秋は、家族が集まる機会に、住まいや土地、預貯金といった家の資産の話題が出やすい時期です。9月には敬老の日があり、親から子へ資産を引き継ぐ話が出たことをきっかけに、あらためて自分の資産の中身を眺め直したという声をうかがうこともあります。

そのときに迷いやすいのが、性質の違うものが並んでいるときの見方です。野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産1億円以上の世帯が165万3000世帯と推計され、推計が開始された2005年以降で最多となりました。全世帯に占める割合はおよそ3%です。この推計で使われている純金融資産という数え方には、不動産購入に伴う借入などの負債を差し引く、という決まりがあります。

この記事では、この推計で使われている5つの階層の区切りをまず読み解き、世帯数と資産総額が2005年からどのように動いてきたのかをたどり、調査が新しく挙げた2つの層の人物像を確かめたうえで、世帯年収の区分ごとに金融資産の中身がどう分かれているかまでを順に見ていきます。自分の資産の組み合わせを考える前に、公表されている数字がどこまでを数えているのかを押さえておくための記事です。

菅原 美優
資産の中身を並べてみると、預貯金や値動きのあるもののほかに、すぐには現金にしにくいものが混ざっていることがあります。日頃の相談でよくうかがうのは、それらをどう比べればよいのか分からない、というお話です。統計の数字は、自分がどの区分に入るかを確かめるためというより、比べるときの物差しがどこにあるのかを探すために見ていただくとよいかもしれません。

なお、純金融資産の数え方や階層の区切りに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】
資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】

1. 純金融資産という数え方|借入を差し引いてから世帯を5つに区切る

手元の資産をどう組み合わせるかを考える場面では、公表されている統計が助けになることがあります。ただし、その統計が何をどこまで数えているのかを取り違えると、自分の家計と突き合わせたときに話が合わなくなります。資産を積み上げてきた世帯にどのような共通点があるかについては、LIMOの記事「資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】」でも取り上げています。

野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産保有額に応じて、世帯が5つの層に分類されています。まず確かめておきたいのが、この「純金融資産保有額」という言葉の中身です。持っているものを足し上げただけの数字ではありません。

1.1 区分ごとの保有資産規模と世帯数の分布

数え方と区切りについて、親記事から次のとおり引用します。

純金融資産保有額:預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いたもの

  • マス層(3000万円未満)
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満)
  • 富裕層(1億円以上5億円未満)
  • 超富裕層(5億円以上)

注目したいのは、後半の「負債を差し引いたもの」という部分です。集めた金融資産を足し上げて終わりではなく、そこから借入分を引いた金額が、この統計でいう純金融資産保有額にあたります。持っているものの額面だけを並べた数字とは、意味合いが違うということです。

そのうえで、純金融資産1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義して、世帯数や保有資産の規模についての推計データが公表されています。これらの呼び名は統計をまとめるための区分名であって、暮らし方や家計の中身を表したものではありません。

この上位2つを足し合わせた世帯数は165万3000世帯と推計され、全世帯に占める割合はおよそ3%です。推計が開始された2005年以降でみると、この合計はもっとも多い水準にあたります。2つの層それぞれについても、2013年以降は世帯数が増える傾向が続いていると報告されています。

菅原 美優
負債を差し引いてから数える、というところは見落とされやすい部分です。相談の場でも、持っているものの額面を足しただけの数字と、この統計の数字を並べて比べようとして、話がかみ合わなくなることがあります。まず自分がどの数え方で見ているのかを確かめておくと、統計と自分の家計を突き合わせるときの前提がそろいます。

2. 世帯数と資産総額はどう動いてきたか|下がった年をはさみながら469兆円へ

次に、純金融資産1億円以上とされた世帯について、その数と資産総額が長い期間でどう変わってきたかを確かめます。1つの年だけを切り取るより、年を追って並べたほうが、この分布の性格が見えてきます。

  • 2005年:86万5000世帯・213兆円
  • 2007年:90万3000世帯・254兆円
  • 2009年:84万5000世帯・195兆円
  • 2011年:81万世帯・188兆円
  • 2013年:100万7000世帯・241兆円
  • 2015年:121万7000世帯・272兆円
  • 2017年:126万7000世帯・299兆円
  • 2019年:132万7000世帯・333兆円
  • 2021年:148万5000世帯・364兆円
  • 2023年:165万3000世帯・469兆円

