8月も残りわずかとなりました。ひとり親で子どもを育てている方のなかには、この時期になると児童扶養手当の「現況届」を提出される方もいるでしょう。
毎年8月に提出するこの届出が、そのあとの児童扶養手当を左右する場合もあります。
今回は、こども家庭庁と厚生労働省の資料をもとに、児童扶養手当の対象になるのはどんな人かた令和8年4月分からの金額はいくらか、所得制限はどこで線が引かれるのか、そして「5年・7年」という区切りが実際に何を意味しているのかを、順にみていきましょう。
- 令和8年4月分から、児童扶養手当は全部支給で月4万8050円(第1子)に。令和7年度から1360円の引き上げ
- 所得制限は令和6年11月分から引き上げ済み。子ども1人なら年収190万円までが全部支給の目安
- 「支給開始から5年で2分の1」分かれ目は8月の届け出
1. 児童扶養手当とは?受け取れる対象者は「18歳になった年度末まで」の子どもを育てる人
まずは制度から確認します。こども家庭庁「児童扶養手当制度の概要」によると、児童扶養手当はひとり親家庭等の生活の安定と自立の促進に寄与するため、その児童について手当を支給し、児童の福祉の増進を図ることを目的とした制度です。名前の似た「児童手当」とは別の制度で、こちらはひとり親家庭等が対象になります。
支給の対象となるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する方です。ここは読み違えやすいところで、18歳の誕生日で終わりではなく、18歳になった年度の末日までが区切りになります。誕生日を迎えた時点で急に止まるわけではない、という点を押さえておきたいところです。
支給要件については、次のような児童を監護していることなどが挙げられています。
1.1 支給要件
- 父母が婚姻を解消した児童
- 父又は母が死亡した児童
- 父又は母が一定程度の障害の状態にある児童
- 父又は母の生死が明らかでない児童 等
ただし、後述しますが所得制限があります。
2. 令和8年4月分から「月4万8050円」に。第2子以降の加算額と、支払われる月はいつか
次に金額です。厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によると、児童扶養手当は令和7年度の月額4万6690円から、令和8年度は4万8050円になりました。1360円の引き上げです(いずれも第1子・全部支給の場合)。
図のとおり、引き上げられたのは子ども1人分の本体額だけではありません。子どもが2人以上いる場合は、2人目以降1人につき加算額がつきます。
加算額は令和7年度の1万1030円から1万1350円へ、320円の引き上げとなりました(全部支給の場合)。したがって、子どもが2人で全部支給に当てはまる世帯であれば、4万8050円に加算額1万1350円が加わり、月5万9400円を受け取ることになります。
なお、注意したいのが、ここまでの金額はいずれも「全部支給」の場合です。所得によっては「一部支給」となり、その額は所得に応じて決定されます。
こども家庭庁「児童扶養手当制度の概要」で令和7年度をみると、一部支給は4万6680円から1万1010円まで、加算額の一部支給は1万1020円から5520円までと、かなりの幅がありました。同じ制度でも、受け取れる額は世帯の状況によって大きく変わるということです。
令和8年度の引き上げは、その年の判断で決まったものではありません。厚生労働省の同資料によると、物価変動に応じた改定ルールが法律に規定されている手当などは、令和7年の物価変動率3.2%に基づき3.2%の引き上げとなり、児童扶養手当もその一覧に含まれています。
支払われるのは、1月、3月、5月、7月、9月、11月です。年6回、2か月分ずつまとめて振り込まれます。毎月入ってくるお金ではないので、家計の見通しを立てるときは「2か月に1度、2か月分」という受け取り方を前提に考えておきたいところです。
3. 所得制限のライン。子ども1人なら「年収190万円」と「385万円」が分かれ目
児童扶養手当は、要件に当てはまれば誰でも満額を受け取れるわけではありません。前年の所得に応じて、手当の全額を支給する「全部支給」と、一部のみを支給する「一部支給」に分かれます。そして、この判定基準となる所得限度額は、令和6年11月1日からの児童扶養手当法等の一部改正で引き上げられました。
こども家庭庁「ひとり親家庭等のみなさまへ」によると、たとえば子ども1人の場合、全部支給については160万円から190万円に、一部支給については365万円から385万円に引き上げられています(いずれも収入ベース)。同じ年収でも、改正前は一部支給だった方が全部支給に移るケースが出てくる、ということです。
3.1 扶養する児童等の数ごとの所得制限限度額の一覧(令和6年11月分から・収入ベース)
- 0人:全部支給142万円/一部支給334万3000円
- 1人:全部支給190万円/一部支給385万円
