厚生労働省は2026年9月3日、令和8年度の地域別最低賃金の改定額が全ての都道府県で答申されたと公表しました。全国加重平均は1177円で、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効する予定です。

75歳を過ぎても、パートや再雇用で働き続けている方は少なくありません。時給が上がって給与が増えると、後期高齢者医療の窓口負担や保険料がどう変わるのかは気になるところです。

この記事では、働く75歳以上の方を例に、給与が後期高齢者医療の窓口負担割合の判定にどう入るのかを、時給1177円で試算しながら確認します。

なお、後期高齢者医療制度の窓口負担割合に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説
【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説

1. 75歳以上は会社で働いていても後期高齢者医療制度に加入する

働く75歳以上の方の医療保険は、勤め先の健康保険ではなく後期高齢者医療制度です。まずこの点から確認します。

1.1 健康保険に入れるのは75歳まで

日本年金機構は、厚生年金保険は70歳まで、健康保険は75歳までと案内しています。75歳以上の方は、会社に勤めて給与を受け取っていても、勤め先の健康保険料を納める必要はありません。

原則として75歳の誕生日を迎えると、それまで加入していた健康保険の種類や就労状況にかかわらず、自動的に後期高齢者医療制度へ切り替わります。

出所:【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説

1.2 給与は窓口負担割合の判定と保険料の両方に反映される

勤め先の健康保険料が給与から引かれない代わりに、給与の所得は後期高齢者医療の窓口負担割合の判定と、保険料の所得割の計算に入ります。働いて得た給与が、年金とあわせて見られることになります。

2. 後期高齢者医療の窓口負担割合は1割・2割・3割。給与所得も判定に入る

後期高齢者医療の窓口負担割合は、住民税の課税所得と収入をもとに1割・2割・3割のいずれかに決まります。単身の場合の基準を見ていきます。

2.1 3割は住民税の課税所得が145万円以上

東京都後期高齢者医療広域連合の案内では、同じ世帯の被保険者に住民税の課税所得が145万円以上の方がいると3割です。ただし、収入の合計が単身で383万円未満なら、基準収入額適用申請で1割または2割になります。

2.2 2割は課税所得28万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額が200万円以上

2割になるのは、課税所得が28万円以上の方がいて、かつ年金収入とその他の合計所得金額の合計が、単身で200万円以上の場合です。世帯に被保険者が2人以上いると、合計320万円以上が基準になります。

厚生労働省は、その他の合計所得金額を、事業収入や給与収入などから必要経費や給与所得控除などを差し引いた後の金額と説明しています。働いて得た給与は、給与所得としてここに入ります。

課税所得は住民税の納税通知書の「課税標準」の額で、給与所得控除や公的年金等控除、基礎控除や社会保険料控除などを差し引いた後の金額です。

後期高齢者医療の窓口負担割合は、課税所得と「年金収入+その他の合計所得金額」で決まる1/2

後期高齢者医療の窓口負担割合について、単身の場合に3割(課税所得145万円以上)、2割(課税所得28万円以上かつ年金収入+その他の合計所得金額200万円以上)、1割(それ以外)となる判定基準を並べた図

出所:厚生労働省「窓口負担2割の対象となるかどうかの主な判定の流れ」、東京都後期高齢者医療広域連合「自己負担割合」をもとにLIMO編集部作成

3. 時給1177円で働く75歳以上、年金収入180万円なら週20時間で2割の基準に届く

最低賃金の答申の中身と、年金を受け取りながら働く75歳以上の方の試算を見ていきます。

3.1 最低賃金は47都道府県で54円から65円の引上げ

厚生労働省によると、令和8年度の最低賃金は47都道府県で54円から65円引き上げられ、全国加重平均は前年度の1121円から1177円になります。最高額は1280円、最低額は1085円です。

3.2 週10時間なら給与所得は0円

大阪市は、令和9年度と令和10年度の市民税・府民税では、給与所得控除の最低保証額が74万円になると案内しています。仮に時給1177円だとすると、週10時間、年52週働くと給与収入は61万2040円で、74万円を下回るため給与所得は0円です。

年金収入が180万円の単身の方なら、年金収入とその他の合計所得金額の合計は180万円のままで、200万円に届かないため1割です。

3.3 週20時間なら合計はおよそ228万円

週20時間なら給与収入は122万4080円、給与所得は74万円を引いて48万4080円です。年金収入180万円と合わせると、およそ228万円になります。

給与と年金の両方がある方は、所得金額調整控除で給与所得が最大10万円少なくなることがあります。その場合でも合計は200万円を上回るため、課税所得が28万円以上なら2割の判定になります。

太田 彩子

後期高齢者医療の保険料の計算を担当していた頃、働いて給与を受け取っている方から、年金の額は変わらないのに保険料が上がった理由を聞かれることがありました。給与の所得も年金と合わせて見られるので、働き方を変えた翌年の通知は内訳まで確かめておくと安心です。