年金生活者支援給付金は、住民税が非課税であれば受け取れる制度だと思われがちです。ところが実際には、世帯全員が非課税でも対象にならないことがあります。
要件は3つあり、非課税はそのうちの1つにすぎません。もう1つの柱が所得の基準額で、令和8年度は前年の年金収入とその他の所得の合計が80万9000円以下であることが条件です。この線をわずかに超えた方のために、補足的老齢年金生活者支援給付金という仕組みも用意されています。
この記事では、支援給付金の3つの要件、所得80万9000円という線の意味、そして超えた場合に使える補足的老齢の仕組みを順に確認していきます。
なお、年金生活者支援給付金の制度内容や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
- 要件は3つ。世帯全員が非課税でも、所得が基準額を超えていれば対象外になる
- 令和8年度の基準額は80万9000円。超えても90万9000円までは補足的老齢の対象
- 補足的老齢は所得が増えるほど段階的に減り、90万9000円でゼロに近づく
1. 年金生活者支援給付金の要件は3つある
はじめに、制度の対象になる条件を確認していきます。ここで扱うのは、老齢年金を受け取っている方が対象の老齢年金生活者支援給付金です。
給付金の種類については、LIMOの記事「年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説」から要点を引用しておきます。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
出所:年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説
1.1 非課税は3つのうちの1つにすぎない
老齢年金生活者支援給付金を受け取れるのは、次の3つをすべて満たす方です。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受けていること
- 請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税となっていること
- 前年の年金収入金額とその他の所得の合計が基準額以下であること
「住民税が非課税なら受け取れる」と理解されている方が多いのですが、非課税は2つ目の要件にあたります。3つ目の所得の基準額を満たしていなければ、非課税であっても対象にはなりません。
1.2 2つ目と3つ目は見ているものが違う
2つ目の非課税要件は、本人だけでなく同じ世帯の全員が非課税であることを求めています。一方、3つ目の基準額は本人の前年の収入と所得だけを見ます。
つまり、本人の所得が基準額以下でも同居する家族に課税されている方がいれば対象外になりますし、逆に世帯全員が非課税でも本人の所得が基準額を超えていれば対象外です。どちらか一方を満たすだけでは足りないということです。
2. 所得の線は80万9000円。超えても90万9000円までは対象になる
3つ目の要件にある基準額は、生年月日によって金額が分かれます。ここが制度のわかりにくいところです。
判定に使う年金収入の水準がどのくらいなのかは、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」の平均額が目安になります。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
2.1 生年月日で2つの金額に分かれる
令和8年度の基準額は次のとおりです。
- 昭和31年4月2日以後生まれ:80万9000円以下
- 昭和31年4月1日以前生まれ:80万6700円以下
判定に使われるのは老齢年金などの課税対象となる収入であり、障害年金や遺族年金といった非課税の収入は含まれません。遺族年金を受け取っている方が、その分を足して基準額を超えると誤解されることがありますが、判定には入らない点を押さえておいてください。
基準額を超えても、すぐにゼロになるわけではありません1/2
出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」をもとにLIMO編集部作成
2.2 超えた場合に使えるのが補足的老齢
所得が基準額をわずかに超えたことで給付が一切受けられなくなると、基準額ぎりぎりで対象になった方との間に逆転が生じてしまいます。これを避けるために設けられているのが、補足的老齢年金生活者支援給付金です。
昭和31年4月2日以後生まれの方であれば、所得が80万9000円を超え90万9000円以下の範囲が対象です。昭和31年4月1日以前生まれの方は、80万6700円を超え90万6700円以下となります。
基準額を1円超えたから対象外、という制度ではないということです。ご自身の所得が基準額の少し上にある方は、補足的老齢に当てはまるかどうかを確認してみてください。
3. 補足的老齢年金生活者支援給付金はいくらになるのか
補足的老齢年金生活者支援給付金は、通常の給付金とは計算のしかたが異なります。所得が増えるにつれて段階的に減っていく仕組みです。
3.1 調整支給率で金額が変わる
令和8年度の計算式は「5620円×保険料納付済期間÷480月×調整支給率」です。調整支給率は「(90万9000円-前年の収入合計)÷10万円」で求めます。
たとえば480カ月すべて保険料を納めた方で、所得が81万9000円だった場合を考えます。調整支給率は(90万9000円-81万9000円)÷10万円で0.9となり、月額は5620円×0.9で約5058円という計算です。
所得が85万9000円であれば調整支給率は0.5となり、月額は約2810円まで下がります。90万9000円に近づくほど金額は小さくなっていきます。
所得が基準額を超えた分だけ、給付額が段階的に下がっていきます2/2
出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」をもとにLIMO編集部作成
3.2 通常の給付金は保険料の納付状況で決まる
参考までに、基準額以下で対象となる通常の老齢年金生活者支援給付金の計算も確認しておきます。保険料納付済期間に応じた部分が「5620円×保険料納付済期間÷480月」、保険料免除期間に応じた部分が「1万1768円×保険料免除期間÷480月」で、この2つを足した金額が支給されます。4分の1免除の期間は5884円で計算されます。
免除期間分の単価は納付済期間分より高く設定されていますので、免除を受けていた期間があることで給付額が下がるわけではありません。
住民税が非課税かどうかと、所得が基準額以下かどうかは別の話です。どちらも満たして初めて対象になりますので、片方だけで判断せず、両方を確かめてみてください。自分がどちらに当てはまるか分からないときは、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確認できます。


