空き家を持っていると固定資産税が6倍になる、という話を聞いたことがあるかもしれません。ただ、どういう場合にそうなるのかまで整理されていることは、あまり多くありません。

固定資産税には、人が住むための土地の負担を軽くする住宅用地特例という仕組みがあります。空き家をめぐる制度は、この特例を外すという形で組み立てられています。

国土交通省の資料から、特例が外れる条件と、実際にどれくらいの件数が出ているのかを見ていきます。

この記事の3つのポイント
  • 住宅用地特例は、200㎡以下の部分について固定資産税の課税標準を6分の1に減額する仕組みです。
  • 市区町村長から勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、この特例の対象から外れます。
  • 令和6年度の勧告は978件。うち378件は、令和5年12月に加わった管理不全空家等へのものでした。

1. 住宅用地特例は、課税標準を6分の1または3分の1にする仕組みです

国土交通省の資料によると、固定資産税等の住宅用地特例は、住宅政策上の見地から、居住の用に供する住宅用地について税負担の軽減を図るために設けられた措置です。土地が住宅用地に該当する場合に、固定資産税等が減額されます。

【図表1】住宅用地特例と、空き家に対する措置の関係1/2

【図表1】住宅用地特例と、空き家に対する措置の関係

各種資料をもとにLIMO編集部作成

減額の内容は、土地の広さによって2段階に分かれています。

  • 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):固定資産税の課税標準を6分の1に減額
  • 一般住宅用地(200㎡を超える部分):固定資産税の課税標準を3分の1に減額

なお、平成27年の総務省固定資産税課長通知では、次の場合には特例の対象となる「住宅」に該当しないとされている、と同じ資料に記載があります。構造上住宅と認められない状況にある場合、使用の見込みはなく取壊しを予定している場合、居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合の3つです。

2. 勧告を受けると、特例の適用対象から外れます

適切な管理が行われていない空き家が放置されることへの対応として、固定資産税等の住宅用地特例を解除する仕組みが設けられています。市区町村長から勧告を受けた特定空家の敷地について、住宅用地特例の適用対象から除外されるというものです。

特定空家等に対する措置は、助言・指導、勧告、命令、行政代執行という順に進みます。このうち勧告の段階で、住宅用地特例の適用対象から外れます。

特定空家等とは、次のいずれかの状態にあると認められる空家等を指します。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

3. 令和5年12月の改正で「管理不全空家等」が加わりました

空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)が、令和5年12月13日に施行されました。この改正で、特定空家等になる前の段階を対象とする「管理不全空家等」が設けられています。

管理不全空家等とは、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある空家等です。措置は指導と勧告の2段階で、市区町村長から勧告を受けた管理不全空家の敷地についても、住宅用地特例の適用対象から除外されます。

指導の対象は、適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態です。勧告の対象は、指導しても改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれが大きい場合とされています。

「空き家の固定資産税が6倍になる」という言い方を、私も何度か目にしてきました。ただ制度の側から見ると、6倍にするという規定があるわけではなく、6分の1にする減額が外れる、という形をとっています。

同じことを言っているようで、順番が逆です。もともとは減額されていない状態があって、住むための土地にはそこから負担を軽くする仕組みが用意されている。空き家になってその前提が崩れると、元の状態に戻る、という組み立てです。

それに、6分の1が適用されるのは200㎡以下の部分で、それを超える部分は3分の1です。土地の広さによって、外れたときの効き方も変わってきます。倍率だけが独り歩きすると、このあたりが見えなくなります。

では、その勧告は実際にどれくらい出ているのでしょうか。

中沢 新

4. 令和6年度の勧告は978件でした

国土交通省と総務省が令和7年3月31日時点でまとめた空家法の施行状況によると、令和6年度の勧告は、特定空家等が600件、管理不全空家等が378件で、合計978件でした。

