年金は偶数月に支給されますが、年金額が改定されても生活費のやりくりは依然として切実な課題です。物価の上昇が続くなか、公的な支援制度を正しく理解して活用することが、豊かなセカンドライフを送るための第一歩になります。

60歳・65歳以上の方が対象となる公的給付金をご存じでしょうか。この記事では、年金以外にもらえる加給年金や雇用保険関連の手当など、知っておきたい制度を解説します。ご自身が対象となる制度がないか、ぜひ確認しましょう。

川勝 隆登
シニア向けの給付金は、その多くが「申請しないともらえない」仕組みになっています。自分が対象かどうかを知っているかどうかで、受け取れる金額に年間数十万円の差が生まれることも珍しくありません。

なお、シニア向けの公的給付金の要件・金額については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!
【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説
ココがポイント
  • シニア向け給付金のほとんどは自己申告制。手続きを怠ると年数十万円単位の手当をもらい損ねる場合がある
  • 60〜64歳で失業手当を受け取ると、その間の「特別支給の老齢厚生年金」が全額停止される点に注意
  • 高年齢雇用継続給付は給付率が10%へ引き下げられ、5年間で最大72万円の差が生じる計算

1. 公的なお金の多くは「申請しないともらえない」

老齢年金や障害年金、遺族年金は、暮らしを支える大きな柱です。ただし、受給資格を満たしていれば自動的に振り込まれる、という仕組みではありません。受け取りを始めるには、自分で「年金請求書」を提出する手続きが欠かせません。

国や自治体が用意する給付金・補助金も同じ構造です。期限を過ぎてしまったり、必要書類が揃わなかったりすると、受給額が減る、あるいは受け取れなくなるといった形で不利益がそのまま跳ね返ってきます。

用意されている支援を使い切るには、まず自分が対象になる制度を把握し、手続きを最後まで済ませることが出発点になります。

2. 【老齢年金】申請してはじめて受け取れる2つの上乗せ給付

老齢年金を受け取っている方が一定の要件を満たすと、本体の年金に上乗せして受け取れる制度が2つあります。順に見ていきましょう。

2.1 年金版の家族手当「加給年金」とは

加給年金は、厚生年金に20年以上加入していた方が65歳を迎えたとき、生計を維持している年下の配偶者や子どもがいる場合に上乗せされる制度です。役割としては、年金版の「家族手当」にあたります。

加給年金の支給要件について

  • 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
  • 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)

(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年

それぞれのタイミングで「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいれば、年金に加算される流れです。

ただし例外があります。配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)や退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受け取る権利を持っている場合、あるいは障害厚生年金・障害基礎年金・障害共済年金などを受給している場合は、配偶者加給年金額が支給停止となります。

2026年度における加給年金の金額

加給年金の加給年金額2/8

加給年金の加給年金額

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

「加給年金」の年金額(2026年度の年額)は以下のとおりです。

  • 配偶者:24万3800円
  • 1人目・2人目の子:各24万3800円
  • 3人目以降の子:各8万1300円

これに加えて、老齢厚生年金を受給している方の生年月日に応じ、配偶者の加給年金額には3万6000円から17万9900円の特別加算額が上乗せされます。

2.2 《試算》配偶者が5歳年下なら、加給年金の総額はいくらになる?

加給年金は「配偶者が65歳になるまで」という期限付きの給付です。総額でいくらになるのかを具体的に計算してみましょう。夫が65歳になった時点で妻が60歳(5歳年下)のケースを想定し、特別加算が満額(17万9900円)適用される場合で試算します。

年額:配偶者加給年金24万3800円 + 特別加算17万9900円 = 42万3700円
受給期間:妻が65歳になるまでの5年間
総額:42万3700円 × 5年 = 約212万円

申請を忘れると、この約212万円を丸ごと受け取り損ねることになります。配偶者との年齢差が大きいほど受給期間が長くなるため、10歳年下であれば総額は倍近くにもなる計算です。特別加算額は受給者の生年月日によって3万6000円〜17万9900円と幅があるため、あくまで一定の前提を置いた目安の試算です。実際の金額は年金事務所でご確認ください。

