「自分ももらえる制度があるのではないか」と調べるものの、毎月口座から引き落とされる固定費はそのままになっていませんか? 本記事では、年金生活者支援給付金の基準額と条件を整理し、「制度の受給を待つこと」と「今すぐ支出を減らすこと」のどちらを優先すべきかを具体的に試算・解説します。
なお、年金の受給額分布・年金生活者支援給付金の給付額・支給要件・手続きのデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 年金には個人差がある
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分も含む)で15万円台です。
ただしグラフのように、厚生年金を月額30万円以上受け取っている人もいれば、国民年金・厚生年金ともに月額3万円未満となる人まで、幅広い受給額ゾーンにちらばっています。
年金とその他の所得を含めても一定基準以下の所得となる場合、「年金生活者支援給付金」の支給対象となる可能性があります。
2. 年金生活者支援給付金|給付額はいくら?
年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得額が一定基準以下の年金生活者を支援するために、2019年にスタートした制度です。給付金は2カ月に一度、公的年金に上乗せして支給されます。
受給中の年金によって、以下3種類の年金生活者支援給付金があり、それぞれに、支給要件と支給額(基準額)が設定されています。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
2.1 【2025年→2026年】年金生活者支援給付金の支給金額
2026年度の年金生活者支援給付金の給付金額は、前年度から3.2%引き上げとなりました。
【2026年度】
- 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5620円
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
老齢年金生活者支援給付金については、この基準額に基づき保険料納付済期間等に応じて実際の給付額が計算されます。上記はいずれも「月額」の金額です。支給日には2カ月分まとめて、年金に上乗せされます。上記の金額通り受給できる場合、1回の支給で約1万1000円、年額にすると約6万7000円受け取れます。
なお、「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円です。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。
3. 年金生活者支援給付金の支給要件
年金生活者支援給付金の支給要件について見ていきましょう。
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれの年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中で、前年の所得が491万8000円以下の人です。給付金の判定に用いる所得は、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。また、扶養親族などの数に応じて、所得の基準額は上がります。
「老齢年金生活者支援給付金」については、本人の所得以外の要件がいくつか加わります。
3.1 老齢年金生活者支援給付金の支給対象
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす人です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は82万4100円以下
老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。また「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
補足的老齢年金生活者支援給付金
昭和31年4月2日以後に生まれた方で82万6500円を超え92万6500円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で82万4100円を超え92万4100円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。所得が増えるにつれて、補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は減ります。
4. 申請しないともらえない|9月に届く「緑の封筒」
年金生活者支援給付金を受け取るためには、請求手続きが必要となります。支給対象になったら自然に年金に上乗せされるわけではありません。すでに年金を受給中の人で、所得が下がり年金生活者支援給付金の対象となった場合は、毎年9月1日以降、順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が送付されます。
※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。
なお、これから65歳を迎える人には、誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書に同封されて給付金請求書が届きます。同封された給付金請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに提出しましょう。
4.1 手続きは毎年必要?
年金生活者支援給付金は、一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り2年目以降の手続き不要で継続受給が可能です。
継続支給の判定結果は前年の所得に基づき、毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。支給対象外となった場合は「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。
なお、毎年度(4月分から)の支給金額は、毎年6月上旬に送付される「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」および「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認できます。
4.2 「もらえるお金」を10年待つのと、「支出」を今日減らすのと、どちらが早い?
老齢年金生活者支援給付金の基準額どおりに受給できた場合、年額は約6万7000円でした。この金額を、保険の見直しで浮く金額と比べてみましょう。仮に月々の保険料を3000円見直せた場合を試算します。
【年金生活者支援給付金(基準額どおり)を10年間受給した場合】
6万7000円 × 10年 = 約67万円【保険料を月3000円見直し、10年間続けた場合】
3000円 × 12カ月 × 10年 = 36万円
単純な合計額だけを見ると、給付金のほうが金額は大きくなります。しかし、給付金は所得や世帯の状況などの要件をすべて満たし、かつ請求手続きをしなければ1円も受け取れません。要件を満たすかどうかは、ご自身の判断だけでは決められない部分です。
一方、保険料の見直しは要件審査を待つ必要がなく、今日決めればその月から効果が出ます。「もらえるかどうか分からない67万円」を待つより、先に「確実な36万円」に手をつけるほうが、結果的に早く家計が安定するケースは少なくありません。
4.3 見直しで浮いた月3000円、10年間そのまま貯めておくと?
では、保険料の見直しで浮いた月3000円を、使わずにそのまま10年間貯めておいた場合はどうなるでしょうか。運用はせず、預貯金として積み立てた場合を試算します。
【月3000円を10年間、そのまま貯めた場合】
3000円 × 12カ月 × 10年 = 36万円
運用をしなくても、「削った分を使わずに置いておく」だけで10年後には36万円になります。大切なのは、見直しで浮いたお金の行き先をあらかじめ決めておくことです。行き先を決めずにいると、浮いた分がいつの間にか生活費に溶けてしまい、家計の体質は変わりません。
なお、この試算は一定の前提を置いた目安であり、実際の保険料や見直し効果は加入している商品や年齢、健康状態によって異なります。
監修者コメント
年金生活者支援給付金は、老齢・障害・遺族の3種類があり、2026年度は前年度比+3.2%の増額となりました。ただし、この給付金はご自身で請求手続きをしなければ受け取れないお金です。特に老齢年金生活者支援給付金は、基準額を少し超えただけの方向けに「補足的」な給付金も用意されているため、対象になるかどうかをまず確認することをおすすめします。
記事中の試算にあるとおり、給付金の基準額どおりの年額約6万7000円と、保険料見直しによる年間3万6000円を比べると、金額としては給付金のほうが大きく見えます。しかし、要件を満たし手続きをして初めて受け取れる67万円と、今日から確実に効果が出る36万円とでは、性質がまったく異なります。
ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、両方を並行して進めることです。まず支出の見直しに着手しながら、同時にご自身が年金生活者支援給付金の対象になるかを年金事務所などで確認する。どちらか一方ではなく、確実な方から先に手をつけるという順序を意識していただければと思います。


