「同世代はどれくらい貯めているのだろう」。老後のお金の話になると、必ずと言っていいほど出てくる問いです。

総務省が2026年5月19日に公表した家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果によると、二人以上の世帯の貯蓄現在高は、世帯主が60歳代で2843万円、70歳以上で2471万円でした。二人以上の世帯全体では平均2059万円です。

ただ、この数字を見て「うちとはずいぶん違う」と感じた方も多いのではないでしょうか。同じ調査の中央値は1264万円で、平均とは800万円近い開きがあります。

この記事では、年齢階級別の貯蓄額を確認したうえで、平均と中央値がなぜこれだけずれるのか、そして負債を差し引いた実質的な手元資金がどうなるのかを見ていきます。

ココがポイント
  • 二人以上の世帯の貯蓄現在高は、世帯主60歳代で2843万円、70歳以上で2471万円(2025年平均)
  • 二人以上の世帯全体の平均は2059万円だが、中央値は1264万円。平均は一部の高額世帯に引き上げられている
  • 負債を差し引いた純貯蓄額は60歳代2609万円、70歳以上2390万円。現役世代とは負債の水準が大きく異なる
  • 家計調査の年齢区分は「70歳以上」までで、80歳代を単独で示した公的な貯蓄統計は限られる

1. 年齢階級別に見た貯蓄現在高

まずは世帯主の年齢別に、貯蓄がどう積み上がっていくのかを確認します。総務省の家計調査は、二人以上の世帯を対象に毎年この数字を公表しています。

1.1 60歳代がピーク、70歳以上で減少に転じる

2025年平均の貯蓄現在高は、世帯主が39歳以下で994万円、40歳代で1381万円、50歳代で1756万円、60歳代で2843万円、70歳以上で2471万円でした。

50歳代から60歳代にかけて1000万円以上増えているのが目を引きます。退職金の受け取りや、教育費の負担が終わったことが背景にあると考えられます。

一方、70歳以上では60歳代より372万円少なくなっています。年金生活に入り、貯蓄を取り崩す局面へ移っていることがうかがえる数字です。

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果(二人以上の世帯)」をもとにLIMO編集部作成

2. 平均2059万円に対し、中央値は1264万円

年齢別の数字を見て、実感と合わないと感じた方もいるかもしれません。その理由は、平均という数え方の性質にあります。

2.1 800万円近い開きが生まれる理由

2025年平均の二人以上の世帯の貯蓄現在高は、平均2059万円に対して中央値が1264万円でした。中央値とは、世帯を貯蓄額の少ない順に並べたときにちょうど真ん中に来る世帯の値です。

平均は、ごく一部の貯蓄が非常に多い世帯に引き上げられます。実際、貯蓄が4000万円以上の世帯が一定数あり、こうした世帯が平均を押し上げているのです。

「みんなが2000万円持っている」わけではなく、真ん中あたりの世帯は1200万円台というのが実態に近いと言えます。

2.2 年間収入との比較

同じ調査では、貯蓄現在高が年間収入の何倍にあたるかも示されています。2025年平均は302.3%で、およそ3年分の年間収入に相当する貯蓄を持っている計算になります。

3. 負債を差し引いた「純貯蓄額」で見ると

貯蓄の額だけを見ていると、住宅ローンなどの負債が視野から外れます。実際に使えるお金に近い形で捉えるなら、負債を引いた純貯蓄額を見るほうが実態に迫れます。

3.1 60歳代以降は負債がほとんどない

2025年平均の負債現在高は、世帯主が39歳以下で1882万円、40歳代で1483万円、50歳代で743万円、60歳代で234万円、70歳以上で81万円です。負債を保有している世帯の割合も、40歳代の67.0%に対し、60歳代は26.5%、70歳以上は10.4%まで下がります。

この結果、貯蓄から負債を差し引いた純貯蓄額は、39歳以下がマイナス888万円、40歳代がマイナス102万円、50歳代が1013万円、60歳代が2609万円、70歳以上が2390万円となります。

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世帯主の年齢階級別 純貯蓄額と負債保有世帯の割合(2025年平均・二人以上の世帯)

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果(二人以上の世帯)」をもとにLIMO編集部作成

40歳代までは負債が貯蓄を上回り、50歳代でプラスに転じ、60歳代で最も厚くなる。老後資金は、この60歳代のピークをどう維持するかという課題に置き換えられます。

中本 智恵

銀行の窓口で通帳をお見せいただくと、統計の「貯蓄」と手元の残高は別物だと感じることがよくありました。統計には保険や有価証券も含まれますが、すぐ動かせるお金はその一部です。平均額と比べて安心したり落ち込んだりする前に、ご自身の内訳を分けて眺めてみることをおすすめします。