9月は、新たに年金生活者支援給付金の対象となった方へ、緑色の封筒に入った請求書が届き始める月にあたります。年金そのものの金額と違い、この給付金は請求の手続きをしないと受け取れないため、封筒が届いたかどうかが分かれ目になります。
一方、現役の世代からは、毎月の固定費を見直して支出を減らしたあと、その削減分をどこに置けばよいのか分からない、というご相談がよく寄せられます。通信や保険の契約を見直して月に数千円が浮いたとして、その分をそのまま生活費に溶かしてしまうのか、将来のために積み立てるのか。ここで扱いが分かれます。
将来の収入の土台がどのくらいの高さになるのかが分かっていると、この判断はしやすくなります。公的年金がいくらくらいなのか、その年金に上乗せされる仕組みがどこまで用意されているのか。この2つは、いま浮いたお金の行き先を考えるうえでの材料になります。
この記事では、基礎年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」の3つの種類と対象になる人、実際に支払われている金額の水準、給付金が振り込まれる日、そして厚生年金・国民年金の平均年金月額と請求の手続きの流れを順に確認していきます。
なお、年金生活者支援給付金の制度内容や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 固定費の削減分の行き先を考える前に|基礎年金に上乗せされる3種類の給付金
浮いたお金をどこに置くかを決める前に、そもそも将来どのくらいの公的な収入が見込めるのかを確かめておきたいところです。年金本体の金額に加えて、条件によっては上乗せされる仕組みが用意されています。それが「年金生活者支援給付金」です。
この給付金は、基礎年金の受給者が一定の所得要件などを満たす場合に、年金額へ上乗せする形で受け取れるお金です。年金本体とは別の仕組みなので、年金を受け取っていれば自動的に付いてくるというものではありません。
どのような種類があるのかを、LIMOの記事「年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説」から要点を引いて確かめます。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
このように、受給中の年金の種類に応じて3つが設けられています。老齢基礎年金を受け取っている人には老齢、障害基礎年金を受け取っている人には障害、遺族基礎年金を受け取っている人には遺族というように、対応する給付金が用意されている形です。
すでに基礎年金を受給中の人が、所得が下がったことなどにより新たに「年金生活者支援給付金」の対象となった場合、例年9月の第1営業日以降順次、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が緑色の封筒で届きます。
※老齢年金を繰上げ受給中の人は、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月の初旬)、または65歳を迎える誕生月の初め頃に届きます。
なお、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた場合、電子申請による請求書の提出も可能です。スマートフォン(またはPC)とマイナンバーカードにより電子申請で提出した場合、郵送での提出は不要となります。
2. 3種類のうち高齢期の家計と関わりが深いもの|老齢年金生活者支援給付金の対象になる人
ここからは3種類のうち、高齢者世帯の暮らしと関わりが深い「老齢年金生活者支援給付金」に絞って、対象になる人の条件から順に整理していきます。
2.1 支給の対象になるかどうかを分ける3つの要件
以下の3つの要件をすべて満たす場合、老齢年金生活者支援給付金の支給対象となります。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下(※)である
3つの要件は、年齢・世帯の課税状況・前年の所得という、性質の異なる3方向から置かれています。したがって、年齢の条件を満たしていても世帯の誰かに課税があれば対象から外れますし、世帯全員が非課税であっても前年の所得が基準を上回っていれば対象になりません。
なお、老齢年金生活者支援給付金の判定基準に、障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まれません。
※前年の所得の合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である場合は、「補足的老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となります。
3. 実際に支払われている金額の水準|老齢の平均給付月額は月4146円
年金生活者支援給付金の金額は、物価変動率を踏まえ年度ごとに改定されるルールがあります。これにより、2026年度分については、前年度から「+3.2%」となりました。
2026年度の給付基準額は月額5620円|納付済期間に応じて実際の額が決まる
老齢年金生活者支援給付金の実際の給付額は、月額5620円を基準額(2026年度)とし、保険料納付済期間等に応じて決定します。基準額はあくまで基準であり、全員がこの金額を受け取るわけではない、という点が特徴です。
なお、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2025年3月における老齢年金生活者支援給付金の平均給付月額(※)は4146円でした。
※2025年3月において認定されている平均給付金額
基準額と、実際に認定されている人の平均額との間に開きがあるのは、給付額が保険料を納めた期間の長さに応じて決まる仕組みだからです。上乗せとして期待できる金額の実感値としては、基準額よりもこの平均給付月額のほうが近いかもしれません。月に4146円という水準は、通信や保険といった固定費を見直したときに浮く金額と、それほど遠くない大きさでもあります。
3.1 給付金が振り込まれる日|原則として偶数月の15日
「年金生活者支援給付金」は、年金と同じく年6回、偶数月の15日に支払われます(※15日が土日・祝日の場合は、その直前の平日に前倒し)。
年金とは別に、同じ口座に同じ日に振り込まれるため、通帳には2つの振込記録が記載されます。振込の記録が2行に分かれることを知らないまま通帳を見ると、年金が2回振り込まれたように見えて戸惑うことがあるかもしれません。
原則として、各支払月にはその前月までの2カ月分がまとめて支払われます。例えば、10月には8月・9月分、12月には10月・11月分、といった具合です。
4. 上乗せの前に土台を見る|厚生年金と国民年金の平均年金月額
