「国民年金だけで老後を暮らせるのだろうか」と気になる方も多いでしょう。

厚生労働省が2026年7月に公表した「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月分)」によると、国民年金の老齢年金の平均月額は6万770円でした。ただし厚生年金の受給権がなく、国民年金だけを受け取っている人に絞ると平均は5万8321円です。

単身世帯の生活費と比べると、大きなギャップが見えてきました。

この記事では、国民年金の平均額と家計のギャップを整理したうえで、使える制度(年金生活者支援給付金・任意加入・優遇措置)の3本柱を、元自治体職員として国保・後期高齢者医療の窓口を担当していた立場から見ていきましょう。

ココがポイント
  • 国民年金の老齢年金の平均月額は6万770円。厚生年金の受給権がない「基礎のみ」の人は5万8321円
  • 単身高齢者世帯の平均消費支出は月15万円前後。国民年金だけでは月9万円前後のギャップが生じる
  • 補完策の3本柱は、年金生活者支援給付金(月5620円)/60歳〜65歳の任意加入/住民税非課税世帯向けの優遇措置

1. 国民年金の平均月額はいくらか

まずは公表データから、国民年金の受給実態を確認していきましょう。

1.1 平均は6万770円、新規裁定は5万7916円

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月分)」によると、国民年金の老齢年金の平均月額は6万770円でした。新規裁定(新たに受給が始まった人)の平均は5万7916円で、受給者全体の平均より約2900円低い水準です。

国民年金は加入期間で受給額が決まるため、加入期間の抜けがあると満額より少なくなります。平均値が満額より低いのは、加入期間の抜けや免除期間のある人が一定数含まれるためです。

1.2 国民年金だけの人に絞ると5万8321円まで下がる

ここで気をつけたいのが、6万770円という数字の中身です。老齢基礎年金は厚生年金を受け取る人も併せて受け取りますので、この平均には会社員として働いた期間がある人の基礎年金も含まれています。

同じ月報には、厚生年金(第1号)の受給権がない人だけを集計した「基礎のみ」という区分があります。この区分の平均月額は5万8321円で、対象は519万7000人です。共済組合の加入期間もない人に絞ると、5万6395円まで下がります。

自営業やフリーランス、あるいは会社勤めの期間がないまま老後を迎える方は、6万770円ではなくこちらの水準を目安にするほうが実態に近くなります。

1.3 満額と平均の差はなぜ生まれるか

満額と平均を比べるときは、年度をそろえる必要があります。平均6万770円は令和8年3月時点の数値で、令和7年度の年金額にもとづいています。

同じ令和7年度の満額6万9308円と並べると、差は月8538円、年換算では約10万2000円です。国民年金だけの人の平均5万8321円と比べると、差は月1万987円、年換算では約13万2000円まで広がります。

この差の背景には、20歳〜60歳の40年間で保険料未納・免除・学生納付特例などの期間があった人が多い実情があります。

加入期間の抜けを気にされる方も多いです。ねんきん定期便やねんきんネットで加入履歴を確認しておくと、将来の受給額の見通しが立てやすくなります。

国民年金の平均月額・新規裁定の平均と、満額との差1/2

国民年金の平均月額・新規裁定の平均と、満額との差

出所:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月分)」よりLIMO編集部作成

2. 単身世帯の家計とのギャップ

平均月額6万770円で老後を暮らせるかを判断するには、単身高齢者世帯の消費支出と比べる必要があります。

2.1 単身高齢者の消費支出は月15万円前後

総務省「家計調査」によると、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月15万円前後です。食費・住居費・光熱水道費・保健医療費・交通通信費など、生活の基本的な支出だけでこの水準になります。

国民年金の平均月額6万770円で暮らそうとすると、月8万〜9万円のギャップが生じる計算です。国民年金だけの人の平均5万8321円なら、ギャップは月9万円を超えます。

年換算では約107万〜110万円の不足になり、このギャップを埋めるには、稼働所得・貯蓄取り崩し・補完制度の3方向からの検討が必要です。

2.2 ギャップを埋める考え方

ギャップを一気に埋めようとすると無理が生じます。まずは自分の受給見込額を把握したうえで、使える制度と貯蓄取り崩しペースを段階的に組み合わせるのが現実的です。次章では、補完制度の3本柱を確認していきます。

国民年金だけの場合に生じる、単身高齢者の消費支出との月額ギャップ2/2

国民年金だけの場合に生じる、単身高齢者の消費支出との月額ギャップ

出所:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月分)」および総務省「家計調査」をもとにLIMO編集部作成

3. 使える補完制度の3本柱

国民年金の平均額と単身家計のギャップを埋めるための、公的な補完制度を整理していきます。あわせて注意点も併記します。

3.1 年金生活者支援給付金(月5620円)

老齢年金生活者支援給付金は、65歳以上で老齢基礎年金を受給し、要件を満たす人に支給される給付金です。令和8年度の基準額は月5620円で、年間では約6万7000円の上乗せになります。

ただし、対象になるには「世帯全員が住民税非課税」かつ「本人の前年所得が80万9000円以下」の両方を満たす必要があります。同居家族に住民税課税の方がいる場合は対象外となるため、世帯全員の状況を確認しておくことをおすすめします。

3.2 60歳〜65歳の任意加入

60歳時点で国民年金の加入期間が40年に満たない場合、60歳〜65歳の間で任意加入することで受給額を増やせます。1年任意加入すると年金額が年約2万1000円増える計算です。

注意点として、任意加入期間中は保険料(令和8年度で月1万7920円)の納付が必要です。健康状態や家計の余力を考えたうえで、市区町村の国民年金窓口や年金事務所で相談することをおすすめします。

3.3 住民税非課税世帯向けの優遇措置

住民税非課税世帯に該当する場合、介護保険料の軽減・入院時の食事代の減額・高額療養費の自己負担限度額の引き下げなど、複数の優遇措置が受けられます。それぞれ市区町村や保険者に対する申請が必要です。

元自治体職員として担当していた頃、これらの制度を活用していない方も少なくないと感じていました。使える制度は市区町村の窓口で確認できますので、一度相談してみるのもよいでしょう。

太田 彩子

国民年金だけで暮らそうとするとギャップが大きく感じられますが、まずは自分の受給見込額を把握してから、使える制度や任意加入の検討に進むと落ち着いて考えられます。市区町村や年金事務所の窓口で一つずつ確認していきましょう。