「年金支給日に夫婦でいくら振り込まれるのか」を、正確に把握している方は意外と少ないものです。この記事では、公的年金の2階建て構造と2026年度の年金額例を確認したうえで、「標準的な夫婦」が実際に受け取る金額の内訳と、共働き夫婦の家計をどう整理すべきかを見ていきます。

川勝 隆登
40代・50代の共働き夫婦の方から「保険料が重くて積立を始められない」というご相談をよくいただきます。この記事では、年金額の内訳を確認したうえで、公的保障を起点にした家計の見直し方をご紹介します。

なお、公的年金の2階建て構造・2026年度の年金額・受給額分布のデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

標準的な夫婦は年金支給日にいくらもらえる?|月23万7279円のモデル世帯を監修者が解説、夫に先立たれた場合の年金シミュレーションも
標準的な夫婦は年金支給日にいくらもらえる?|月23万7279円のモデル世帯を監修者が解説、夫に先立たれた場合の年金シミュレーションも
ココがポイント
  • 公的年金は国民年金と厚生年金の「2階建て」。標準的な夫婦は月23万7279円、支給日には2カ月分の47万4558円が振り込まれる
  • 「標準的な夫婦」とは、夫が40年間平均月収45万5000円で就労し、妻が国民年金のみを受給するケースを指す
  • 厚生年金の平均年金月額は男性16万9967円・女性11万1413円。実際の受給額には大きな個人差がある

1. 年金のしくみ|「2階建て」構造

公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。

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厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

国民年金は原則として、国内在住の20歳以上60歳未満の全ての人が加入対象で、年金のベースとなります。国民年金保険料(※1)は全員一律です。

厚生年金は企業や官公庁などで働く人たちが、国民年金に上乗せして加入する年金です。毎月の給与や賞与に応じた年金保険料(※2)を納めます。

国民年金保険料を全期間(480月)納めると、65歳以降で満額(※3)の老齢基礎年金を受け取ることができます。未納期間があった場合は、その月数に応じて満額から差し引かれるしくみです。厚生年金は、「年金加入月数」と「納めた保険料」により、老後の年金額が決まります。

上記の年金額の決まり方からは、実際に受け取る年金額は一人ひとり異なります。ただし厚生労働省が毎年度の年金改定内容とともに公表する「年金額例」が、一つの目安となることもあるでしょう。具体的には、最新となる2026年度の年金額例によると「標準的な夫婦世帯」は月の年金支給日に「約47万5000円」支給されます。

※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※3 国民年金の満額:2026年度は月額7万608円

2. 2026年度の年金額改定と支給日

公的年金の支給日は「偶数月の15日(※)」です。そのため、次回支給日の10月15日(木曜)には「8月分と9月分」の年金が支給されます。

※15日が土日祝日の場合、直前の平日に前倒しされます。

  • 国民年金(老齢基礎年金):7万608円(1人分※1
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

厚生年金のモデル世帯の場合、夫婦で月額「23万7279円」。これは「老齢厚生年金1人分+老齢基礎年金2人分」の合算です。2カ月に一度の年金支給日には、2カ月分が合算で支払われます。この夫婦世帯の場合、10月15日支給の年金額は合算で「47万4558円」ですね。これが「約47万5000円」の根拠となります。

3. 約47万5000円振り込まれる「標準的な夫婦」とは

1回の年金支給時に「約47万5000円」を受け取る「標準的な夫婦」とは、具体的にはどのような世帯なのでしょうか。厚生労働省による年金額の定義を見てみましょう。

男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

引用:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は前年度から国民年金(基礎年金)が1.9%の引上げ 厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引上げです~」

夫は40年間の平均標準報酬(賞与含む月額換算)が45万5000円、年収にして546万円で就労した会社員など。そして妻は扶養内パートや専業主婦などで、厚生年金への加入期間がなく国民年金のみの受給となるケースです。

こうした夫婦の合計年金が23万7279円となり、2カ月分がまとめて支給されるのです。さらに多くの場合、老齢年金からは住民税や介護保険料といった税や社会保険料が天引き(特別徴収)されます。

天引き内容や実際に振り込まれる金額は、6月に送付される「年金振込通知書」などで確認しましょう。1回の年金支給で「約47万5000円」となれば大きな金額に思えるかもしれません。しかし、一人当たりの月額に換算すると、必ずしも余裕のある水準とは言い切れないでしょう。

また、現役時代の給与とは異なり「2カ月に一度の定期収入」となるため、家計管理のサイクルが変わる点も、留意が必要となりそうですね。

4. 厚生年金・国民年金、受給額の男女差はどれくらい?

