2024年に抜本的拡充と恒久化がなされた「新NISA」。制度開始から時間が経過し、資産形成の手段としてすっかり定着した印象があります。10月から11月にかけては、年末に向けて来年の家計や積立額を見直す方が増える時期でもあります。
しかし、「投資はまとまった資金がある高年収の人向けではないか」「そもそもどんな種類の商品があるのか分からない」と二の足を踏んでいる方もいるかもしれません。
今回は、日本証券業協会公表の最新データ「2025年度 新NISA開始後の利用動向に関する調査報告書」をもとに、利用者の年収割合、新NISAで買える金融商品の種類、そして実際に選ばれている人気の銘柄タイプについて詳しく解説します。
なお、新NISA利用者の年収分布や購入銘柄のデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 新NISA利用者の最多層は「年収300万円未満」で39.3%。高年収層だけの制度ではない
- つみたて投資枠は「全世界株式」、成長投資枠は「日本国内株式」が最も選ばれている
- 初心者は低コストのインデックス投資信託から検討すると、商品選びで迷いにくい
1. 新NISA利用者、最も多いのは「年収300万円未満」の層
まずは、新NISAを利用している人のリアルな個人年収の分布を見ていきましょう。日本証券業協会の調査によると、年収別の割合は以下の通りです。
1.1 【新NISA利用者の年収分布】
- 300万円未満:39.3%
- 300万円~500万円未満:26.5%
- 500万円~700万円未満:17.4%
- 700万円~1,000万円未満:10.4%
- 1000万円~1200万円未満:2.9%
- 1200万円~1500万円未満:1.6%
- 1500万円~2000万円未満:0.6%
- 2000万円以上:1.2%
データを見ると、「300万円未満」が39.3%(新NISA利用者7926人のうち3118人)と最も高く、全体の約4割を占めています。次ぐ「300万円~500万円未満」(26.5%)と合わせると、この2つの層だけで全体の65.8%に達します。
利用者の平均年収は467万7000円(前回2025年1月の調査時:454万6000円)となっており、高年収帯に限らず、幅広い年収帯で新NISAが活用されていることが分かります。
1.2 年収300万円台の人が「月1万円」から始めたら、20年後はいくら?
最多層である年収300万円未満・300万円台の方にとって、無理のない積立額はいくらでしょうか。仮に手取りの数%にあたる月1万円を、年利3%で20年間積み立てた場合を試算してみます。
投資元本:1万円 × 12カ月 × 20年 = 240万円
資産合計(年利3%、20年):約328万円(運用収益 約88万円)
月1万円という金額でも、20年間続ければ元本240万円が約328万円まで育つ計算です。「まとまった資金がないと始められない」わけではないことが、数字からも確認できます。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の運用成果は市場環境によって変動します。
2. 先進国、新興国、バランス型…新NISAで買える商品の種類
「投資を始めてみたいけれど、具体的にどのような選択肢があるのか分からない」という方向けに、新NISAで対象となる主な金融商品の特徴をまとめました。
2.1 全世界株式(オール・カントリー 通称「オルカン」等)
日本を含む(または除く)世界中の先進国・新興国市場に1本で分散投資できる商品です。世界経済全体の成長を享受したい初心者に選ばれています。
2.2 先進国株式・米国株式(S&P500等)
米国をはじめとする経済基盤の固い先進国企業を中心に投資する商品です。高い成長性が期待できる一方、為替変動のリスクを受けます。
2.3 新興国株式
インドやブラジルなど、今後の人口増加や経済発展が見込まれる地域に投資する商品です。大きなリターンが見込める反面、価格変動(ボラティリティ)は比較的高めです。
2.4 日本国内株式(個別株・日本株投信)
身近な国内企業に直接投資できる商品です。値上がり益だけでなく、配当金(インカムゲイン)や株主優待を目的とした運用に適しています。
2.5 バランス型・債券・REIT(不動産投資信託)
株式だけでなく、債券や不動産などを組み合わせてリスクを抑えた商品です。値動きを緩やかに抑えたい場合に向いています。
3. 初心者はどう選ぶ?迷ったときの判断軸
資産運用初心者の方は、商品の仕組みが分かりやすいインデックス投資信託を選択肢として検討してもよいでしょう。
「インデックス投資信託」とは、日本の東証株価指数やアメリカのS&P500などの経済指標と同じような値動きをする商品です。手数料が低く、1つの商品でさまざまな会社に分散投資がされているので、個別株式などに比べると、比較的リスクが低いと言われています。