世界金融危機や東日本大震災などの影響を受けて一時的に落ち込んだ時期をはさみながらも、長い期間でみれば世帯数も資産総額も増える方向に動いてきました。とくに2021年から2023年にかけての伸びが目立ちます。この背景には、株価上昇や円安による資産価値の増大などがあったことが、同調査レポートでは指摘されています。

並べたときに目を留めておきたいのが、2009年と2011年です。この2つの年は、世帯数と資産総額の両方が前回の数字を下回っています。一本調子で積み上がってきたわけではなく、減った回をはさみながら現在の水準に届いた、という読み方になります。

2.1 【2023年】階層別の世帯数と純金融資産保有規模の一覧

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯・135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯・334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯・333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯・282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯・711兆円

上位2つの層が持つ資産の合計は469兆円で、前回調査からは約3割ほど増えました。全世帯の保有資産額のうち26.1%が、この2つの層に集まっている計算になります。世帯の数でみればおよそ3%、資産の額でみれば26.1%。同じ2つの層を数えても、どちらを物差しにするかで印象が変わるところです。

菅原 美優
世帯数と資産総額が同じ方向に動いている年が多いなかで、両方が前回を下回った回が2度あります。相談の場では、こうした年に何が起きたのかより、その年に自分だったらどう動いたかを想像してみていただくことがあります。上がった局面を前提に組み立てた持ち方は、下がった局面で手直しの理由を探しにくくなりがちです。減った回も含めて眺めておくと、どこまでの変動までなら生活に響かないかを測る材料になります。

3. 働きながら積み上げた人たち|調査が挙げた新しいタイプの2つの層

この調査では、これまでの資産家像とは経歴の異なる2つのタイプが現れていることも指摘されています。名づけられた呼び名だけを見ると縁遠く感じられるかもしれませんが、説明を読むと、勤め先から受け取る給与と、その運用を通じて資産を積み上げてきた人たちが中心に置かれています。

3.1 株式投資を続けてきた会社員の層と、都市部の共働き世帯の層

1つめは「いつの間にか富裕層」と名づけられた層です。株式投資などを通じて資産を積み上げた、40歳代後半から50歳代の一般の会社員が中心とされています。金融に関する知識は高い一方で、大口の資金を前提とした専門的な金融商品や高度な資産管理には不慣れな面もある、という指摘も添えられています。

2つめは「スーパーパワーファミリー」と名づけられた層で、都市部に住む年収3000万円を超える共働き世帯が代表例として挙げられています。20歳から30歳代の間は教育費や住宅ローンなどの支払いに苦労するものの、昇格・昇給によって40歳前後から資産が急速に増加する傾向があり、高収入を背景に50歳前後で純金融資産1億円以上に到達する可能性が高いとされる層です。

2つに共通するのは、相続や親の資産に頼らずとも、自分自身のキャリア形成や金融知識によって資産を築いている点です。ここで思い返しておきたいのが、前の章で確かめた数え方です。住宅ローンなどの借入が残っている期間は、その分を差し引いた金額でこの統計に数えられます。積み上げてきた道のりのなかで、足していくものと差し引かれるものが同時に動いていた、ということでもあります。

菅原 美優
給与とその運用で資産を築いてきた方は、増やす側の経験は長く積まれています。一方で、性質の異なるものを並べて比べる場面は、そこまで多くありません。増やす順番を決めることと、いま持っているものの置き方を組み替えることは、考える材料がそもそも違うためです。相談の場でも、増やし方の話から一度離れて、手元のものを書き出すところに戻ると、話が進みやすくなることがあります。

4. 年収の区分によって変わる金融資産の中身|預貯金とそれ以外の分かれ方

ここまでは世帯の合計額を見てきましたが、最後にその中身を確かめます。2025年12月にJ-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」の結果から、世帯年収別の金融資産内訳に関するデータを取り上げます。

4.1 調査で示された種類別の保有額を年収の区分に沿って見る

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額3/3

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

世帯が持つ金融資産の合計額

全国:1940万円

  • 収入はない: 634万円
  • 300万円未満: 858万円
  • 300~500万円未満: 1431万円
  • 500~750万円未満: 1755万円
  • 750~1000万円未満: 2222万円
  • 1000~1200万円未満: 2725万円
  • 1200万円以上: 5635万円
  • 無回答: -

