8月から9月にかけては、上半期の家計や資産状況を見直す方が増える時期です。「自分はいったいどのくらいの資産を持っていれば『富裕層』と呼ばれるのか」「同じ年収の家庭は、どんな金融商品にどれくらい資産を振り分けているのか」――そんな疑問を持ったことがある方も多いのではないでしょうか。

野村総合研究所が公表した最新の推計によれば、日本の「富裕層」「超富裕層」は合わせて165万3000世帯に達し、これまでで最多となりました。さらに、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の最新の世論調査からは、年収別に見た金融商品の保有割合という、より身近な視点のデータも見えてきます。

鶴田 綾
「富裕層」と聞くと縁遠い世界のように感じるかもしれませんが、今回のデータからは、会社員として働きながらコツコツ資産形成を続けてきた方が結果的に富裕層の仲間入りをしているケースも見えてきます。世帯数や資産額の推移、そして年収別の金融商品保有割合まで、順を追って見ていきましょう。

なお、日本の富裕層・超富裕層の世帯数や資産規模に関する詳しいデータは、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解
【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解
ココがポイント
  • 日本の富裕層・超富裕層は合計165万3000世帯、純金融資産の総額は約469兆円で過去最多
  • 相続に頼らず自力で資産を築く「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」という新層が登場
  • 年収1200万円以上の世帯は資産の50.0%を株式・投信・債券に配分、年収帯によって運用比率に差

1. 富裕層の定義・割合

「富裕層」と呼ばれる資産家たちは、どのような世帯なのでしょうか。

野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産保有額(※)に応じて世帯を以下の5つの層に分類しています。

※純金融資産保有額:預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いたもの

1.1 純資産保有額の階層別にみた「保有資産規模と世帯数」

純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数

出所:株式会社野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」

  • マス層(3000万円未満)
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満)
  • 富裕層(1億円以上5億円未満)
  • 超富裕層(5億円以上)

純金融資産1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」と区分したうえで、世帯数や保有資産の規模についての推計データが公表されています。

このうち「富裕層」と「超富裕層」を合わせた世帯数は165万3000世帯に達し、全世帯の約3%を占めることが分かりました。

この合計世帯数は、推計が開始された2005年以降で最多です。また、富裕層・超富裕層それぞれの世帯数も2013年以降、継続的に増加傾向となっています。

なお、富裕層に共通する日々のお金との向き合い方や行動の特徴については、資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴をまとめた記事でも詳しく紹介されています。

鶴田 綾
「富裕層」「超富裕層」という言葉には特別なイメージがありますが、実際には1億円という基準は、コツコツと資産形成を続けてきた結果として届く方も少なくないラインです。まずは自分たちの世帯がどの層に近いのか、大まかな位置を把握しておくことが資産計画の第一歩になります。

2. 富裕層+超富裕層 資産額と世帯数の推移

「超富裕層」と「富裕層」を合わせた、純金融資産1億円以上を持つ資産家たちについて、世帯数や資産総額の推移をみていきます。

  • 2005年:86万5000世帯・213兆円
  • 2007年:90万3000世帯・254兆円
  • 2009年:84万5000世帯・195兆円
  • 2011年:81万世帯・188兆円
  • 2013年:100万7000世帯・241兆円
  • 2015年:121万7000世帯・272兆円
  • 2017年:126万7000世帯・299兆円
  • 2019年:132万7000世帯・333兆円
  • 2021年:148万5000世帯・364兆円
  • 2023年:165万3000世帯・469兆円

富裕層と超富裕層の世帯数と資産総額は、世界金融危機や東日本大震災などの影響を受けて一時的に落ち込んだものの、長期的に見ると増加傾向にあります。

とくに2021年から2023年にかけての伸びは顕著です。この背景には、株価上昇や円安による資産価値の増大などがあったことが、同調査レポートでは指摘されています。

2.1 【一覧表】富裕層の世帯数と純金融資産保有規模(2023年)

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯・135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯・334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯・333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯・282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯・711兆円

なお、富裕層と超富裕層が保有する資産の合計は、前回調査より約3割ほど増加し469兆円に。全世帯の保有資産額の26.1%が、この2つの層に集中していることが分かります。

鶴田 綾
世帯数・資産総額とも、リーマンショックや震災の影響で一時的に落ち込む場面がありながらも、長期で見ると右肩上がりに増えているのが印象的です。短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長い時間軸で資産形成を続けることの重要性がうかがえるデータだと感じます。

