定年まで勤めたら退職金はいくらもらえるのか、気になっている方は多いのではないでしょうか。
厚生労働省が2023年10月31日に公表した「令和5年就労条件総合調査」によると、定年で退職した会社員の退職給付額は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で平均1896万円でした。
この記事では、この調査をもとに、退職の理由・学歴・勤続年数によって退職給付額がどこまで変わるのかを確認します。2ページ目では、勤務先の制度の形による差と、退職給付制度がない会社の割合を見ていきます。
1. 会社員の退職給付額は定年退職で平均1896万円
はじめに、退職金の水準を示す代表的な統計から、会社員が実際に受け取っている金額を確認します。
ここで使うのは厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」です。常用労働者30人以上の民営企業6421社を調査客体とし、3768社から有効回答を得た調査で、退職給付額は令和4年1年間に退職した勤続20年以上かつ45歳以上の退職者を対象に集計されています。
なお退職給付の項目は5年ごとに調べられており、令和7年調査には含まれていません。現時点ではこの令和5年調査が最新です。
1.1 定年退職の平均は大学・大学院卒で1896万円
定年で退職した人の1人平均退職給付額は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1896万円でした。
高校卒(管理・事務・技術職)は1682万円、高校卒(現業職)は1183万円です。学歴と職種の区分によって、700万円ほどの幅があります。
退職時の所定内賃金(月額)と比べた月収換算では、大学・大学院卒が36.0月分、高校卒(管理・事務・技術職)が38.6月分、高校卒(現業職)が34.3月分でした。金額の差ほどには月数の差が開いていない点が読み取れます。
1.2 退職の理由で金額は大きく変わる
同じ学歴でも、どういう辞め方をしたかで金額は変わります。
大学・大学院卒で見ると、自己都合は1441万円で、定年の1896万円より455万円低い水準です。一方、早期優遇は2266万円と、定年を上回っています。
高校卒(現業職)では、自己都合921万円、会社都合737万円に対して早期優遇が2146万円と、3倍近い開きがありました。
ただし早期優遇で辞めた人は多くありません。勤続20年以上かつ45歳以上の退職者のうち、定年が56.5%、自己都合が31.7%を占めるのに対して、早期優遇は5.7%、会社都合は6.1%でした。
【大学・大学院卒(管理・事務・技術職)】
- 定年:1896万円
- 会社都合:1738万円
- 自己都合:1441万円
- 早期優遇:2266万円
【高校卒(管理・事務・技術職)】
- 定年:1682万円
- 会社都合:1385万円
- 自己都合:1280万円
- 早期優遇:2432万円
【高校卒(現業職)】
- 定年:1183万円
- 会社都合:737万円
- 自己都合:921万円
- 早期優遇:2146万円
2. 勤続年数で退職給付額はどこまで変わるか
同じ定年退職でも、何年勤めたかによって退職給付額は大きく動きます。この章では勤続年数別の集計を見ていきます。
2.1 勤続20年台と35年以上では大学・大学院卒で倍近い差がある
大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者では、勤続20〜24年が1021万円、35年以上が2037万円でした。
勤続年数が15年ほど延びると、金額はおよそ2倍になります。25〜29年は1559万円、30〜34年は1891万円で、伸び幅は年数が進むほど小さくなっています。
2.2 高校卒は勤続30年を過ぎてから伸び方が変わる
高校卒(管理・事務・技術職)では、勤続20〜24年が557万円、25〜29年が618万円と、20年台のあいだはほとんど動きません。
ところが30〜34年で1094万円、35年以上で1909万円と、30年を過ぎたところから金額が跳ね上がります。高校卒(現業職)も406万円から1471万円へと同じ方向に動いていました。
この結果、学歴による差はいったん開いてから縮まります。大学・大学院卒と高校卒(管理・事務・技術職)の差は、勤続20〜24年で464万円、25〜29年で941万円と広がり、30〜34年で797万円、35年以上では2037万円と1909万円の128万円まで縮まっていました。
【大学・大学院卒(管理・事務・技術職)】
- 勤続20〜24年:1021万円
- 勤続25〜29年:1559万円
- 勤続30〜34年:1891万円
- 勤続35年以上:2037万円
【高校卒(管理・事務・技術職)】
- 勤続20〜24年:557万円
- 勤続25〜29年:618万円
- 勤続30〜34年:1094万円
- 勤続35年以上:1909万円
【高校卒(現業職)】
- 勤続20〜24年:406万円
- 勤続25〜29年:555万円
- 勤続30〜34年:800万円
- 勤続35年以上:1471万円
3. 国家公務員の退職手当と比べるとどうなるか
退職金の水準を考えるとき、公務員と比べてどうなのかは気になるところです。ここでは国家公務員の集計と並べてみます。
3.1 定年退職の平均は2160万1000円
内閣官房内閣人事局が2025年12月に公表した「退職手当の支給状況」によると、令和6年度に定年で退職した常勤職員1万1073人の平均支給額は2160万1000円でした。
行政職俸給表(一)の適用者に限ると3970人で2148万8000円です。自己都合で退職した常勤職員の平均は345万4000円でした。
会社員の1896万円は令和4年1年間に退職した人の数値で、国家公務員の2160万1000円は令和6年度に退職した人が対象です。調査の時点も対象もそろっていないため単純な引き算はできませんが、水準としては国家公務員のほうが高く出ています。
3.2 常勤職員の分布はもっとも多い区分が500万円未満
国家公務員については、平均額だけでなく、支給額ごとの人数も公表されています。
令和6年度に退職手当を受け取った常勤職員3万1193人のうち、もっとも多い区分は500万円未満の1万5847人でした。次に多いのが2000万〜2500万円未満の8270人、その次が1500万〜2000万円未満の3166人です。
常勤職員には定年以外の退職も含まれるため、計の平均支給額は1094万3000円にとどまります。500万円未満に半数が集まるのは、勤続5年未満で退職した人が1万1902人いるためです。
定年退職者に限ると分布は変わります。1万1073人のうち2000万〜2500万円未満が6953人と6割を超え、1500万〜2000万円未満が2166人、2500万〜3000万円未満が1228人でした。定年退職に限った平均と、全体の分布は別のものとして見ておきたいところです。