配偶者の年金に加算される「振替加算」

配偶者が65歳を迎えると加給年金は打ち切られますが、そこで終わりではありません。一定の要件を満たせば、今度は配偶者本人の老齢基礎年金に「振替加算」として一定額が引き継がれます。

2.3 所得が一定基準以下の場合の「老齢年金生活者支援給付金」

老齢年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金を受け取っている方のうち、所得や世帯収入が一定の基準を下回る場合に支給されます。年金本体とは別の法律を根拠とする「給付金」であり、生活の底上げを目的とした制度です。

老齢年金生活者支援給付金の対象となる条件

年金生活者支援給付金制度について3/8

年金生活者支援給付金制度について

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)である

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される

老齢年金生活者支援給付金の基準額はいくら?

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額4/8

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度、老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円で、前年度より3.2%増額されました。この基準額をもとにして、保険料納付状況等により給付金額が算出されます(下記①と②の合計額)。

  • ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
  • ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

※保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変わります。

監修者コメント

中本 智恵

年金受給で特に注意したいのが「加給年金と老齢厚生年金の繰下げ受給の兼ね合い」です。「老齢厚生年金を75歳まで繰り下げて増額しよう」と待機すると、その間は原則として本来受け取れるはずの加給年金も支給停止となります。配偶者の年齢や待機期間によっては、受け取れない加給年金の総額が大きくなり、繰下げによる増額分を圧迫する可能性があります。

なお、老齢基礎年金のみを繰り下げて、老齢厚生年金は65歳から受け取るという選択をした場合は、厚生年金の受給に伴い加給年金を受け取ることが可能です(ただし厚生年金自体の増額はありません)。

お金に関する記事を書く中でも、繰下げは「増額率」の数字だけで語られがちだと感じます。額面の増額率だけに惑わされず、世帯全体で受給できる総額を試算して判断することが重要です。

3. 【雇用保険】働き続けるシニアが申請できる3つの給付金

ここからは、就労に関わる給付金や手当を確認します。シニアの就労を後押しする制度は整ってきていますが、一般的には60歳を境に収入が下がる傾向があります(※)。就職活動や就労の継続が、若い頃と同じようには進まないケースも想定しておく必要があるでしょう。

※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円

3.1 65歳未満の早期再就職を後押しする「再就職手当」

再就職手当は、早く再就職するほど支給額が増える設計になっています。「失業から再就職まで」あるいは「失業から事業開始まで」の期間が短いほど有利になる、という仕組みです。

再就職手当の支給要件

  • 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
  • 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給

再就職手当の給付率

  • 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の60%」
  • 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の70%」

再就職手当の額5/8

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

さらに、再就職手当を受け取ったうえで再就職先に6カ月以上勤め、その6カ月間の賃金が離職前を下回っている場合は、「就業促進定着手当」の対象にもなります。

3.2 60歳から65歳未満で働き続ける人の「高年齢雇用継続給付」

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が働き続けるにあたり、賃金が60歳到達時より下がった場合に支給される給付金です。

高年齢雇用継続給付の支給要件

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
  • 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
  • 支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額

※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%

【早見表】高年齢雇用継続給付(2025年4月1日以降)6/8

【早見表】高年齢雇用継続給付

出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

見落としやすいのが、年金との調整です。老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、あわせて高年齢雇用継続給付を受ける場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)にあたる額がさらに止まります。

※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%

3.3 《試算》給付率10%への引き下げで、5年間の受給総額はいくら変わる?