すぐに引き出せる形で持つ「預貯金」の保有額

全国:745万円

  • 収入はない: 385万円
  • 300万円未満: 368万円
  • 300~500万円未満: 631万円
  • 500~750万円未満: 693万円
  • 750~1000万円未満: 908万円
  • 1000~1200万円未満: 1028万円
  • 1200万円以上: 1649万円
  • 無回答: -

大きな値動きを避けたい資金の置き場とされる「債券」の保有額

全国:78万円

  • 収入はない: 7万円
  • 300万円未満: 36万円
  • 300~500万円未満: 54万円
  • 500~750万円未満: 58万円
  • 750~1000万円未満: 67万円
  • 1000~1200万円未満: 91万円
  • 1200万円以上: 343万円
  • 無回答: -

日々値段が動く「株式」の保有額

全国:433万円

  • 収入はない: 33万円
  • 300万円未満: 191万円
  • 300~500万円未満: 235万円
  • 500~750万円未満: 365万円
  • 750~1000万円未満: 434万円
  • 1000~1200万円未満: 572万円
  • 1200万円以上: 1792万円
  • 無回答: -

1本で投資先が分かれる「投資信託」の保有額

全国:216万円

  • 収入はない: 153万円
  • 300万円未満: 79万円
  • 300~500万円未満: 167万円
  • 500~750万円未満: 189万円
  • 750~1000万円未満: 238万円
  • 1000~1200万円未満: 292万円
  • 1200万円以上: 682万円
  • 無回答: -

「債券・株式・投資信託」の合計額が金融資産に占める割合

全国:37.5%

  • 収入はない: 193万円(30.4%)
  • 300万円未満:306万円(35.7%)
  • 300~500万円未満:456万円(31.9%)
  • 500~750万円未満: 612万円(34.9%)
  • 750~1000万円未満:739万円(33.3%)
  • 1000~1200万円未満: 955万円(35.0%)
  • 1200万円以上: 2817万円(50.0%)
  • 無回答: -

「債券・株式・投資信託」に振り向けている金額そのものは、世帯年収とある程度連動しています。ところが、金融資産保有額に占める割合に置き換えると見え方が変わります。年収が1200万円未満の区分では、いずれもおおむね30%台に収まっており、区分をまたいでもこの割合は大きく動いていません。値動きのある資産を持つこと自体は、収入の多い世帯だけのものではなくなっている様子がうかがえます。

形が変わるのは年収1200万円以上の区分で、この割合は50.0%となっています。預貯金とそれ以外がおおよそ半分ずつ、という並び方です。金額と割合の両方で差が出ているのはここだけで、この区分が全体の平均37.5%を押し上げている部分でもあります。

そのうえで、この章の数字にはもう1つ前提があります。ここで集計されているのは金融資産であって、住まいのように現物で持っているものは、この内訳の外に置かれているという点です。前の章までの純金融資産という数え方とも、数える範囲が異なります。手元の資産を眺めるときには、表に出ている部分と、そこに入っていない部分の両方があるという前提で見ていくことになります。

菅原 美優
この表は年収の区分ごとの数字なので、自分の区分の欄だけを見て、そこに近づけたほうがよいのかと考えてしまいがちです。ただ、調査が集めているのは金融資産の部分だけで、住まいのように表に出てこないものは含まれていません。同じ欄に並んでいる世帯でも、家の資産の持ち方まで同じというわけではないということです。表の数字を写し取るより、自分の場合は何が抜け落ちて見えているのかを確かめるほうが、次に考えることが決まりやすくなります。

値動きのある資産に回した場合に、金額の見え方が条件によってどう変わるかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション

5. 【独自試算】現金に換えるまでの日数の違いは、急な出費の手当てにどこまで効いてくるか

資産の中身を眺めるとき、金額の大小と並んでもう1つ見ておきたいのが、必要になったときに現金として手にできるまでの時間です。ここでは、資産の合計額を同じにしたまま内訳だけを変えると、急にお金が要るときに手当てできる金額がどこまで動くのかを試算で並べます。どの内訳がよいかを示すためのものではありません。

