株価の上昇や円安を背景に、日本の「富裕層」と呼ばれる世帯は増加を続けています。年末に向けて資産の棚卸しをする方も多い時期ですが、そもそも富裕層とはどのくらいの資産を持つ世帯を指すのでしょうか。

この記事では、野村総合研究所の最新推計をもとに富裕層の定義と世帯数の推移を確認したうえで、世帯年収別の金融資産の内訳データもあわせて見ていきます。

徳田 椋
ご相談でも「富裕層と呼ばれる人はどれくらいいるのか」「自分の資産は平均と比べてどうなのか」というご質問をよくいただきます。この記事では、階層別のデータと年収別の資産の内訳を確認しながら、ご自身の位置づけを把握するヒントをお伝えします。

なお、富裕層の世帯数や年収別の金融資産データについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解
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資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動
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ココがポイント
  • 富裕層・超富裕層は合計165万3000世帯で全世帯の約3%。推計開始の2005年以降で最多となった
  • 株式投資などで資産を築いた「いつの間にか富裕層」など、新しいタイプの富裕層が出現している
  • 年収1200万円以上の世帯は、金融資産の50.0%を債券・株式・投資信託で保有している

1. そもそも「富裕層」とは?純金融資産で見る5つの階層

「富裕層」と呼ばれる資産家たちは、どのような世帯なのでしょうか。野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産保有額(※)に応じて世帯を以下の5つの層に分類しています。

※純金融資産保有額:預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いたもの

1.1 純資産保有額の階層別にみた「保有資産規模と世帯数」

  • マス層(3000万円未満)
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満)
  • 富裕層(1億円以上5億円未満)
  • 超富裕層(5億円以上)

ここでは純金融資産1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義し、世帯数や保有資産の規模についての推計データが公表されています。

このうち「富裕層」と「超富裕層」を合わせた世帯数は165万3000世帯に達し、全世帯の約3%を占めることが分かりました。この合計世帯数は、推計が開始された2005年以降で最多です。また、富裕層・超富裕層それぞれの世帯数も2013年以降、継続的に増加傾向となっています。

2. 富裕層+超富裕層、資産額と世帯数はどう推移してきたか

「超富裕層」と「富裕層」を合わせた、純金融資産1億円以上を持つ資産家たちについて、世帯数や資産総額の推移をみていきます。

  • 2005年:86万5000世帯・213兆円
  • 2007年:90万3000世帯・254兆円
  • 2009年:84万5000世帯・195兆円
  • 2011年:81万世帯・188兆円
  • 2013年:100万7000世帯・241兆円
  • 2015年:121万7000世帯・272兆円
  • 2017年:126万7000世帯・299兆円
  • 2019年:132万7000世帯・333兆円
  • 2021年:148万5000世帯・364兆円
  • 2023年:165万3000世帯・469兆円

富裕層と超富裕層の世帯数と資産総額は、世界金融危機や東日本大震災などの影響を受けて一時的に落ち込んだものの、長期的に見ると増加傾向にあります。とくに2021年から2023年にかけての伸びは顕著です。この背景には、株価上昇や円安による資産価値の増大などがあったことが、同調査レポートでは指摘されています。

2.1 【一覧表】富裕層の世帯数と純金融資産保有規模(2023年)

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯・135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯・334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯・333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯・282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯・711兆円

なお、富裕層と超富裕層が保有する資産の合計は、前回調査より約3割ほど増加し469兆円に。全世帯の保有資産額の26.1%が、この2つの層に集中していることが分かります。

2.2 年収1200万円以上世帯の平均資産5635万円は、富裕層まであと何年?

富裕層の入り口は純金融資産1億円です。後述するJ-FLECのデータでは、年収1200万円以上の世帯の平均金融資産保有額は5635万円となっています。この水準から1億円に到達するまでに、どれくらいの期間が必要なのかを試算してみましょう。追加の積立はせず、年利3%で運用を続けたと仮定します。

5635万円 ×(1.03)の n 乗 = 1億円
必要な年数:約19年

追加の入金をしなくても、年利3%で運用を続けられれば約19年で富裕層の水準に届く計算です。仮に40歳代後半でこの資産額に到達していれば、60歳代半ばで富裕層の仲間入りをする可能性があるということになります。「いつの間にか富裕層」という層が生まれる背景には、こうした複利の働きがあります。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の運用成果は市場環境によって変動します。

3. 「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」とは

今回の調査では「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」と呼ばれる、新しいタイプの富裕層たちの出現が指摘されています。

3.1 株式投資で資産を築いた「いつの間にか富裕層」

「いつの間にか富裕層」は、株式投資などを通じて富裕層の仲間入りをした、40歳代後半から50歳代の一般の会社員を中心とする層です。高い金融リテラシーを持つ一方で、富裕層向けの専門的な金融商品や高度な資産管理には不慣れな面もあるとされます。

3.2 都市部の共働き世帯「スーパーパワーファミリー」

「スーパーパワーファミリー」は、都市部に住む年収3000万円を超える共働き世帯に代表される層です。20歳〜30歳代の間は、教育費や住宅ローンなどの支払いに苦労するも、昇格・昇給により40歳前後から資産が急速に増加する傾向があり、高収入を背景に50歳前後で富裕層に到達する可能性が高いとされる層です。

この「新しい富裕層」に共通するのは、相続や親の資産に頼らずとも、自分自身のキャリア形成や金融知識によって資産を築いている点と言えるでしょう。

徳田 椋
「いつの間にか富裕層」という表現は、資産形成の実感を的確に言い表していると感じます。運用を続けているうちに、気づけば資産の管理方法そのものを見直す必要が出てくる。この段階で相談にいらっしゃる方は少なくありません。

4. 年収別に見る、金融商品の種類別保有額

2025年12月、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」の結果から、世帯年収ごとの金融資産内訳に関するデータを見ていきます。

4.1 我が家と比較!世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額3/3

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

全体の金融資産保有額はどうなっている?