- 2人:全部支給244万3000円/一部支給432万5000円
- 3人:全部支給298万6000円/一部支給480万円
- 4人:全部支給352万9000円/一部支給527万5000円
- 5人:全部支給401万3000円/一部支給575万円
図は、この一覧を扶養する児童等の数の順に並べたものです。濃い色が全部支給、薄い色が一部支給の上限にあたります。ご自身の人数の行を探して、前年の収入と見比べてみてください。
注意点として、政令上は「所得額」で規定されており、上に挙げた「収入額」は、給与所得者を例として給与所得控除額等を加えて表示した額です。所得ベースでみると、全部支給の限度額は0人が69万円、1人が107万円、2人が145万円、一部支給は0人が208万円、1人が246万円、2人が284万円と定められています。
見落とされやすいのが、自分以外の所得もみられるという点です。こども家庭庁の資料によると、受給資格者と生計を同じくする扶養義務者がいる場合、その方の所得が扶養親族等の数に応じた所得制限限度額以上であれば、全部支給停止となります。
実家に戻って親と同居している、といったケースでは、同居する家族の所得が結果に影響することがあります。限度額の当てはめや所得の計算方法は個別性が高いため、判断は市区町村の窓口に確認するのが確実です。
4. 「支給開始から5年、7年で半分」は本当?8月の現況届とともに提出を
さらに知っておきたい点をご紹介します。こども家庭庁の資料によると、児童扶養手当については、平成14年の母子及び寡婦福祉法等の改正の際に、離婚後等の生活の激変を一定期間内で緩和し、自立を促進するという趣旨から、就労支援施策等の強化を図ることとあわせて、受給期間が5年を超える場合に、平成20年4月から、その一部を支給停止することとされました。
具体的には、児童扶養手当の支給開始月の初日から起算して5年(又は手当の支給要件に該当する日の属する月の初日から起算して7年)を経過したときは、手当の額の2分の1を支給停止する、という内容です。タイトルにもある「5年、7年」はここを指しています。
あわせて、3歳未満の児童を育てている場合は、3歳までの期間は5年の受給期間に含めない取り扱いとされています。小さな子どもを抱えている時期は、カウントの外に置かれるということです。
ただし、話はここで終わりません。同じ資料によると、平成20年2月に政令を制定し、一定の事由に該当する場合は一部支給停止の適用を除外しています。
4.1 一部支給停止の適用除外となる5つの事由
- 就業している
- 求職活動等自立を図るための活動をしている
- 身体上又は精神上の障害がある
- 負傷又は疾病等により就業することが困難である
- 受給資格者が監護する児童又は親族が障害、負傷、疾病、要介護状態等にあり、受給資格者が介護する必要があるため、就業することが困難である
手続きの方法も決まっています。手当の支給開始後5年等を経過する月(5年等満了月)の直前の時期の現況届(8月)と併せて、上の5つのいずれかに該当する旨を明らかにできる書類を自治体に提出します。5年等満了月以降の現況届のときも同様です。
平成22年の児童扶養手当法の一部を改正する法律の附帯決議を踏まえ、24年6月に省令が改正され、この手続きを現況届と同時に行うことで一体化させる運用改善が実施されました。現況届に加え、こちらに関しても8月の届出を出しているかどうかが重要です。
5. まとめにかえて
今回は、児童扶養手当の対象と金額、所得制限、そして5年・7年の一部支給停止についてみてきました。令和8年4月分からは全部支給で月4万8050円、第2子以降の加算額は1万1350円です。物価変動率3.2%に基づく引き上げが反映されています。
所得制限は令和6年11月分から引き上げられ、子ども1人なら年収190万円までが全部支給の目安になりました。改正前の160万円から30万円分、線が動いたことになります。
そして、いちばんお伝えしたかったのは最後の点です。「5年たてば半分」と身構えるより先に、毎年8月の現況届と、必要な場合の届出をきちんと出す。ここが実際の分かれ目でした。
適用除外の事由は就業だけでなく、求職活動、障害、負傷や疾病、家族の介護まで幅があります。自分は当てはまらないと早合点せず、書類の内容を確認してみてください。
要件の判断や必要書類は自治体によって案内が異なりますので、お住まいの市区町村の窓口に確認するのが確実です。8月31日までの期限は守り、提出しましょう。
6. ひとり親で元証券会社社員の執筆者コメント:8月に必ず書類の提出を
参考資料
- こども家庭庁「児童扶養手当について」
- こども家庭庁「児童扶養手当制度の概要」
- こども家庭庁「ひとり親家庭等のみなさまへ 「児童扶養手当」に関する大切なお知らせ」
- こども家庭庁「ひとり親家庭等関係資料」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
宮野 茉莉子