上乗せ分の話をしてきましたが、その土台になる年金本体の金額にも大きな個人差があります。平均的な水準については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。
年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
厚生年金は全体で月15万289円、国民年金は全体で月5万9310円。この2つを並べるだけでも、現役時代にどの制度に加入していたかによって土台の高さが変わることが見て取れます。さらに、同じ厚生年金でも男性が16万9967円、女性が11万1413円と開きがあります。
いま固定費を見直して浮かせた分をどう扱うかという問いは、この土台の高さと、これからの生活に必要な金額との差をどう埋めるか、という問いに置き換えられます。土台が高ければ埋める差は小さくなり、低ければ大きくなります。差の大きさが違えば、浮いた分の行き先の選び方も変わってきます。
5. 請求しないと受け取れない|老齢年金生活者支援給付金の手続きの流れ
老齢年金生活者支援給付金は、支給対象となったら自動的に年金に上乗せされるものではありません。公的年金本体と同様に「請求手続き」をおこなわないと、受け取ることができないお金です。
今回は、手続きフローを「これから65歳を迎え、老齢年金の受給がスタートする人」と「すでに老齢年金を受給している人」に分けて紹介しておきましょう。
5.1 これから65歳を迎える人|年金の請求書とセットで届く
誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書とともに給付金請求書が郵送されます。必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに最寄りの年金事務所に提出します。年金本体の請求と同じタイミングで進む形なので、書類がそろっているかどうかを一度で確かめられます。
5.2 すでに老齢年金を受け取っている人|9月以降に単独で届く
冒頭でも触れたように、すでに老齢年金を受給中の人が、所得の低下などにより新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、毎年9月の第1営業日から順次、年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届きます。必要事項を記入し、郵便ポストに投函しましょう。
こちらは年金本体の手続きとは切り離して届くため、封筒が他の郵便物に紛れてしまうと気づきにくくなります。9月前後に届く郵便物のなかに緑色の封筒がないか、確かめておく機会をつくっておくとよいかもしれません。
5.3 要件を満たす限り、2年目以降は手続き不要で継続受給
年金生活者支援給付金は、一度請求手続きをおこなえば「支給要件を満たす限り」2年目以降は手続き不要です。
前年の所得に基づいて継続支給の判定がおこなわれ、その結果が毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。
給付額が改定された際には「年金生活者支援給付金支給金額改定通知書」が、給付金の支給対象外となった場合には「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。届いた通知書の種類によって、翌年以降に入ってくる金額が変わるかどうかが分かる仕組みです。
世帯全員が市町村民税非課税であることは、この給付金以外にもさまざまな場面で条件になります。住民税非課税世帯を対象とした優遇の内容や、年収がどのあたりで境界線に届くのかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説
6. 【独自試算】固定費を月3000円・5000円・1万円分減らして積立に回すと、20年後の到達額はどこまで動くか
ここからは、固定費の見直しで浮いた金額をそのまま積立に回した場合に、20年後の到達額の目安がどう動くかを試算で並べてみます。あくまで一定の条件を置いた計算であり、どの金額がよいかを示すものではありません。特定のサービスや契約の見直し方を扱うものでもありません。
前提は次のとおりです。固定費の見直しで浮いた金額を、月3000円・月5000円・月1万円の3通りに置き、その全額を毎月同じ額で積み立てます。想定利回りは年3%、期間は20年(240カ月)で、運用で得られた分はそのまま再投資するものとします。税金・手数料は考慮していません。月ごとの利回りは、年利をそのまま12で割るのではなく、(1+年利)の12分の1乗から1を引いて求めています(年3%の場合は約0.2466%)。
- 月3000円を20年:元本は72万円、20年後の到達額は約98万円(運用による増加分は約26万円)
- 月5000円を20年:元本は120万円、20年後の到達額は約163万円(運用による増加分は約43万円)
- 月1万円を20年:元本は240万円、20年後の到達額は約327万円(運用による増加分は約87万円)
浮かせた金額が月3000円から月5000円へ、月5000円から月1万円へと増えるにつれて、到達額の目安も比例して大きくなります。毎月の金額を2倍にすれば、到達額の目安もおよそ2倍になるという関係です。月3000円と月1万円では、20年後の目安に約229万円の差が出る計算になります。
見方を変えると、月3000円という金額でも、20年という期間を通せば元本72万円に対して約98万円という水準にはなります。固定費の見直しで浮く金額は月に数千円というケースが多いものですが、その数千円に行き先を決めておくかどうかで、20年後に手元に残るものが変わってくる、という関係が数字の上では見えてきます。
なお、ここで示した金額はいずれも、想定した利回りが期間を通じて続いた場合の目安です。実際の運用には価格変動があり、元本割れとなる可能性もあります。将来の金額を保証するものではありません。また、固定費をどこまで見直せるかは契約の内容や家族構成によって変わりますので、ご自身の家計に当てはめて考えていただく必要があります。
移し先としては、すぐに引き出せる形で置いておく方法と、使う時期が遠い資金として値動きを受け入れる形にする方法があり、どちらが合うかは使う予定の時期によって変わります。年金生活者支援給付金のように、条件を満たしたときに上乗せされる公的な仕組みも将来の収入の一部になりますが、こちらは世帯の課税状況などが関わるため、該当するかどうかは年度や個々の状況で変わります。
制度の適用や税制の扱いについては、関連する部署や窓口に確かめたうえで判断していただくのが確実です。
ここで示した試算も一定の前提を置いた目安であり、価格変動によって結果は変わります。