全国:1940万円

  • 収入はない:634万円
  • 300万円未満:858万円
  • 300〜500万円未満:1431万円
  • 500〜750万円未満:1755万円
  • 750〜1000万円未満:2222万円
  • 1000〜1200万円未満:2725万円
  • 1200万円以上:5635万円

安心の土台となる「預貯金」の保有額

全国:745万円

  • 収入はない:385万円
  • 300万円未満:368万円
  • 300〜500万円未満:631万円
  • 500〜750万円未満:693万円
  • 750〜1000万円未満:908万円
  • 1000〜1200万円未満:1028万円
  • 1200万円以上:1649万円

安定性を重視する「債券」の保有額

全国:78万円

  • 収入はない:7万円
  • 300万円未満:36万円
  • 300〜500万円未満:54万円
  • 500〜750万円未満:58万円
  • 750〜1000万円未満:67万円
  • 1000〜1200万円未満:91万円
  • 1200万円以上:343万円

積極的な運用を目指す「株式」の保有額

全国:433万円

  • 収入はない:33万円
  • 300万円未満:191万円
  • 300〜500万円未満:235万円
  • 500〜750万円未満:365万円
  • 750〜1000万円未満:434万円
  • 1000〜1200万円未満:572万円
  • 1200万円以上:1792万円

分散投資の定番「投資信託」の保有額

全国:216万円

  • 収入はない:153万円
  • 300万円未満:79万円
  • 300〜500万円未満:167万円
  • 500〜750万円未満:189万円
  • 750〜1000万円未満:238万円
  • 1000〜1200万円未満:292万円
  • 1200万円以上:682万円

気になる「債券・株式・投資信託の合計額」と全体に占める割合

全国:37.5%

  • 収入はない:193万円(30.4%)
  • 300万円未満:306万円(35.7%)
  • 300〜500万円未満:456万円(31.9%)
  • 500〜750万円未満:612万円(34.9%)
  • 750〜1000万円未満:739万円(33.3%)
  • 1000〜1200万円未満:955万円(35.0%)
  • 1200万円以上:2817万円(50.0%)

データを見ると「債券・株式・投資信託」への投資額そのものは、年収とある程度相関しています。金融資産保有額全体に占める割合を見ると、年収が1200万円未満の層ではおおむね30%台となっています。それにより、資産運用が一部の富裕層だけのものではなく、標準的な年収の世帯にも普及している様子がうかがえます。

一方で、年収が1200万円以上の層は、金融資産保有額全体に占める「債券・株式・投資信託」の割合が50.0%となっており、資産運用を活用した資産形成に積極的に取り組んでいる様子が確認できました。

4.2 運用比率35%と50%、20年後にどれだけ差がつくか試算する

全国平均の運用比率は37.5%、年収1200万円以上の層は50.0%でした。この比率の違いが、長期ではどれだけの差になるのでしょうか。全国平均の金融資産1940万円を元手に、運用部分を年利3%、預貯金部分を年利0.3%として20年後を比較してみます。

【運用比率35%のケース】
運用679万円 → 約1226万円/預貯金1261万円 → 約1339万円
合計:約2565万円

【運用比率50%のケース】
運用970万円 → 約1752万円/預貯金970万円 → 約1030万円
合計:約2782万円

同じ元手でも、置き場所の配分が変わるだけで20年後には約217万円の差が生じる計算です。もっとも、運用比率を高めれば値下がりのリスクも大きくなります。数字の大小だけで判断せず、ご自身が受け入れられる値動きの幅を確かめたうえで配分を決めることが大切です。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の運用成果を保証するものではありません。

インフレが進む今、預貯金だけに頼らず、家計に合った無理のない投資で資産を育てることも選択肢の1つです。ライフスタイルや保有している資産全体のバランスも踏まえたうえで、ご自身のリスク許容度に合った資産形成の方法を選んでいくことが大切になります。

監修者コメント

中本 智恵

今回のデータで注目していただきたいのは、年収1200万円未満の層でも運用比率が30%台に達しているという点です。銀行の窓口で投資信託をご案内していた頃と比べても、資産運用は特別なものではなくなってきていると感じます。

一方で、富裕層・超富裕層が全世帯の約3%で保有資産額の26.1%を占めるという数字は、資産の集中を示しています。ただ、この数字を見て焦る必要はありません。「いつの間にか富裕層」という層が示すように、相続や特別な収入がなくても、長い時間をかけて資産を築いている方は着実に増えています。

大切なのは、平均や階層と比べることではなく、ご自身の家計に合った配分を見つけることです。運用比率を上げれば値動きも大きくなりますので、生活防衛資金や近い将来に使う予定のある資金は預貯金で確保したうえで、余裕資金の範囲で運用を組み立てていただきたいと思います。