前提は次のとおりです。世帯が持つ資産の合計を、いずれのケースも2000万円と置きます。内訳は、いつでも引き出せる預貯金、満期のある預貯金、値動きのある金融資産、そしてすぐには現金にしにくい形で持っている資産の4つに分けます。現金として手にできるまでの日数の目安は、いつでも引き出せる預貯金は即日、満期のある預貯金は約3日、値動きのある金融資産は売却の手続きから受け取りまで約5日、すぐには現金にしにくい資産は数カ月単位と仮に置きます。この日数はあくまで計算のために置いた目安であり、実際は持っているものの種類や手続きの進み方によって変わります。

また、値動きのある金融資産と、すぐには現金にしにくい資産については、試算のうえでは表に出ている金額がそのまま現金になるものとして計算しています。実際に手にできる金額は、手放すときの条件によって変わり、購入したときの金額を下回ることもあります。税金・手数料は考慮していません。

5.1 3通りの内訳(いずれも合計2000万円)

  • ケースA:いつでも引き出せる預貯金200万円/満期のある預貯金300万円/値動きのある金融資産500万円/すぐには現金にしにくい資産1000万円
  • ケースB:いつでも引き出せる預貯金100万円/満期のある預貯金100万円/値動きのある金融資産300万円/すぐには現金にしにくい資産1500万円
  • ケースC:いつでも引き出せる預貯金300万円/満期のある預貯金500万円/値動きのある金融資産700万円/すぐには現金にしにくい資産500万円

5.2 5日以内に現金として用意できる金額の目安

  • ケースA:即日200万円/3日以内500万円/5日以内1000万円
  • ケースB:即日100万円/3日以内200万円/5日以内500万円
  • ケースC:即日300万円/3日以内800万円/5日以内1500万円

合計額はどのケースも2000万円で同じですが、5日以内に用意できる金額は500万円から1500万円まで開きました。その差は1000万円で、合計額の半分にあたります。動かしたのは内訳だけで、資産の総額は1円も変えていません。

5.3 必要になった金額別|5日以内に手当てできるかどうかの目安

同じ3つのケースについて、5日以内に300万円・700万円・1200万円が必要になった場面を仮に置くと、手当てできるかどうかは次のように分かれます。

  • 300万円が必要な場合:A・B・Cのいずれも5日以内に用意できる計算
  • 700万円が必要な場合:AとCは用意できる計算。Bは5日以内に500万円までで、約200万円が足りない計算
  • 1200万円が必要な場合:Cは用意できる計算。Aは約200万円、Bは約700万円が足りない計算

足りない分は、すぐには現金にしにくい資産を手放すことで用意する形になりますが、その場合は数カ月単位の時間がかかる前提で置いています。急ぐ場面では、時間をかけられないことが、そのまま手当ての幅を狭めることになります。

この試算が示しているのは、資産の合計額が同じでも、現金に換えるまでの時間の違いによって、急な場面で動かせる金額が変わるという関係そのものです。すぐに現金にできる形を多くしたほうがよい、という結論ではありません。どの形にどれだけ置くかは、その世帯が近いうちに使う予定のある金額や、収入の見通しによって変わってきます。また、値動きのある資産には価格変動リスクがあり、手放す時期によっては元本を割り込むこともあります。ここでの金額はいずれも仮に置いた条件のもとでの目安であり、将来の金額を約束するものではありません。

村岸 理美
合計額を動かさずに内訳だけを入れ替えると、5日以内に用意できる金額が3倍ほど開きました。資産の中身を眺めるときに、金額の大小だけでは見えてこない部分がここにあります。相談の場では、資産の一覧を作ったあとに、それぞれの横へ「現金になるまでにどのくらいかかりそうか」を書き添えていただくことがあります。書き出してみると、まとまった金額があるのに、近いうちに使えるお金は思っていたより限られていた、という整理に行き着くこともあれば、その逆もあります。どちらがよいという話ではなく、いまどちらの形になっているかを知っておくと、急な場面で選べる手が増えるという見方もできます。なお、資産を手放すときには税金や手続きに関わる決まりがあり、制度の内容は改正されることもあります。具体的な取り扱いについては、公的機関の情報や関連する窓口で確かめておく方法もあります。