国民年金の保険料を免除してもらった期間があると、将来の年金や給付金で不利になるのではないかと気にされる方がいます。
厚生労働省が公表した「令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況」によると、国民年金第1号被保険者1368万人のうち、保険料の全額免除または納付猶予を受けていた方は592万人でした。決して少ない人数ではありません。
この記事では、年金生活者支援給付金の計算のなかで免除期間がどう扱われるのかを、令和8年度の単価をもとに確認していきます。
- 国民年金第1号被保険者1368万人のうち、全額免除または納付猶予を受けていた方は592万人だった
- 老齢年金生活者支援給付金の令和8年度の単価は、納付済期間分が月5620円、免除期間分が月1万1768円
- 免除期間分の単価は納付済期間分の約2倍。免除期間があると給付額は押し上げる方向に働く
なお、年金生活者支援給付金の制度内容や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 年金生活者支援給付金とはどのような制度か
はじめに制度の位置づけを確認しておきましょう。細かい計算に入る前に、何のための給付金なのかを押さえておくと理解しやすくなります。
1.1 年金に上乗せして支給される
年金生活者支援給付金は、老齢・障害・遺族それぞれの基礎年金を受け取っている方のうち、年金等の収入や所得の合計額が一定以下である場合に支給されるものです。2019年10月にはじまった制度で、公的年金に上乗せして支払われます。
受け取っている年金の種類に応じて、次の3つに分かれています。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
1.2 老齢年金生活者支援給付金の支給要件
老齢年金生活者支援給付金の対象になるのは、次の3つをすべて満たす方です。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受けている
- 請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税となっている
- 前年の年金収入金額とその他の所得の合計が80万9000円以下(昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下)
所得の判定に、障害年金や遺族年金などの非課税の収入は含まれません。所得が80万9000円を超えて90万9000円以下の場合は、補足的老齢年金生活者支援給付金の対象になります。
この要件については、LIMOの記事「年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説」から引用して確認しておきましょう。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下
出所:年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説
2. 【国民年金の保険料】免除や納付猶予を受けていた方は592万人
ここで、国民年金の保険料をどのくらいの方が免除されているのかを見ておきます。自分だけの事情ではないと分かると、制度の使い方を考えやすくなります。
2.1 令和6年度の納付状況
厚生労働省「令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況」によると、令和6年度末時点の国民年金第1号被保険者は1368万人でした。その内訳のうち、保険料の負担に関わる区分は次のとおりです。
- 全額免除・納付猶予者:592万人
- 一部免除者:33万人
- 未納者:72万人
全額免除または納付猶予を受けていた方は、第1号被保険者のおよそ4割にあたります。学生納付特例や申請による全額免除など、複数の区分が含まれた数字です。
国民年金第1号被保険者1368万人のうち、免除や猶予を受けていた方の人数1/2
出所:厚生労働省「令和6年度の国民年金の加入・保険料納付状況」をもとにLIMO編集部作成
2.2 免除と未納は扱いが違う
ここで押さえておきたいのは、免除と未納がまったく別の扱いになるという点です。免除は申請して承認された期間で、受給資格期間に算入されます。
一方で未納は、手続きをせずに保険料を納めなかった期間です。受給資格期間に入らず、給付金の計算でも考慮されません。同じ「納めていない」ように見えても、あとの結果は大きく変わります。
3. 令和8年度の給付基準額と、免除期間の単価
年金生活者支援給付金は、公的年金と同じように毎年度、物価の変動に応じて金額の見直しが行われます。令和8年度の金額を確認しておきましょう。
3.1 3種類の給付基準額
令和8年度の月額は次のとおりです。
- 老齢年金生活者支援給付金:5620円(基準額)
- 障害年金生活者支援給付金:1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:5620円
このうち老齢年金生活者支援給付金だけは、基準額をもとに保険料納付済期間や免除期間に応じて実際の金額が計算されるため、人によって差が出ます。
3.2 免除期間分の単価は納付済期間分の約2倍
老齢年金生活者支援給付金は、次の2つを足し合わせて計算します。
- 納付済期間分:5620円×保険料納付済期間÷480
- 免除期間分:1万1768円×保険料免除期間÷480
480は40年を月数に直した数字です。免除期間分の単価である1万1768円は、老齢基礎年金の満額の6分の1にあたり、納付済期間分の5620円と比べると約2倍になります。
なお4分の1免除の期間については、満額の12分の1にあたる5884円が単価です。昭和31年4月1日以前生まれの方は、免除期間分が1万1734円、4分の1免除が5867円となります。
免除期間分の単価は納付済期間分の約2倍に設定されている2/2
出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」をもとにLIMO編集部作成
3.3 免除期間は給付額を押し上げる方向に働く
単価の設定から分かるとおり、免除を受けた期間があると給付額は下がるのではなく、むしろ押し上げる方向に働きます。免除期間が長いほど給付金が減るというわけではないのです。
受け取れる金額が基準額の5620円を下回る主な理由は、納付済期間と免除期間を合わせても480か月に届かない場合です。未納の期間があったり、海外に住んでいて加入していなかった期間があったりすると、その分が反映されます。
給付金の土台となる年金そのものにも、受給額の個人差があります。平均額については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用しておきます。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
4. 年金生活者支援給付金の請求手続きの方法
年金生活者支援給付金は、請求の手続きをすることで受け取れるしくみです。対象になる方には日本年金機構から請求書が郵送されます。
4.1 これから老齢年金を受け取り始める方
65歳になる3か月前に届く年金請求書に、給付金の請求書が同封されます。必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書とあわせて年金事務所へ提出します。
4.2 すでに年金を受給中の方
新たに要件を満たした場合は、毎年9月の第1営業日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。必要事項を記入し、切手を貼ってポストに投函します。
請求は原則として、手続きをした月の翌月分からの支給になります。一度提出すれば、支給要件を満たすかぎり2年目以降の手続きは原則として必要ありません。
自治体で国民健康保険と後期高齢者医療の保険料を担当していた頃、「払えないので放っておいた」という相談を受けることが何度もありました。制度は違っても、手続きをして認められた免除と、何もしないままの未納では扱いがまったく変わります。負担が重いと感じたときは、まず窓口に相談していただきたいと思っています。


