるのかという点は、買うかどうかを考える段階で見落とされやすい部分です。相談の場でも、価格の動きばかりに目が向いて、持ち続けるあいだの負担が計算に入っていなかった、という整理に行き着くことが少なくありません。

6.5 ポイント3:それぞれに任せたい役割から組み合わせを考える

こうして違いを並べたうえで、最後に考えたいのが役割です。生活の備えとして手をつけたくないお金、近いうちに使う予定のあるお金、当面使う予定がなく値動きを受け入れられるお金では、置いておくのにふさわしい形が変わってきます。不動産と金融資産のどちらを増やすかという問いを、それぞれに何を任せたいのかという問いに置き換えてみると、比べる軸がはっきりしてきます。なお、不動産にも金融資産にも、価値が下がることはあります。不動産だから値上がりするというものではありませんし、金融資産には価格変動リスクがあり、購入したときより価値が下がって元本を割り込むこともあります。どちらの形であっても値下がりは起こりうるという前提に立ったうえで、どこまでの変動なら受け入れられるかを考えていくことになります。

組み合わせ方に、誰にでも当てはまる正解があるわけではありません。収入の見通しや家族の状況、そのお金を使う時期によって、ふさわしい形は変わってきます。どちらか一方に寄せる判断を急ぐより、性質の違いを自分の言葉で説明できる状態にしておくことが、迷いの正体をつかむ助けになります。

7. まとめにかえて

性質の違うものを並べて考えようとすると、比べる軸が定まらないまま迷いが長引いてしまうことがあります。そうしたときは、どちらを選ぶかを先に決めようとするのではなく、現金に換えるまでの時間、持てる単位、持ち続けるあいだの費用と手間という違いを一つずつ確かめてみると、考えの整理が進みやすくなります。不動産の取引や保有には税金や法律に関わる手続きも伴い、制度の内容は改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。また、金融資産には価格変動リスクがあり、購入したときより価値が下がって元本を割り込むこともあります。どの組み合わせが合うかは個別の事情によって変わってきますので、判断に迷うときは専門家にご相談ください。

参考資料

菅原 美優