高年齢雇用継続給付の給付率は、2025年4月から15%→10%へ引き下げられました。この改正で受給総額がどれだけ変わるのか、具体的に計算してみましょう。60歳到達時の賃金が月40万円で、60歳以降は月24万円(60%に低下)となり、そのまま65歳まで働き続けるケースを想定します。

【給付率10%(2025年4月以降)】
月額:24万円 × 10% = 2万4000円
5年間(60カ月)の総額:144万円

【給付率15%(改正前)】
月額:24万円 × 15% = 3万6000円
5年間(60カ月)の総額:216万円

同じ働き方でも、制度改正によって5年間で約72万円の差が生じる計算です。60歳以降の働き方を検討する際は、この給付金をあてにしすぎない前提で家計を組んでおくほうが安全といえます。賃金の低下率によって支給率は変動し、実際の支給額は上限額の適用などによっても異なります。あくまで一定の前提を置いた目安の試算です。

3.4 65歳以上で失業したときの「高年齢求職者給付金」

高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が職を失った際に支給される給付金です。

高年齢求職者給付金の支給要件

  • 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
  • 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
  • 失業の状態にある(就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態)

高年齢求職者給付金の給付金額

  • 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
  • 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額

受け取り方にも違いがあります。65歳未満が対象の「失業手当」は4週間ごとに失業認定を受けて分割で支給されますが、高年齢求職者給付金は一括で振り込まれます。

川勝 隆登
雇用保険の給付は、年金機構ではなくハローワークの管轄です。年金事務所で相談しても雇用保険の話は出てきませんし、その逆もあります。両方の窓口に足を運んで確認することが、取りこぼしを防ぐ確実な方法だと考えています。

監修者コメント

中本 智恵

ハローワークで手続きをして雇用保険の基本手当(失業手当)を受給すると、求職の申込みを行った日の属する月の翌月から、失業給付の受給期間が経過する月、または所定給付日数を受け終わる月のいずれか早い月までの期間、65歳未満に支給される「特別支給の老齢厚生年金」が全額支給停止となります。

失業手当の日額より年金のほうが高かった場合、結果的に受給総額が目減りするケースがあり得ます。60代前半の退職では、基本手当の受給総額と、支給停止される特別支給の老齢厚生年金の総額を比較し、申請すべきか慎重にシミュレーションすることが必要です。

なお、65歳到達日以後に退職した場合は「高年齢求職者給付金」となりますが、65歳以降の老齢年金は雇用保険の給付と調整されないため同時に満額受給できます。65歳未満での受給とは扱いが大きく異なる点にご注意ください。

4. 【医療・介護・生活】負担を大きく抑える軽減制度と給付金

60代、70代と年齢を重ねると、家計を圧迫しはじめるのが医療費と介護費用です。こうした支出で老後の資金が尽きてしまうことのないよう、公的医療保険と介護保険には上限額の設定や払い戻しの仕組みが備わっています。

4.1 医療費が高額になったときの「高額療養費制度」

ひと月(月初から月末まで)の医療費の自己負担額が、年齢と所得に応じて定められた「自己負担限度額」を超えたとき、超過分が後から払い戻される制度です。一般的な所得層(70歳未満・年収約370万〜約770万円)であれば、ひと月の限度額は「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」が基本になります(※2026年8月診療分からの改定後の金額)。

ここで気をつけたいのが「立て替えリスク」です。事前の手続きをしていないと、退院時に窓口で数百万円をいったん支払わなければならず、払い戻しは3〜4カ月後になります。2026年現在は、マイナ保険証を使うか、あらかじめ「限度額適用認定証」を申請しておけば、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えられます。

4.2 介護費用を抑える「高額介護サービス費」

介護保険サービスで支払った1カ月の自己負担額(1割〜3割)の合計が所得に応じた上限を超えたとき、超過分が払い戻される制度です。

実務上の注意点として押さえておきたいのは、「介護施設での食費・居住費(部屋代)・日常生活費」や「特定福祉用具購入費・住宅改修費」は、この計算からすべて除外されるという点です。「高額介護サービス費があるから特養に入っても月数万円で足りる」と思い込んでいると、対象外の食費や居住費が毎月10万円以上上乗せされ、資金が底をつく事態になりかねません。

4.3 医療と介護のダブル負担に効く「高額医療・高額介護合算療養費制度」

1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)にかかった医療費と介護費用の自己負担額を世帯で合算し、基準額を超えた分の払い戻しを受けられる制度です。

