3. 住宅ローン控除には償還期間10年以上という要件がある

繰上返済を考えるときに、あわせて確認しておきたいのが税金の話です。

3.1 10年以上の割賦償還であること

国税庁によると、住宅借入金等特別控除の対象となる住宅借入金等の要件として、契約において償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済することとされている借入金であることが必要とされています。いわゆる住宅ローン控除の要件のひとつです。

期間短縮型の繰上返済は、この償還期間を短くする方法です。控除を受けている途中であれば、期間がどうなるかを確かめておく必要があります。

3.2 要件を満たさなくなるとその年以後は受けられない

国税庁は、繰上返済等をした場合の償還期間について、繰上返済等の後の償還期間で判定するとしています。繰り上げて返済したことによって10年以上の割賦償還に該当しなくなった場合には、その該当しなくなった年以後については住宅借入金等特別控除を受けることはできないとされています。

控除の残り年数が長いほど、影響は大きくなります。返済を軽くしたつもりが、手取りで見ると差し引きが小さくなることもあるでしょう。

4. 10年の判定は最初に償還した月から数える

ここが誤解されやすいところです。

4.1 残りの期間で見るのではない

10年という線は、繰上返済をした時点から先の残りの期間で測るものではありません。国税庁は、当初の契約により定められていた最初に償還した月から、その短くなった償還期間の最終の償還月までの期間が10年以上であれば、その年以後も住宅借入金等特別控除を受けることができるとしています。

つまり数えはじめは、繰上返済をした日ではなく、返済を始めた月です。すでに何年か返してきた方であれば、その分も期間に含まれます。

4.2 具体的にどこを見るか

確認するのは2つです。当初の契約で最初に返済した月がいつか、そして繰上返済のあと最終の返済月がいつになるか。この2点の間が10年以上あるかどうかで判定されます。

この質疑応答事例は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づくものとされています。個別の取り扱いは契約の内容によって変わりますので、判断に迷うときは税務署に確認してください。

数えはじめは繰上返済をした日ではなく、最初に返済した月です2/2

【写真2枚目/全2枚】住宅ローン控除の10年判定。最初に償還した月から最終の償還月までで数える

出所:国税庁「繰上返済等をした場合の償還期間」をもとにLIMO編集部作成

5. 決める前に並べて見ておきたいこと

銀行の窓口で相談を受けてきた立場から、順番をひとつ挙げておきます。

5.1 先に決めるのは手元に残す額

繰り上げて返したお金は、原則として引き出せません。教育費や医療費、収入が途切れたときの生活費まで含めて、手元にいくら残すかを先に決めてから、繰り上げる額を出す順番をおすすめします。

相談の場では、まとまった資金をすべて返済に回してしまい、そのあとの支出に困る方にお会いすることがありました。返済を減らす効果と、手元にお金がある安心感は別のものです。

5.2 控除の残りと合わせて考える

住宅ローン控除を受けている途中であれば、控除があと何年残っているかも並べて見ておきましょう。期間短縮型を選ぶ場合はとくに、償還期間の判定と重なってきます。

返済の条件は返済中の金融機関、控除の取り扱いは税務署が窓口です。どちらも事前に確認できますので、申し込みの期限から逆算して動くとよいでしょう。

中本 智恵

繰上返済は、申し込んでしまえば手続き自体は難しいものではありません。むしろ難しいのは、その前に何を並べて考えるかのほうです。手元に残す額、控除の残り年数、そして返済中の金融機関の条件。この3つが揃わないまま金額だけ決めてしまうと、あとから戻せない選択になります。

とくに住宅ローン控除を受けている途中の方は、期間短縮型を選ぶときに一度立ち止まってください。控除が受けられなくなる年が出てくると、繰り上げて減らせた利息よりも、手取りで失うもののほうが大きくなることがあります。どちらが大きいかは契約の内容によって変わりますので、数字を並べてみるのが確実です。

迷ったときは、返済の条件を金融機関に、控除の取り扱いを税務署に、それぞれ先に確認しておきましょう。どちらも申し込みの前に聞けることです。手続きの期限から逆算すると、確認にあてられる時間が意外と短いことにも気づけます。

6. まとめにかえて

一部繰上返済には、借入期間を短くする期間短縮型と、月々の返済額を少なくする返済額軽減型があります。同じ金額でも効果の出方が違いますので、家計のどこを楽にしたいかで選ぶことになります。

機構融資の場合、住・My Noteなら10万円以上、金融機関窓口なら100万円以上から申し込めます。手数料はかからない一方で、経過利息を支払う場合があり、申し込みにも期限があります。

住宅ローン控除を受けている方は、償還期間の10年という要件もあわせて確認しておきましょう。判定は残りの期間ではなく、最初に償還した月から短くなった償還期間の最終の償還月までで見ます。

参考資料

中本 智恵