年金を受け取りながら暮らすなかで、「毎月の収入をもう少し増やせないだろうか」と考えたことのある方は少なくないでしょう。
公的年金には、一定の要件を満たす人が年金に上乗せして受け取れる「年金生活者支援給付金」という制度があります。所得が下がったことなどにより新たに対象となった場合、例年9月の第1営業日以降、順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が緑色の封筒で届きます。
この記事では、3種類ある年金生活者支援給付金のうち「老齢年金生活者支援給付金」を取り上げ、支給要件・2026年度の給付額・支給日・請求手続きの流れを整理していきます。あわせて、国民年金と厚生年金の平均年金月額も確認します。
なお、年金生活者支援給付金の制度内容や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
- 年金生活者支援給付金は、基礎年金の受給者が所得要件などを満たす場合に年金へ上乗せされる給付金で、老齢・障害・遺族の3種類がある。
- 老齢年金生活者支援給付金の2026年度の給付基準額は月額5620円。物価変動率を踏まえ、前年度から3.2%の引き上げとなった。
- 支給対象になっても自動では受け取れず、請求手続きが必要。所得の低下などで新たに対象となった場合は、9月の第1営業日以降に緑色の封筒で請求書が届く。
1. 年金生活者支援給付金とは|3種類の給付金と9月に届く緑色の封筒
「年金生活者支援給付金」は、基礎年金の受給者が一定の所得要件などを満たす場合、年金額に上乗せして受け取ることができる給付金です。
受給中の年金種類に応じて、それぞれの給付金が設けられています。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
出所:年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説
すでに基礎年金を受給中の人が、所得が下がったことなどにより新たに「年金生活者支援給付金」の対象となった場合、例年9月の第1営業日以降順次、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が緑色の封筒で届きます。
※老齢年金を繰上げ受給中の人は、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月の初旬)、または65歳を迎える誕生月の初め頃に届きます。
なお、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた場合、電子申請による請求書の提出も可能です。
スマートフォン(またはPC)とマイナンバーカードにより電子申請で提出した場合、郵送での提出は不要となります。
2. 老齢年金生活者支援給付金|対象になるのは3つの要件をすべて満たす人
今回は3種類ある年金生活者支援給付金のうち、高齢者世帯の暮らしと関わりが深い「老齢年金生活者支援給付金」について、情報を整理していきます。
2.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件
以下の3つの要件をすべて満たす場合、老齢年金生活者支援給付金の支給対象となります。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下(※)である
なお、老齢年金生活者支援給付金の判定基準に、障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まれません。
※昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
要件のうち、見落とされやすいのが2つ目の「同一世帯の全員が市町村民税非課税」です。本人の年金額が基準を下回っていても、同居する家族に課税所得があれば対象外となります。世帯単位での判定である点は押さえておきたいところです。
3. 老齢年金生活者支援給付金の給付額|2026年度は月額5620円が基準
年金生活者支援給付金の金額は、物価変動率を踏まえ年度ごとに改定されるルールがあります。
これにより、2026年度分については、前年度から「+3.2%」となりました。
老齢年金生活者支援給付金:2026年度の給付基準額:5620円(月額)
老齢年金生活者支援給付金の実際の給付額は、月額5620円を基準額(2026年度)とし、保険料納付済期間等に応じて決定します。
なお、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2025年3月における老齢年金生活者支援給付金の平均給付月額(※)は4146円でした。
※2025年3月において認定されている平均給付金額
3.1 支給日は原則「偶数月の15日」|年金とは別に同じ口座へ振り込まれる
「年金生活者支援給付金」は、年金と同じく年6回、偶数月の15日に支払われます(※15日が土日・祝日の場合は、その直前の平日に前倒し)。
次回の支給日は10月15日(木)です。
年金とは別に、同じ口座に同じ日に振り込まれるため、通帳には2つの振込記録が記載されます。
原則として、各支払月にはその前月までの2カ月分がまとめて支払われます。例えば、10月には8月・9月分、12月には10月・11月分、といった具合です。
3.2 【独自試算】平均給付月額4146円は、年間・25年でいくらになるか
月額4146円という金額は、単月で見ると小さく感じるかもしれません。実際に受け取る期間で積み上げると、どの程度の規模になるのかを試算してみましょう。
- 1回の振込額(2カ月分まとめて):4146円 × 2カ月 = 8292円
- 1年あたり:4146円 × 12カ月 = 4万9752円
- 65歳から90歳までの25年間:124万3800円
年間およそ5万円、25年では124万円を超える計算になります。請求手続きをしないままこの金額を受け取り損ねると考えると、はがき1枚の重みが見えてきます。
基準額との差も確認しておきましょう。2026年度の給付基準額は月額5620円ですが、実際の平均給付月額は4146円でした。
- 基準額5620円の年額:6万7440円
- 平均4146円の年額:4万9752円
- その差:月1474円、年間1万7688円
平均給付月額は基準額のおよそ73.8%にとどまります。給付額は保険料納付済期間等に応じて決まるため、納付済期間が短い人ほど基準額から離れていく構造です。
※厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の平均給付月額(2025年3月時点で認定されている金額)と、2026年度の給付基準額をもとにした目安の試算です。給付額は年度ごとに改定され、保険料納付済期間等によって個人ごとに異なります。25年間の累計は金額が一定で推移すると仮定した単純計算です。
4. 国民年金・厚生年金の平均年金月額|個人差の大きさを押さえる
年金の受給額には大きな個人差があります。平均的な水準については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
厚生年金と国民年金では、平均額に9万円近い開きがあります。この差は、老齢年金生活者支援給付金の所得要件を満たすかどうかにも直結します。
5. 老齢年金生活者支援給付金の手続き|請求しなければ受け取れない
老齢年金生活者支援給付金は、支給対象となったら自動的に年金に上乗せされるものではありません。公的年金本体と同様に「請求手続き」をおこなわないと、受け取ることができないお金です。
今回は、手続きフローを「これから65歳を迎え、老齢年金の受給がスタートする人」と「すでに老齢年金を受給している人」に分けて紹介しておきましょう。
5.1 これから65歳を迎え、老齢年金の受給が始まる人
誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書とともに給付金請求書が郵送されます。
必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに最寄りの年金事務所に提出します。
5.2 すでに老齢年金を受給している人
冒頭でも触れたように、すでに老齢年金を受給中の人が、所得の低下などにより新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、毎年9月の第1営業日から順次、年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届きます。
必要事項を記入し、郵便ポストに投函しましょう。
5.3 2年目以降は手続き不要|要件を満たす限り継続して受給できる
年金生活者支援給付金は、一度請求手続きをおこなえば「支給要件を満たす限り」2年目以降は手続き不要です。
前年の所得に基づいて継続支給の判定がおこなわれ、その結果が毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。
給付額が改定された際には「年金生活者支援給付金支給金額改定通知書」が、給付金の支給対象外となった場合には「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。
6. 対象になり得るのはどんな人か|編集部試算と監修者コメント
6.1 【独自試算】国民年金だけの人は、所得要件80万9000円を下回る
支給要件の3つ目に挙がっていた「前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が80万9000円以下」という基準は、実際の年金額と比べるとどの位置にあるのでしょうか。この記事に出てきた平均年金月額を年額に直して並べてみます。
- 国民年金〈全体〉5万9310円 → 年71万1720円(基準まで9万7280円の余裕)
- 国民年金〈男性〉6万1595円 → 年73万9140円(同6万9860円)
- 国民年金〈女性〉5万7582円 → 年69万984円(同11万8016円)
- 厚生年金〈全体〉15万289円 → 年180万3468円(基準を99万4468円超過)
国民年金だけを受け取っている人は、平均額の水準であれば所得の基準を下回ります。他の要件(65歳以上・同一世帯の全員が市町村民税非課税)を満たせば、対象になり得る位置にいるということです。
ただし、これはあくまで平均額での比較です。国民年金を満額(2026年度は月7万608円)で受け取る場合は年84万7296円となり、基準の80万9000円を3万8296円超えます。パート収入や利子などその他の所得があれば、それも合算されます。
一方、厚生年金を受け取っている人は平均額でも基準を大きく上回り、補足的老齢年金生活者支援給付金の範囲(90万9000円以下)にも届きません。この制度が主にどの層を支えるものなのかが、数字からも読み取れます。
上乗せの効果も見ておきましょう。国民年金の平均5万9310円に平均給付月額4146円が加わると、月6万3456円となり、年金額に対しておよそ7.0%の増加になります。基準額5620円が満額で支給される場合は月6万4930円で、増加率は約9.5%です。
※この記事に掲載された平均年金月額を12倍して年額に換算し、支給要件の所得基準(昭和31年4月2日以後生まれの場合の80万9000円)と単純に比較した目安の試算です。実際の判定は前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額でおこなわれ、世帯全員の市町村民税非課税など他の要件も満たす必要があります。個人ごとに結果は異なります。
年金生活者支援給付金は、公的年金の「上乗せ」として設計された制度です。老齢年金生活者支援給付金の場合、金額そのものは基準額で月5620円、実際の平均は4146円ですが、受け取る側にとっては、支給要件を満たしている限り終身にわたる収入の底上げにあたります。基準額が物価変動率を踏まえて毎年度改定される点も、預貯金にはない性質です。
注意していただきたいのは、この制度が申請主義だという点です。要件を満たしていても、はがきを返送しなければ支給は始まりません。制度を知らないこと、あるいは郵便物を見落とすことが、そのまま金額の差になってしまいます。
老齢年金生活者支援給付金について、確認していただきたい観点を、順に整理します。第一に、9月から10月にかけて日本年金機構からの郵便物が届いていないか。第二に、ご自身の前年の公的年金等の収入とその他の所得の合計額。第三に、同一世帯に市町村民税が課税されている方がいないか。第三の点は本人の年金額だけでは判断できないため、世帯全体で確認する必要があります。
そして、一度対象外だった方も状況が変われば該当することがあります。世帯構成の変化や所得の低下は、判定に直結します。ご自身が対象かどうか迷われたときは、年金事務所か、日本年金機構の「給付金専用ダイヤル」(ナビダイヤル 0570-05-4092、050から始まる電話からは03-5539-2216)で確認してみてください。制度は使える人が使ってはじめて意味を持ちます。