【図表2】特定空家等・管理不全空家等への勧告件数の推移2/2

【図表2】特定空家等・管理不全空家等への勧告件数の推移

各種資料をもとにLIMO編集部作成

管理不全空家等への勧告は、改正法が施行された令和5年度は0件でした。令和6年度の378件が最初の計上になります。指導のほうは令和5年度に666件、令和6年度に2545件出ています。

特定空家等への勧告は、平成27年度からの累計で4153件です。管理不全空家等への勧告は制度が始まったばかりで、累計も令和6年度の378件と同じです。空家法にもとづく措置の累計は、特定空家等が4万8362件、管理不全空家等が3589件となっています。

5. 「6倍になる」という言い方について

住宅用地特例で減額されるのは、税額そのものではなく課税標準です。特例が外れると、6分の1あるいは3分の1にする減額がなくなります。

ただし、実際に納める固定資産税は、土地の評価額をもとに計算されます。特例が外れたときにどれだけ増えるかは土地ごとに異なるため、一律に6倍になると言い切れるものではありません。

また、住宅用地特例は土地についての仕組みです。空き家となっている家屋そのものにかかる固定資産税は、この特例とは別に扱われます。

自分の土地について具体的な金額を知りたい場合は、毎年届く納税通知書と、市区町村の資産税担当窓口で確認するのが確実です。個別の判断は市区町村によって異なります。

6. 勧告の前には、助言・指導や指導の段階があります

勧告はいきなり出るものではなく、その前に助言・指導や指導の段階が置かれています。令和6年度の措置件数は次のとおりです。

  • 特定空家等への助言・指導:4026件
  • 特定空家等への勧告:600件
  • 特定空家等への命令:101件
  • 管理不全空家等への指導:2545件
  • 管理不全空家等への勧告:378件

これらは年度ごとに数えた件数です。同じ空き家が助言・指導から勧告へと進んだ数を示すものではないため、件数の差をそのまま「何件が次の段階に進んだか」として読むことはできません。

なお、空家等対策計画を策定済みの市区町村は1541で、同資料では調査対象1741市区町村のうち88%とされています。前年度の1501から40増えました。

7. まとめにかえて

空き家の固定資産税がどういう場合に変わるのかを、制度の側から見てきました。

  • 住宅用地特例は、200㎡以下の部分の課税標準を6分の1、超える部分を3分の1に減額する仕組みです
  • 市区町村長から勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、この特例から外れます
  • 令和6年度の勧告は978件で、うち378件は管理不全空家等へのものでした
  • 減額されるのは課税標準であり、税額が一律に6倍になるわけではありません

空き家を持っているだけで税負担がすぐ変わるわけではなく、管理されていない状態が続き、指導や助言を経て勧告に至った場合に特例が外れる、という順序になっています。逆にいえば、管理を続けているかぎり、この仕組みが働く場面は限られます。

ここで挙げたのは制度の枠組みです。実際に自分の土地がどう扱われるか、税額がいくらになるかは、市区町村の資産税担当窓口や空き家担当窓口に確認してください。判断は個別の事情によって変わります。

8. 【執筆者コメント】持ち続けるあいだ、毎年かかるもの

978件という数字を、多いと見るか少ないと見るかは分かれると思います。調査の対象になった市区町村は1741あり、空き家は900万戸を超えています。そのなかで、勧告に至ったのが年間978件です。

ただ、この数字は制度が動いた回数であって、税負担が変わった家の数を網羅したものではありません。そして、勧告を受けていない空き家にも固定資産税は毎年かかります。特例が効いている状態でも、持ち続けるかぎり払い続けるものです。

家が空いたときに気になるのは、たいてい売るか貸すかという入口の判断だと思います。ただ、決めきれないまま置いておく期間にも、費用のほうは静かに積み上がっていきます。制度が動くかどうかとは別の話として、そちらは確実に発生します。

金額を確かめる方法は、そう難しくありません。毎年届く納税通知書と、市区町村の資産税担当窓口です。特例が外れた場合にどうなるかも、その土地の評価額をもとに窓口で聞くことができます。制度の解説を読むより、自分の土地の数字を一度見ておくほうが早いかもしれません。

参考資料

中沢 新