3. いつの間にか富裕層・スーパーパワーファミリー

今回の調査では「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」と呼ばれる、新しいタイプの富裕層たちの出現が指摘されています。

3.1 「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」

まず、「いつの間にか富裕層」は、株式投資などを通じて富裕層の仲間入りをした、40歳代後半から50歳代の一般の会社員を中心とする層です。

高い金融リテラシーを持つ一方で、富裕層向けの専門的な金融商品や高度な資産管理には不慣れな面もあるとされます。

そして「スーパーパワーファミリー」は、都市部に住む年収3000万円を超える共働き世帯に代表される層です。

20歳~30歳代の間は、教育費や住宅ローンなどの支払いに苦労するも、昇格・昇給により40歳前後から資産が急速に増加する傾向があり、高収入を背景に50歳前後で富裕層に到達する可能性が高いとされる層です。

この「新しい富裕層」に共通するのは、相続や親の資産に頼らずとも、自分自身のキャリア形成や金融知識によって資産を築いている点と言えるでしょう。

3.2 【独自試算】共働き世帯が20年でどこまで資産を伸ばせるか

「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」がどのように1億円という富裕層ラインに近づいていくのか、一定の前提を置いた簡易試算で確認してみましょう。

  • 40歳時点の純金融資産:3000万円(アッパーマス層相当)
  • 毎月の積立投資額:10万円
  • 想定利回り:年5%(複利、税・手数料等は考慮しない)
  • 運用期間:20年間(40歳~60歳)

上記の前提で試算すると、当初の3000万円は20年後に約7960万円に増え、これに毎月10万円の積立投資分(20年間で元本2400万円)が運用収益とあわせて約4070万円に育つ計算になります。合計するとおよそ1億2000万円ほどとなり、40歳の時点ではアッパーマス層だった世帯が、60歳を迎えるころには富裕層のラインに達している可能性が見えてきます。

あくまで一定の利回りが続いた場合の目安であり、実際の運用成績は市場環境によって変動します。元本割れのリスクがある点にも留意しながら、長期・積立・分散を基本とした無理のない資産形成を心がけることが大切です。

鶴田 綾
「いつの間にか富裕層」という言葉が示すとおり、特別な相続や一発逆転がなくても、時間を味方につけた積立投資の継続が、結果的に大きな資産形成につながることがあります。大切なのは、無理のない金額でコツコツ続けられる仕組みを早いうちに作っておくことです。

4. 年収×金融商品の種類別内訳

2025年12月、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」の結果から、世帯年収ごとの金融資産内訳に関するデータを見ていきます。

4.1 我が家と比較!世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額2/2

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

全体の金融資産保有額はどうなっている?

全国: 1940万円

  • 収入はない: 634万円
  • 300万円未満: 858万円
  • 300~500万円未満: 1431万円
  • 500~750万円未満: 1755万円
  • 750~1000万円未満: 2222万円
  • 1000~1200万円未満: 2725万円
  • 1200万円以上: 5635万円
  • 無回答: -

安心の土台となる「預貯金」の保有額

全国: 745万円

  • 収入はない: 385万円
  • 300万円未満: 368万円
  • 300~500万円未満: 631万円
  • 500~750万円未満: 693万円
  • 750~1000万円未満: 908万円
  • 1000~1200万円未満: 1028万円
  • 1200万円以上: 1649万円
  • 無回答: -

安定性を重視する「債券」の保有額

全国: 78万円

  • 収入はない: 7万円
  • 300万円未満: 36万円
  • 300~500万円未満: 54万円
  • 500~750万円未満: 58万円
  • 750~1000万円未満: 67万円
  • 1000~1200万円未満: 91万円
  • 1200万円以上: 343万円
  • 無回答: -

積極的な運用を目指す「株式」の保有額

全国: 433万円

  • 収入はない: 33万円
  • 300万円未満: 191万円
  • 300~500万円未満: 235万円
  • 500~750万円未満: 365万円
  • 750~1000万円未満: 434万円
  • 1000~1200万円未満: 572万円
  • 1200万円以上: 1792万円
  • 無回答: -

分散投資の定番「投資信託」の保有額

全国: 216万円

  • 収入はない: 153万円
  • 300万円未満: 79万円
  • 300~500万円未満: 167万円
  • 500~750万円未満: 189万円
  • 750~1000万円未満: 238万円
  • 1000~1200万円未満: 292万円
  • 1200万円以上: 682万円
  • 無回答: -