ここからは、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、一人ひとりが受け取る年金について、グラフを交えて見ていきます。個人差や、平均年金月額の男女差などに着目してみてください。

4.1 「厚生年金」の平均年金月額

厚生年金:年金月額階級別の受給権者数3/4

厚生年金:年金月額階級別の受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金部分を含む

4.2 「国民年金(老齢基礎年金)」の平均年金月額

国民年金:年金月額階級別の受給権者数4/4

国民年金:年金月額階級別の受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

平均年金月額は、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給権者は男性約17万円、女性約11万円。国民年金の場合は、男女ともに平均月額は6万円前後です。

公的年金は2カ月分がまとめて支給されるため、1回あたりの支給額は一見高めに感じる人もいるでしょう。しかし、これをひと月分に換算すると、年金収入だけで生活できる世帯は多数派ではないかもしれません。また、上記はあくまでも全受給権者の平均です。実際に一人ひとりが受給する金額は、グラフが示すように大きな個人差があります。夫婦それぞれの年金見込み額は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用して把握しておきましょう。

4.3 「標準的な夫婦」の年金23万7279円、遺族年金があればいくらまで保障を減らせる?

ここまで見てきた「標準的な夫婦」を前提に、公的な遺族年金がどの程度の保障になるのかを試算してみましょう。夫が厚生年金加入中に亡くなった場合、妻には遺族厚生年金(老齢厚生年金部分の4分の3相当)に加え、条件を満たせば中高齢寡婦加算が上乗せされます。

「標準的な夫婦」の厚生年金23万7279円のうち、老齢厚生年金部分(夫の報酬比例部分)をおよそ14万円と仮定すると、次のような目安になります。

【遺族厚生年金の目安】
14万円 × 4分の3 = 約10万5000円

【中高齢寡婦加算(要件を満たす場合、年額約61万円=月額約5万円)を加えると】
約10万5000円 + 約5万円 = 月額約15万5000円

遺族年金だけでも月15万円前後の収入が見込める場合、民間の死亡保険で確保すべき保障額は「遺族年金でまかなえない生活費の不足分」に絞り込めます。手厚い死亡保障を漫然と維持するより、公的保障を差し引いた「本当に足りない金額」を計算するほうが、保険料の見直し余地は見つけやすくなります。

なお、遺族年金の金額や中高齢寡婦加算の要件は、亡くなった方の年金加入状況や家族構成によって大きく異なります。ここでの試算はあくまで一例であり、実際の受給額は年金事務所での確認が必要です。

4.4 見直しで浮いた保険料、共働き夫婦で月1万円をNISAに回すと?

保障を適正化して浮いた保険料を、そのまま生活費に溶かすのではなく積立に回した場合の効果も見ておきましょう。夫婦合わせて月1万円を、20年間・年利3%で積み立てた場合を試算します。

【月1万円を20年間、年利3%で積み立てた場合】
20年後の合計額:約328万円(元本240万円+運用益約88万円)

保険の見直しは「支出を減らす」だけで終わらせず、浮いた分の行き先を決めておくことで、教育資金や老後資金の準備に直結します。なお、これは一定の利回りが続くと仮定した試算であり、投資信託などの運用には元本割れの可能性があります。

川勝 隆登
公的な遺族年金の水準を知らないまま死亡保障を厚くし続けている家計は少なくありません。まずはご自身の場合の遺族年金の見込額を確認し、そこから逆算して「本当に足りない金額」を見極めていただければと思います。

監修者コメント

村岸 理美

「標準的な夫婦」の年金額23万7279円は、あくまで一つのモデルケースであり、共働きで双方が厚生年金に加入している世帯とは前提が異なります。ご自身の世帯がどのパターンに近いのかを、まず確認することが大切です。

記事中で取り上げた保険の見直しは、40代・50代の共働き夫婦のご相談でも頻繁に出てくるテーマです。独身時代からの保険をそのまま続けている場合、ライフステージの変化に保障内容が追いついていないケースが多く見られます。公的な遺族年金の水準を確認したうえで、必要な保障額を再設定することは、家計の見直しの第一歩として有効です。

ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、保障を減らすこと自体を目的にしないことです。減らした分を教育資金や老後資金の準備に振り向けるところまでセットで考えることで、将来への安心と目の前の家計の余裕を両立させることができます。