6. 「何にいくら払っているか分からない」と感じていませんか?公的制度から始める保障の棚卸しをファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が解説
日頃のご相談では、民間の保険を見直すつもりが、実は公的な制度で足りていた部分が見つかる、ということがしばしば起こります。制度を知らないまま数年、あるいは十数年が過ぎているご家庭は少なくありません。ここでは、加入している保障が重なっているのかどうか判断できずにいた方の一事例をもとに、ファイナンシャルアドバイザーの横野会由子さんに伺った考え方を紹介します。
6.1 加入している保障が重なっているか、判断できていますか?
医療や介護の備えは、必要を感じたときに一つずつ足していくことが多く、全体を見返す機会がないまま積み上がっていきます。公的制度でどこまでまかなえるのかを知らないと、判断の基準そのものが持てません。相談の場では、次のような声を耳にします。

保険を減らすかどうかを考える前に、公的制度がどこまで担ってくれるのかを確認する。この順番にすると、判断の基準がはっきりします。相談の場でも、ここから整理が進むことが少なくありません。
6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が回答】減らすより先に、確認する順番を変えてみませんか?
6.3 ポイント1:公的制度でまかなえる範囲はどこまでか?
まず確認したいのは、公的制度がどこまでを担っているかです。医療費については、自己負担が一定額を超えた場合に払い戻しを受けられる高額療養費制度があり、介護については公的介護保険があります。ただし、対象となる費用の範囲や自己負担の上限、利用できる条件は、年齢や所得、要介護度などご家庭の状況によって異なり、制度の内容そのものが見直されることもあります。公的な部分がどこまでかを把握することで、民間保険で埋めるべき範囲が見えてきます。ご自身が対象になるかどうかや実際の負担額、手続きの期限については、加入している健康保険組合やお住まいの自治体など、公的な窓口で必ずご確認ください。
6.4 ポイント2:同じ目的の保障が重なっていませんか?
次に、加入中の保障を目的ごとに並べ直します。入院、がん、介護、認知症、死亡と、目的別に分類していくと、同じ目的の保障を複数持っている箇所が浮かび上がります。保険会社ごとに証券を管理していると気づきにくい重複が、ここで見つかることがあります。棚卸しは、契約を一覧にするところから始めると進めやすくなります。
6.5 ポイント3:残すものと整理するものをどう決めますか?
そのうえで、残すものと整理するものを決めていきます。重なっている部分をそのまま削るのではなく、保障の内容や条件を比べて、どちらを残すかを選ぶ。保険料の負担を抑えながら、必要な保障は手元に残すという形に落ち着けていきます。なお、保険の解約や減額は、その後の健康状態によっては元に戻せない場合があります。判断の前に、契約内容と解約時の条件を確認しておきたいところです。
公的制度には所得や要介護度などの要件があり、金額や取り扱いが改正されることもあります。この記事の内容は一般的な考え方の紹介にとどまりますので、ご自身が対象になるかどうか、いくら戻るのか、いつまでに申請が必要かといった具体的な点は、加入している健康保険組合やお住まいの自治体など公的な窓口で、最新の内容をご確認ください。また、必要な保障や家計の前提は一人ひとり異なります。ご自身の状況に当てはめて考える際は、契約内容と解約条件もあわせて確認したうえで、個別に専門家へご相談ください。
7. 著者からひとこと:上手く制度を活用して物価高を乗り切ろう
本記事ではシニア世代の公的なお金について紹介してきました。現在ある制度や新たな制度についても確認しておく必要がありますので、普段から少しずつでも情報収集をしておくようにしましょう。
特に今回紹介したものについては、申請が必要なものですので申請漏れのないように気を付けましょう。試算のとおり、加給年金と高年齢雇用継続給付の2つだけでも、申請の有無で5年間に約320万円の差が生まれます。
その上で老後生活の基盤となる年金、今回紹介していない地方自治体独自の制度なども活用することで、物価上昇が続いていく今、少しでもゆとりある暮らしができるように上手く制度を活用していきましょう。
8. よくある質問(FAQ)
8.1 Q. 退職後、失業手当をもらっている間は、配偶者の社会保険の扶養に入れますか?
A. 失業手当(基本手当)の「日額」によります。失業手当は非課税のため所得税の計算には入りませんが、健康保険の扶養審査では「収入」として厳格にカウントされます。60歳未満なら日額3612円(年収換算130万円未満)、60歳以上なら日額5000円(年収換算180万円未満)を超えている場合、手当を受給している期間中は配偶者の扶養に入れず、自分で国民健康保険に加入して保険料を支払う必要があります。
8.2 Q. 役所から給付金の案内が何も来ないのですが、対象外ということですか?
A. そうとは限りません。年金生活者支援給付金のようにハガキが届くものもありますが、加給年金、高年齢雇用継続給付、失業手当などは、すべて「自己申告(申請主義)」です。条件を満たしていても役所から案内は来ません。自分で年金事務所やハローワークに出向き、「自分は対象になりますか?」と手続きのアクションを起こす必要があります。
8.3 Q. 特別支給の老齢厚生年金と失業手当、どちらをもらった方が得ですか?
A. 個別の「年金額」と「失業手当の日額・給付日数」を比較計算しないと正解は出ません。現役時代の給与が高く失業手当の日額が高い人はハローワークで手続きをした方が得になり、逆に給与が低めで年金加入歴が長い人は、失業手当を受けずに年金をもらい続けた方がトータルの受取額が多くなる場合があります。退職前に最寄りの年金事務所で年金見込額を出し、ハローワークの失業手当計算ツール等でシミュレーションするとよいでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 日本年金機構「か行 加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額をお知らせする『年金額改定通知書』、『年金振込通知書』の発送を行います」
横野 会由子
