シルバーウィークの連休で、離れて暮らす親と久しぶりに顔を合わせる方も多いのではないでしょうか。健康の話にはなっても、医療費や介護費の話まで踏み込むのは、なかなか気が引けるものだと思います。
しかし、「使えるはずの制度を知らないまま負担していた」というケースもあるため、この機会にチェックしておいて損はありません。
本記事では、75歳以上世帯の家計で医療・介護費がどれだけの重さを占めているのかを確認したうえで、年金以外に受け取れる給付と負担軽減の6制度を整理します。
なお、75歳以上世帯の家計収支と、後期高齢者医療制度の窓口負担割合については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 75歳以上世帯の家計|医療・介護の負担は毎月の赤字を上回っている
制度の一覧に入る前に、この世代の家計で医療・介護費がどれだけの位置を占めているのかを見ておきます。総務省の家計調査をもとにした数字を並べ替えてみると、負担軽減の制度が効いてくる理由がはっきりします。
1.1 毎月の赤字は2万7225円
まず、世帯主が75歳以上、二人以上・無職世帯の家計を確認します。
実収入: 25万2798円
- うち社会保障給付(主に公的年金給付): 21万1289円
実支出:28万23円
消費支出: 24万8460円
- 食料: 8万33円
- 住居: 1万6257円
- 光熱・水道: 2万4312円
- 家具・家事用品: 1万547円
- 被服及び履物: 5142円
- 保健医療: 1万7213円
- 交通・通信: 2万6294円
- 教育: 142円
- 教養娯楽: 2万2322円
- その他の消費支出: 4万6198円
非消費支出: 3万1563円
- うち直接税: 1万1663円
- うち勤労所得税: 519円
- うち個人住民税: 3206円
- うち他の税: 7938円
- うち社会保険料: 1万9894円
- うち公的年金保険料: 1966円
- うち健康保険料: 1万494円
- うち介護保険料: 7352円
毎月の家計収支
- 実収入:25万2798円
- 実支出:28万23円
- 家計収支:▲2万7225円(赤字)
- 黒字率:▲12.3%
- 平均消費性向:112.3%
- エンゲル係数:32.2%
出所:【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法
月平均では2万7225円の不足となっており、単純に12倍すると年間約32万7000円です。
1.2 医療・介護に関わる支出だけで月3万5059円
ここで、医療と介護に関わる項目だけを抜き出して足してみます。保健医療の1万7213円に、健康保険料1万494円と介護保険料7352円を加えると、合計は3万5059円です。
実支出28万23円に対して12.5%を占めています。もちろん保険料は義務ですから、まるごと消せるものではありません。
ただ、医療・介護の自己負担には上限を設ける制度が複数用意されており、条件に当てはまれば実際に負担が下がります。
あくまでも平均値ではありますが、家計への影響が大きい項目だからこそ、利用できる制度を確認しておくことが重要です。ここからは、その6制度を見ていきます。
2. 【2026年8月改正】高額療養費制度はこう変わった
6制度の1つ目は高額療養費制度です。医療費の自己負担が一定額を超えたときに、超えた分が払い戻される仕組みで、70歳以上には外来だけの上限も設けられています。この制度が2026年8月に見直されました。
2.1 新しく「年間上限」が導入された
厚生労働省の資料によると、今回の見直しの柱は4つあります。
長期療養者への配慮、低所得者への配慮、1人当たり医療費の増加を踏まえた限度額の見直し、そして応能負担の考え方に沿った所得区分の細分化です。
このうち、これまでになかったのが「年間上限」です。月ごとの限度額に届かない月が続くと、これまでは払い戻しを受けられませんでした。
新しい仕組みでは、年単位で見た負担額が上限に達すれば、その年はそれ以上の負担が不要になります。
70歳以上の主な区分では、年間上限が次のように設定されました。
- 年収約370万~770万円:年間上限53万円
- 年収約370万円までの課税世帯:年間上限53万円
- 住民税非課税:年間上限29万円
- 一定所得以下:年間上限18万円
月単位の上限に加えて、年単位でも負担を抑える仕組みが新設されました。
3. 医療費の自己負担を抑える2制度
高額療養費制度に加えて、医療費の負担を左右する仕組みがもう2つあります。ひとつは窓口で支払う割合そのもの、もうひとつは介護費と合わせて上限を判定する制度です。
3.1 後期高齢者医療制度の窓口負担割合
75歳になると後期高齢者医療制度に移り、窓口負担の割合が改めて判定されます。判定基準は次のとおりです。
1割:標準的な所得水準の人
下記の2割、3割に該当しない場合
2割:一般所得者のうち一定以上の所得がある人
次の①と②の両方に該当する場合
- ①同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の方がいる。
- ②同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。
・1人の場合は200万円以上
・2人以上の場合は合計320万円以上3割:現役世代並みの所得がある人
同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上の方がいる場合
上記に加えて、以下の収入等の要件を満す人。
- 世帯内に被保険者が1人の場合:被保険者の収入金額の合計が383万円以上
- 世帯内に被保険者が2人以上の場合:被保険者全員の収入金額の合計が520万円以上
- 世帯内に被保険者が1人で、かつ70歳以上75歳未満の人がいる場合:被保険者と70歳以上75歳未満の人の収入金額の合計が520万円以上
出所:【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説
ここで注意したいのが、判定が世帯単位で行われる点です。同じ世帯にいる後期高齢者医療の被保険者の所得状況が、負担割合の判定に影響する場合があります。
さらに、2割負担の方を対象にした激変緩和措置は2025年9月30日で終了しました。外来の負担増を月3000円までに抑えるものでしたが、現在は適用されません。
3.2 高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護費を別々に見ると、それぞれの上限には届かない。けれども合わせると相当な額になっている。こうした世帯を救うのがこの制度です。
1年間(8月から翌年7月まで)に支払った医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を超えた分が払い戻されます。
夫婦のどちらかに医療費が偏り、もう一方に介護費がかかっているような場合に効いてきます。
医療保険と介護保険の窓口が分かれているため、両方にまたがる制度は見落とされがちです。心当たりがあれば、加入している医療保険の窓口に確認してみてください。