気になる「債券・株式・投資信託の合計額」と全体に占める割合

全国: 37.5%

  • 収入はない: 193万円(30.4%)
  • 300万円未満:306万円(35.7%)
  • 300~500万円未満:456万円(31.9%)
  • 500~750万円未満: 612万円(34.9%)
  • 750~1000万円未満:739万円(33.3%)
  • 1000~1200万円未満: 955万円(35.0%)
  • 1200万円以上: 2,817万円(50.0%)
  • 無回答: -

データを見ると「債券・株式・投資信託」への投資額そのものは、年収とある程度相関しています。

金融資産保有額全体に占める割合を見ると、年収が1200万円未満の層ではおおむね30%台となっています。

それにより、資産運用が一部の富裕層だけのものではなく、標準的な年収の世帯にも普及している様子がうかがえます。

一方で、年収が1200万円以上の層は、金融資産保有額全体に占める「債券・株式・投資信託」の割合が50.0%となっており、資産運用を活用した資産形成に積極的に取り組んでいる様子が確認できました。

インフレが進む今、預貯金だけに頼らず、家計に合った無理のない投資で資産を育てることも選択肢の1つです。

ライフスタイルや保有している資産全体のバランスも踏まえたうえで、ご自身のリスク許容度に合った資産形成の方法を選んでいくことが大切になります。

鶴田 綾
年収が上がるほど「債券・株式・投資信託」の比率が高まっているのは、単に投資に回せる余裕資金が増えるからだけでなく、資産運用への意識の高さも影響していると感じます。年収の多寡にかかわらず、まずは無理のない金額から運用を始めてみることが、将来の選択肢を広げる一歩になります。

5. 監修者コメント:資産の中身の違いが「富裕層」を分ける

中本 智恵

銀行の窓口で長年家計相談を受けてきた経験から、この「富裕層」データを読んで感じるのは、資産額そのものより「資産の中身」の違いだということです。今回のデータでも、金融資産保有額全体に占める株式・投資信託・債券の比率は、年収1200万円以上の世帯で50.0%に達する一方、それ未満の層ではおおむね30%台にとどまっています。

銀行の窓口では、「貯金はあるが増えている実感がない」というご相談を数多くお受けしてきました。預貯金だけで資産を保有していると、金利がほとんどつかない環境では資産の伸びを実感しにくいのは当然のことです。今回のデータが示すとおり、株式や投資信託を組み合わせている世帯ほど、資産全体の伸びに厚みが出やすい傾向があります。

「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」という新しい富裕層像も、特別な相続や資産家の家系である必要はなく、NISAやiDeCoといった制度を早い時期からコツコツ活用してきた結果であることが多いという印象です。会社員として働きながら資産形成を続けている方にとって、決して縁遠い話ではありません。

大切なのは、いきなり資産配分を大きく変えることではなく、無理のない範囲で「貯める」から「育てる」への一歩を踏み出すことです。NISAやiDeCoの非課税枠を生活に合った金額で活用しながら、預貯金とのバランスを取っていくことが、着実な資産形成の土台になります。

5.1 【独自試算】運用比率を引き上げた場合の資産の伸び方

先ほどのJ-FLECのデータをもとに、運用比率の違いが将来の資産にどう影響しうるか、一定の前提を置いて試算してみます。

  • 対象:年収750~1000万円未満の世帯(全国データ、金融資産保有額2222万円、うち債券・株式・投資信託は739万円=33.3%)
  • 仮定:運用比率を年収1200万円以上の世帯と同水準(50.0%)まで引き上げる
  • その場合の運用額:2222万円×50.0%=1111万円(現状より372万円多く運用に回す計算)
  • 追加分372万円を年率4%(複利)で10年間運用したと仮定

試算すると、372万円は10年後に約551万円に増える計算になり、預貯金に置いたままの場合と比べておよそ179万円の差が生まれることになります(税・手数料等は考慮しない簡易試算)。運用比率のわずかな差が、時間の経過とともに資産額の差として積み重なっていくことがうかがえます。

もちろん、NISAやiDeCoを含む投資には元本割れの可能性があり、想定どおりの利回りが続くとは限りません。生活費や近い将来に使う予定の資金は預貯金で確保したうえで、余裕資金の範囲で運用比率を検討することが前提になります。