年単位の計算になるため意識から抜けやすいのですが、対象となる世帯には原則として医療保険者から案内が届きます。問題は、計算期間の途中で「75歳になって後期高齢者医療制度に移った」「退職して健康保険から国民健康保険に変わった」といった異動があった場合です。データが分断されて案内が届かず、自分で過去の保険者に申請しなければ、2年の時効で権利が消えてしまいます。

4.4 住民税非課税世帯向けの「臨時給付金・自治体支援」

物価高騰への対応として、国や自治体が住民税非課税世帯を対象に臨時給付金を出すことがあります。その時々の補正予算や地方交付金を財源とする、一時的な措置です。

注意したいのは、「住民税が課税されている方(別居の家族などを含む)の税法上の扶養親族等のみで構成されている世帯」は対象外とされる点です。世帯分離をして住民票上は非課税の単身世帯になっていても、判定に効いてくるのは住民票ではなく税法上の扶養状況です。

監修者コメント

中本 智恵

医療や介護の軽減制度で注意したいのが「世帯分離」の誤解です。「世帯を分ければ住民税非課税世帯になり、高額療養費の上限も下がり、臨時給付金ももらえる」というネット上の表面的な知識だけで世帯分離を行った結果、会社の健康保険の扶養から外されてしまい、国民健康保険料と介護保険料が単独で請求され、かえって年間数十万円の赤字に転落する場合もあります。

行政の軽減制度は、「税金・社会保険料の負担増」という裏のコストとセットで計算する必要があります。目先の軽減額だけで判断せず、世帯全体で差し引きいくらになるのかを確認していただきたいところです。

5. 2025年年金制度改正のポイント:遺族年金の見直し

2025年6月に成立した年金制度改正法の大きな狙いは、働き方や家族構成の多様化に合わせて制度を整え直すことにあります。今回の改正には、いわゆる「106万円の壁」撤廃に関わる社会保険の加入要件拡大に加え、遺族年金の見直しも含まれました。

5.1 遺族厚生年金における男女差解消への動き

遺族厚生年金の見直し8/8

遺族厚生年金の見直し

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

これまでの遺族厚生年金には、受給者の性別によって次のような扱いの差がありました。

現行の遺族厚生年金の仕組み

  • 女性:30歳未満で死別は5年間の有期給付、30歳以上で死別は無期給付
  • 男性:55歳未満で死別は給付なし、55歳以上で死別は60歳から無期給付

この男女差をなくす方向での見直しが、2028年4月から施行される予定です。

2028年4月から施行予定の新しい仕組み

「原則5年間の有期給付」の対象になる要件が、男女それぞれについて細かく定められました。

  • 女性:施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのは、「18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です(すでに遺族厚生年金を受給している方や、2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けません)。
  • 男性:新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、「18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方」です。
  • こどもがいる場合:18歳年度末までのこどもがいる場合は、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります。

5.2 有期給付・継続給付の拡充内容

配慮が必要なケースについては、給付の金額や要件が具体的に示されています。

  • 有期給付の増額:有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
  • 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件:5年間の有期給付終了後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、概ね月額20〜30万円を超えると全額支給停止となります。

あわせて「遺族基礎年金」も見直されました。これまで同一生計の父または母が遺族基礎年金を受け取れなかったケースでも、2028年4月からはこどもが単独で受給できるようになります。

5.3 在職老齢年金の緩和

一方、働きながら年金を受け取ると減額される「在職老齢年金」については、就労意欲を削いでいるという指摘を受け、減額が始まる基準額が65万円まで引き上げられました。

監修者コメント

中本 智恵

今回の改正の方向性を見ると、国は就労を続けやすい環境を整える一方で、給付そのものは見直しの対象になっていることが分かります。高年齢雇用継続給付の引き下げは、その象徴的な例といえます。

「定年になったら国から年金や給付金をもらって悠々自適に暮らす」という前提は、今後さらに成り立ちにくくなるでしょう。複雑な給付金を「つなぎの資金」として賢く利用しながら、ご自身の健康寿命を延ばし、NISAやiDeCoといった私的年金でカバーしていく。この組み合わせで老後を設計していく視点が重要になります。