AI向けの半導体需要が強い。ならばその土台であるシリコンウェーハも当然潤っているはずだ。多くの人がそう考えるだろう。ところがSUMCO(3436)の2026年12月期上期は営業損失である。しかも会社自身が、AI・データセンター向けの出荷は大きく増えたと説明している。需要は来ているのに利益が出ない。この落差はどこから来るのか。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

この記事の3つのポイント
  • ①2026年12月期上期は売上高2,150億円で+4.7%ながら、営業損失▲63億円と前年同期の営業利益74億円から赤字に転じた
  • ②会社は300mmシリコンウェーハの出荷が大きく増加したとしている。8月18日の終値は前日比▲6.7%の3,788円
  • ③減価償却費は2025年12月期に1,156億円まで膨らみ、営業利益13億円を大きく上回る規模になった

1カ月で27%下げ、42%戻し、そして8月18日に▲6.7%

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

SUMCO(3436)の8月18日の終値は3,788円だった。前日の4,061円から273円、率にして6.7%の下落である。

その前日4,061円は、直近1カ月で最も高い水準だった。1カ月の最高値をつけた翌日に1割近く売られた形になる。

この1カ月の振れ幅は相当なものだ。7月17日は3,914円、そこから7月27日の3,762円を経て、7月28日3,140円、7月29日2,949円、7月30日2,857円と3営業日で急落した。7月27日からの下げ幅は24%を超える。

7月30日の2,857円が直近1カ月の最安水準で、そこから8月17日の4,061円まで4割を超えて戻した。上げも下げも激しい。半導体材料株らしいボラティリティの高さである。

直近時点のPBRは2.33倍。1株当たり純資産に対して2倍以上の値付けが付いている。一方、中間期が最終赤字のため、PERは物差しとして機能していない。利益で測れない局面では、市場は将来の回復幅を見て値段を付けているとみるほかない。

出荷は大きく増えたのに、営業損失▲63億円になった上期

2026年12月期上期の売上高は2,150億円で、前年同期比+4.7%だった。ここまでは増収である。

ところが営業損失は▲63億円。前年同期は営業利益74億円だったから、増収のまま赤字に転じたことになる。経常損失は▲121億円、親会社株主に帰属する中間純損失は▲128億円、EPSは▲36.87円だった。

需要が弱かったわけではない。会社の説明によると、300mmシリコンウェーハはAI・データセンター用の先端ロジックとメモリー向けの強い需要が継続し、出荷は大きく増加した。200mm以下も顧客や製品で強弱はあるものの出荷は増えている。

では利益はどこで消えたのか。売上総利益は219億円で、前年同期の373億円から154億円減っている。売上高が96億円増えた一方、売上原価は1,680億円から1,930億円へ250億円増えた。増収幅の2倍以上の勢いで原価が膨らんだ計算になる。

販売費及び一般管理費は282億円で、前年同期の298億円より抑えられている。費用の増加は販管費ではなく、明確に原価の側にある。

営業外にも重しがある。営業外費用の減価償却費は41億円で、前年同期の6億円から大きく増えた。支払利息も18億円だ。営業段階で▲63億円だった損失が、経常段階で▲121億円まで広がったのはこのためである。

出荷が増え、売上も増えた。それでも利益が出ない。原価と償却の構造が、需要の追い風を打ち消している姿がここにある。

3Q累計予想が示す、損益分岐点の位置

SUMCOは半導体業界の事業環境が短期間に大きく変化するという特徴を踏まえ、翌四半期累計期間の業績予想のみを開示する方針を採っている。今回示されたのは2026年12月期3Q累計の予想だ。

その内容は売上高3,330億円、営業損失▲63億円、経常損失▲111億円、親会社株主に帰属する四半期純損失▲128億円、EPS▲36.60円である。前年同期は売上高3,044億円、営業利益58億円、経常利益21億円だった。

ここで注目したいのは、上期の実績と3Q累計予想がほぼ同じ数字になっている点だ。営業損失は上期▲63億円に対し3Q累計も▲63億円、中間純損失は▲128億円に対し四半期純損失も▲128億円である。

つまり会社は、7月から9月の3か月について、損益がほぼ均衡する水準まで戻ると見込んでいる。赤字が止まる、というより赤字が増えなくなるところまで来た、という予想だ。

会社は3Qのシリコンウェーハ市場について、300mmは顧客のウェーハ在庫適正化も進み、全体で需給の改善が進む見通しとしている。200mm以下は緩やかな回復を想定している。為替の前提は1米ドル160円だ。

損益分岐点にようやく戻る、というのが会社の描く3Qの姿である。裏を返せば、上期の赤字は市況の底というより、固定費が重い期の通過点として理解したほうが実態に近い。

筆者コメント

上期の数字を並べ直すと、この会社の赤字が需要不足によるものではないことがはっきりする。

出荷は増え、売上高も増えた。それでも売上総利益は前年同期から4割以上細っている。動いたのは売る量ではなく、1枚を作るのにかかる費用のほうだ。

ここを需要の話と取り違えると、半導体市況が良くなればすぐ利益が戻る、という読みになる。だが原価の重さが設備の償却から来ているなら、市況が改善しても数量と価格が一定の水準を超えるまで利益は出ない。

3Q累計の予想が上期とほぼ同じ数字だったことは、その意味で示唆的だ。会社は3か月かけて損益をようやく均衡まで戻す絵を描いている。

市況の話と費用構造の話を混同しないように気をつけたい。この銘柄については、需要のヘッドラインより原価率の推移を追うほうが、はるかに多くのことを教えてくれる。