まとまったお金ができたとき、住宅ローンを繰り上げて返そうかと考える方は多いのではないでしょうか。

住宅金融支援機構によると、一部繰上返済には借入期間を短くする方法と、月々の返済額を少なくする方法の2つがあります。同じ金額を繰り上げても、どちらを選ぶかで効果の出方は変わります。

筆者は銀行で個人のお客さまの相談を受けてきました。この記事では、2つの方法の違いと、決める前に確かめておきたい点を見ていきましょう。

中本 智恵
繰上返済のご相談では、「いくら返せますか」から話が始まることが多いのですが、実際に迷いが出るのはそのあとです。同じ100万円でも、返済の終わりを早めるのか、毎月の負担を軽くするのかで、家計に表れる形はまったく違います。どちらが得かという比べ方よりも、これから数年のあいだに家計のどこが苦しくなりそうかを先に考えると、選ぶ方向が決まりやすくなります。

1. 一部繰上返済には2つの方法がある

まず、選べる方法の中身を確認します。

1.1 期間短縮型は返済の終わりを早める

住宅金融支援機構は、一部を繰り上げて返済する方法のひとつとして「月々の返済額は今までどおりの額にし、返済額に応じて借入期間を短縮する方法」を挙げています。一般に期間短縮型と呼ばれるものです。毎月の家計の負担は変えずに、完済の時期を前に動かす形になります。

定年までに返し終えたい、という目標がはっきりしている場合に選ばれやすい方法です。

1.2 返済額軽減型は毎月の負担を軽くする

もうひとつが「借入期間は今までどおりの期間にし、月々の返済額を少なくする方法」です。こちらは返済額軽減型と呼ばれます。完済の時期は変わりませんが、毎月出ていく額が下がります。

収入が減る見込みがあるときや、教育費と重なる時期を乗り切りたいときに向いています。同じ金額を繰り上げても、家計に表れる形がまったく違うところが選択のポイントです。

同じ金額を繰り上げても、効果の出方は変わります1/2

【写真1枚目/全2枚】期間短縮型と返済額軽減型の違い。同じ金額を繰り上げても効果の出方は変わる

出所:住宅金融支援機構「繰上返済(個人住宅融資の場合)」をもとにLIMO編集部作成

2. 申し込む窓口で金額の条件が変わる

次に、手続きの条件を見ていきます。ここでは住宅金融支援機構の融資を例にします。

2.1 10万円以上と100万円以上

インターネットサービスの住・My Noteで一部繰上返済を申し込む場合、繰り上げて返済できる額は10万円以上です。金融機関の窓口で申し出る場合は100万円以上となります。手数料は、どちらの方法でもかかりません。

ただし、繰り上げて返済するにあたっては、繰上返済日の直前の返済日の翌日から繰上返済日までに発生する経過利息を支払う場合があります。手数料がかからないことと、支払う額がぴったり繰上返済額だけになることは、別の話です。

10万円から動かせるなら、賞与のたびに少しずつという使い方もできます。窓口だけだと100万円が下限になりますので、この差は小さくありません。

2.2 申し込みには期限がある

住・My Noteの場合、申し込みは一部繰上返済日の2カ月前から1カ月前の日の前営業日までです。金融機関窓口の場合は、繰り上げて返済する1カ月前までに申し出ることになります。

全額を繰り上げて返済する場合、住・My Noteの申し込み期間は完済日の2カ月前から完済日の1カ月前の日の前営業日までです。思い立ってすぐ返せるわけではありませんので、資金の準備と合わせて逆算しておきましょう。

なお、ここで挙げた金額や期限は機構融資のものです。民間の金融機関では最低金額や手数料の扱いが違いますので、返済中の金融機関に確認してください。

2.3 返済期間が10年未満になると控除の対象外になる

もうひとつ、条件として押さえておきたい点があります。住宅金融支援機構は、一部繰上返済をした結果、返済期間(初回返済日から最終回返済日まで)が10年未満になった場合、所得税の税額控除(住宅借入金等特別控除)の対象外になるとしています。

この場合、税額控除を受けるのに必要な「融資額残高証明書」は送付されません。返済を軽くするつもりの手続きが、税金の側に影響してくるということです。

中本 智恵
繰り上げて返すこと自体は前向きな選択です。ただ、返したお金は原則として戻ってきませんので、手元にいくら残すかを先に決めておきたいところです。金利が上がる局面では、繰り上げるか、手元に置いて備えるかの判断も変わってきます。返済中のローンの金利がこの先どう動きうるかは、変動金利が上がったときに返済額がどれだけ増えるかの試算とあわせて見ておくと、判断の材料が増えます。