9月に入り、朝晩には幾分か涼しさを感じるようになってきました。

今月21日は「敬老の日」。ご自身の親御さんや、身近な高齢のご家族の暮らしぶりを、あらためて気にかける方も多い時期ではないでしょうか。

「老後に受け取る年金は、実際どれくらいなのか」「その金額で本当に生活できるのか」。

漠然とした不安を抱えながらも、自分の見込額を具体的な数字で把握できている人は、意外と少ないかもしれません。

年金額は単純に年収だけで決まるものではなく、加入している制度や働き方によって大きく変わります。

とくに、国民年金のみか、厚生年金にも加入しているかによって、受給額には大きな差が生じます。

本記事では、日本の公的年金制度の基本を整理したうえで、「平均年収400万円・38年間勤務」という条件をもとに、将来の年金額目安を試算していきます。

1. 「平均年収400万円・38年勤務」なら年金は月いくら?国民年金・厚生年金の試算

生涯の平均年収が400万円であっても、38年間の就業中に厚生年金へ加入していたかどうかで、将来受け取る年金額には違いが生じます。

そこで、まずは公的年金制度の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

日本の公的年金制度は、「国民年金(基礎年金)」を土台とし、その上に「厚生年金」が上乗せされる2階建ての構造となっています。

  • 第1号被保険者:自営業、学生、無職など
  • 第2号被保険者:会社員、公務員
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度で、保険料は一律のため、受給額には大きな差が生じにくい仕組みとなっています。

一方、厚生年金は会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する制度です。保険料は給与や賞与に応じて決まるため、受給額も現役時代の収入や加入期間によって異なります。

1.1 受給額の試算条件と計算結果

ここでは、生涯平均年収400万円で民間企業に38年間勤務したケースを想定し、老後に受け取れる年金額の目安を計算します。試算条件は次のとおりです。

  • 2003年4月以降、厚生年金に38年間加入している
  • 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生期間の2年間は学生納付特例(追納なし)とし、実質納付期間は38年とする
  • 配偶者および扶養家族はいない

厚生年金は報酬比例部分を中心に計算され、生涯平均年収400万円・2003年4月以降38年加入という条件では、受給額は年額約83万円となります。

(経過的加算・加給年金額は含まない試算です)

報酬比例部分の計算式2/8

「厚生年金の受給額」を試算

出所:日本年金機構「は行 報酬比例部分」

報酬比例部分は「A(2003年3月までの加入期間分)+B(2003年4月以降の加入期間分)」の合計で決まりますが、今回は2003年4月以降に38年間加入したケースを想定するため、Bのみで試算します。

生涯平均年収400万円の場合、平均標準報酬額は年間400万円を12で割った約33万3000円と仮定できます。この条件で計算すると、厚生年金の受給額は年額約83万円となりました。

厚生年金加入者は第2号被保険者に該当するため、老後には厚生年金に加えて国民年金も受給します。

22歳から60歳までの38年間(456カ月)保険料を納付した場合、国民年金の受給額は年額約80万円です。

厚生年金の約83万円と国民年金の約80万円を合計すると、年間の受給額は約163万円。月額に換算すると、およそ13万6000円です。

2. 実際のシニアは月いくら受け取っている?受給分布と手取りの注意点

ここまで、「平均年収400万円・38年間勤務」という条件で受給額を試算しました。では、実際に年金を受給しているシニア世代は、どの程度の金額を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金を含む厚生年金受給者の分布は次のようになっています。

国民年金を含む厚生年金の受給者数4/8

国民年金を含む厚生年金の受給者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 月10万円未満の受給者の割合:19.0%
  • 月10万円以上の受給者の割合:81.0%(うち15万円以上は49.8%、20万円以上は18.8%)
  • 月30万円以上の受給者の割合:0.12%

国民年金と厚生年金を合わせた受給額が月15万円以上となっている人は49.8%で、全体の約半数です。

一方、今回試算した「月額約13万6000円」を下回る受給者も、分布からみると全体の約38.7%を占めています。

なお、これらはいずれも支給額ベースの金額であり、実際に受け取る手取り額は、税金や社会保険料などが差し引かれる点に留意しておく必要があります。

2.1 年金からいくら天引きされる?額面と手取りの差

試算した受給額はあくまで「額面」です。年金も現役時代の給与と同様に、所得税や住民税、健康保険料、介護保険料などが天引きされます。

総務省の家計調査(2025年)によると、65歳以上の単身無職世帯では、年金などの実収入に対しておよそ10%の非消費支出(税金・社会保険料)が差し引かれています。

居住地や収入水準によって異なりますが、目安として額面から10%~15%程度が引かれた金額が実際の手取りになると考えておきましょう。

3. 筆者からのコメント

熊谷 良子

会社員だった時期、給与明細の中の年金保険料は、正直「天引きされるもの」としか意識していませんでした。

その金額が将来の年金額にどうつながっているのか、実感を持てたのは50歳を過ぎてからです。

「ねんきん定期便」に、それまでの概算ではなく、より現実的な見込額が記載されるようになったタイミングでした。

今回の試算のとおり、厚生年金の受給額は現役時代の収入に比例して決まります。

つまり、20代・30代の頃の働き方や収入が、40年近く先の年金額に直結しているということです。

「まだ先の話」と感じるうちは実感しづらいものですが、早いうちから自分の加入記録に目を通しておくことで、将来の見通しは立てやすくなります。

年に一度届く「ねんきん定期便」は、見込額の数字だけでなく、これまでの加入期間や記録に「もれ」がないかも合わせて確認してみてください。

給与明細を見返す機会があれば、天引きされている保険料の意味も、少しだけ意識してみるとよいかもしれません。