インデックス投資信託の中でも、信託報酬(手数料)が低い商品かつ、多くの投資家から注目を集めている人気ランキング上位の商品(オルカンやS&P500)であれば商品に関する情報も多く、より安心して投資を続けられるかもしれません。
さらに、インデックス投資信託の投資先として、アメリカや日本などの先進国の方が、ブラジルや中国などの新興国に比べて、ローリスクローリターンだと言われています。少しリスクをとりながら大きな利益を狙いたい方は、新興国のインデックス投資信託と先進国のインデックス投資信託に分散投資をしながら保有するという方法もあります。
インデックス投資についてより詳しく知りたい方は、関連記事「【2026年比較】オルカンとS&P500はどっちを選ぶべき?運用実績の違いとあなたに合う投資法」もあわせてご覧ください。
4. 実際に選ばれているのは?つみたて投資枠・成長投資枠の購入傾向
多様な金融商品がある中で、実際の利用者はどのタイプを購入しているのでしょうか。日本証券業協会の最新データをもとに、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」それぞれの購入傾向を見ていきます。
4.1 【つみたて投資枠】一番人気は「全世界株式」
長期・積立・分散投資に適した公募投資信託が対象となるつみたて投資枠では、広範囲に分散できるインデックスファンドが主流です。
- 投資信託(インデックス型)全世界株式(日本を含む):34.2%
- 投資信託(インデックス型)米国株式:24.0%
- その他の銘柄タイプ:17.0%
- 投資信託(インデックス型)全世界株式(日本を除く):15.6%
- 投資信託 日本国内株式・債券・REIT:5.5%
- 投資信託(アクティブ型)全世界株式(日本を含む):2.4%
- 投資信託(わからない)全世界株式(日本を含む):1.3%
つみたて投資枠では、「全世界株式(日本を含む)」が34.2%でトップ。次いで「米国株式」(24.0%)、「全世界株式(日本を除く)」(15.6%)と続いており、世界全体や主要国に広く分散投資するスタンスが定着していることがうかがえます。
4.2 【成長投資枠】約半数が「日本国内株式」を選択
上場株式や幅広い投資信託が買える成長投資枠では、つみたて投資枠とは異なる傾向が見られます。
- 日本国内株式:48.2%
- その他の銘柄タイプ:32.2%
- 投資信託(インデックス型)全世界株式(日本を含む):14.7%
- 投資信託 日本国内株式・債券・REIT:2.5%
- 投資信託(アクティブ型)全世界株式(日本を含む):2.0%
- 投資信託(わからない)全世界株式(日本を含む):0.5%
成長投資枠において購入された銘柄のうち、約半数にあたる48.2%が「日本国内株式」となっています。個別の国内企業を応援したい層や、配当金獲得を目指す層にとって、成長投資枠が効果的に活用されていると考えられます。
4.3 非課税保有限度額1800万円、積立額別に「使い切るまでの年数」を試算
新NISAの生涯非課税保有限度額は1800万円です。積立額別に、この枠を使い切るまでに何年かかるかを計算してみましょう。
月3万円:1800万円 ÷ 36万円 = 50年
月5万円:1800万円 ÷ 60万円 = 30年
月10万円:1800万円 ÷ 120万円 = 15年
つみたて投資枠の年間上限120万円(月10万円)をフルに使っても、枠を埋めるまでに15年かかる計算です。利用者の最多層である年収300万円未満の方にとって月10万円は現実的ではありませんが、そもそも枠は「急いで使い切るもの」ではないことが分かります。月3万円でも50年かけて到達できる設計になっているため、ご自身のペースで長く続けることが優先です。あくまで積立元本のみで計算した目安であり、運用益は含みません。
監修者コメント
新NISA利用者の平均年収467万7000円という数字は、国税庁が公表する日本全体の平均年収と大きく変わりません。このデータからも、新NISAが特定の高所得者層だけの制度ではないことが読み取れます。非課税期間の無期限化や投資枠の拡大によって使い勝手が向上したことが、幅広い層への普及を後押ししたと考えられます。
銀行の窓口で投資信託や保険をご案内していた経験からお伝えすると、商品選びで手が止まってしまう方にはある共通点があります。それは、最初から「一番いい商品」を選ぼうとしてしまうことです。実際には、つみたて投資枠で選ばれている上位が全世界株式と米国株式に集中しているように、多くの方は低コストで分散の効いたインデックス型から始めています。
なお、より高いリターンを目指すアクティブ型という選択肢もありますが、こちらは専門家が銘柄選定や売買を行う分、信託報酬(手数料)が高めに設定されているのが一般的です。どちらが優れているということではなく、コストと期待するリターンの関係を理解したうえで、ご自身の目的とリスク許容度に合うものを選んでいただくことが大切です。




