4. 介護費の自己負担を抑える2制度
続いて介護保険の側です。介護サービスの利用が続くと、月々の負担は積み上がっていきます。ここにも上限を設ける仕組みが用意されています。
4.1 高額介護サービス費
1か月に支払った介護サービスの自己負担が上限を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。上限額は所得段階によって決まります。
住民税非課税世帯で、公的年金等収入金額とその他の合計所得金額の合計が80万円以下であれば、世帯で月2万4600円、個人で月1万5000円が上限です。
住民税非課税世帯でこれに該当しない場合は、世帯で月2万4600円となります。課税世帯は課税所得に応じて、月4万4400円、9万3000円、14万100円の3段階です。
この制度は自動で適用されるものではなく、市区町村への申請が必要です。介護は利用が長期にわたることが多いだけに、申請の有無で差が積み上がっていきます。
4.2 特定入所者介護サービス費
介護保険施設に入所すると、サービス費の自己負担のほかに食費と居住費がかかります。この2つは高額介護サービス費の対象外で、上限の計算にも含まれません。
そこで、所得が一定以下の方には食費と居住費の負担限度額が設けられています。
金額は所得段階、施設の種類、部屋のタイプによって変わり、たとえば特別養護老人ホームの多床室であれば、第1段階で食費が日額300円、居住費が0円となります。
施設利用を検討する段階で、この制度を知っているかどうかは月々の負担に直結します。申請先は市区町村です。
5. 年金に上乗せして受け取れる給付
ここまでは負担を軽くする制度でした。6つ目は、条件を満たせば現金を受け取れる制度です。年金とは別の給付で、年金に上乗せする形で支給されます。
5.1 年金生活者支援給付金の基準額は月5620円
厚生労働省によると、老齢年金生活者支援給付金は月額5620円(2026年度)を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出されます。
老齢年金生活者支援給付金は、下記の要件をすべて満たす方が対象となります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下である(※2)
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 いずれも令和8年10月分からの金額です。この額を超える場合でも、昭和31年4月2日以降生まれの方で92万6500円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方で92万4100円以下の方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
手続きについては、市町村から提供を受ける所得情報等により判定されるため、基本的に課税証明書等の添付は不要です。
なお、初めて受給する場合は請求が必要ですが、2年目以降も引き続き要件を満たす場合は、翌年以降の手続きは原則不要です。
6. FPからのアドバイス|親と話すときに押さえたい3点
制度を並べただけでは、実際の負担は変わりません。証券会社で個人のお客さまを担当してきた経験から、この時期に確認しておきたいことをお伝えします。
6.1 「うちは対象外」と決める前に判定の単位を確認する
「年金があるから対象にならないと思っていた」。そういう声を耳にしたことがあります。ただ、ここまで見てきた制度は、判定の単位がそれぞれ違います。
窓口負担割合は世帯単位、高額介護サービス費は世帯と個人の両方、年金生活者支援給付金は世帯全員の課税状況と本人の所得です。
同じ「所得が多い」でも、どの制度に当てはまるかは変わります。ひとつの制度で対象外だったからといって、他も同じとは限りません。
6.2 申請が要るものと要らないものを分けておく
先ほど見たとおり、年金生活者支援給付金は2年目以降の手続きが原則不要です。一方で高額介護サービス費や特定入所者介護サービス費は、市区町村への申請が前提になります。
この違いを整理しておくと、何を放置してよくて何を放置してはいけないかがはっきりします。特に介護関連は、利用が始まってから申請するまでの期間がそのまま負担増になります。
介護保険の認定を受けたタイミングで、まとめて確認しておくのが現実的です。
6.3 制度は変わる前提で、1年に一度は見直す
今回取り上げた制度のうち、高額療養費制度は2026年8月に変わり、所得区分の細分化は2027年8月からとされています。後期高齢者医療の配慮措置は2025年9月末で終わりました。
つまり、去年調べた内容がそのまま使えるとは限りません。数字を暗記する必要はありませんが、「毎年どこかが変わる」と知っておくだけで、確認する習慣につながります。
7. まとめ
今回整理した6制度のうち、高額療養費制度は2026年8月の見直しで年間上限という新しい考え方が加わりました。
月ごとの上限に届かない方にも、年単位での救済が広がったことになります。
一方で、後期高齢者医療の2割負担に対する配慮措置のように、終了した仕組みもあります。増える方向の変更と減る方向の変更が同時に起きているのが現状です。
制度は知っているだけでは使えず、その多くは申請が前提です。
敬老の日に顔を合わせるこの時期に、加入している医療保険の窓口と市区町村の介護保険担当だけでも共有しておくと、いざというときの動きが変わってくるはずです。
参考資料
- 厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」
- 厚生労働省「令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 厚生労働省「サービスにかかる利用料」
- 厚生労働省「後期高齢者医療事業状況報告」
- 日本年金機構「令和8年度の年金額および年金生活者支援給付金支給金額の改定について」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- LIMO「【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法」
- LIMO「【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説」
加藤 聖人