キュレーターから読者に伝えたいポイント
2016年4月17日(日)に開催された主要産油国会合で減産合意ができなかったため、今週(2016年4月18日~22日)は原油急落が必至という見通しでスタートしました。
しかし、18日(月)にクウェートで石油労働者の大規模なストがあったこと等により急落とはならず、それどころか、週半ばには昨年12月上旬以来の高値を付けるなど、上昇基調に拍車が掛かっています。
また、それに呼応するように、日本株も上昇基調が続いています。このように、原油相場と日本株には強い相関性があります。今回は4本の記事を参考に、両者の関係について改めて考えてみたいと思います。
原油価格の行方が日本株にも他人事ではない理由
原油の大部分を海外に依存している日本にとって、原油価格の下落は家計や企業のコストダウンといった面でメリットがあるものの、企業業績には様々なデメリットがあることは否定できません。
2016年3月期決算でも、資源権益の減損(大手総合商社)、資源国ビジネスの悪化(造船重機・鉱山機械・海運等)、輸入資源の在庫評価損(石油・鉄鋼・非鉄等)などが、日本企業の業績を悪化させました。
このため、2017年3月期の業績動向を見通すうえで、原油価格の動向は非常に重要なファクターになります。
また、この記事にあるように、原油の上昇が続くと世界経済が好転する期待が高まり(リスクオン)、原油が反落すると世界経済への不安が再燃する(リスクオフ)ため、世界の金融市場も、原油価格に神経質に反応することを頭の片隅に入れておきましょう。
出所:楽天証券
原油相場の需給を決めるのはOPECだけではない
2016年4月17日に開催された主要産油国会合での減産合意には至りませんでしたが、原油相場は急落とはなりませんでした。
このことから、原油相場の需給を決めるのは従来の石油輸出機構(OPEC)だけではないことが確かめられました。では、OPEC以外で需要と供給を左右する要因として、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、需要面では中国の景気動向、米国など先進国でのガソリン需要(季節要因を含む)、米国の金融政策(緩和策の継続)などが需要の下支え要因になる可能性が、また、供給面では米国のシェール油田の減産効果が指摘されています。
このように、原油相場の行方は、OPECの動向だけではなく、様々な角度から見ていく必要があります。
出所:投信1
原油を原料とする素材セクターも原油高の方が利益は伸びる
原油安(高)のメリット(デメリット)を受けやすいセクターとして、まず思い浮かぶのは日本航空(9201)やANAホールディングス(9202)などが含まれる空運セクターですが、素材セクターも気になるところです。
個人投資家向け金融経済メディアのLongine(ロンジン)に寄稿しているベテランアナリストによると、経済紙等でしばしば解説されているような「素材セクターは原料の石油価格が安くなり利幅(スプレッド)が改善、増益になる」と言う表現は、ごく短期的なモメンタムを解説したものにすぎないとしています。
つまり、利益が持続的に伸びるためには、インフレ(石油価格が上昇し、化学製品の価格も上昇すること)になることが必要とのことです。
短期の値幅取りではなく、長期的に資産形成を目指す個人投資家は、こうしたことも知っておくといいでしょう。
原油市況動向と素材産業株への影響-上昇しそうだが、結局足踏みの原油市況
出所:Longine
原油相場も大切だがITによる生産性の改善も忘れてはいけない課題
生産性を改善するためには、①コストを低下させる、②単位時間当たりの生産量を向上させる等の手段があります。
①については、コストの太宗を占める原油価格は下げ止まってきたとはいえ、かつてに比べるとかなり低位な水準が当面は続くとするならば、②が、より重要な課題となります。
ただし、この記事の筆者が指摘しているように、第3次産業化が進展する先進国においては、単純な労働装備率向上という施策では容易には生産性が向上しません。
このため、IoT、ビッグデータなどを活用した「生産性革命」が実現するかが、これからの日本株を考える上で、原油価格の動向と並んで重要な注目点になっていくと考えられます。
出所:みずほ投信投資顧問
【2016年4月22日 投信1編集部】
■参考記事■
>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント
LIMO編集部