もっとも、(2)や(5)での不定形の案件は大いに人が絡む可能性があるでしょうね。たとえば、頭取案件のような政治的案件です(笑)。

ではこれから、金融期間はどの分野で高い収益性を求めていくのでしょう。私見ではかなり限られていると思います。(1)〜(3)の作業は原則、人の作業は要りません。銀行は口座を保有していればよいという立場です。クレジットカードが絡む手数料も、フィンテック同士の競争が高まるので漸減でしょうね。

(4)〜(7)も既述のように事務的なところは、全部テクノロジーでカバーされます。ゼロ金利政策がさらに長期間継続すると、個人預金口座維持手数料も導入される可能性大ですね。

過去の事例を鑑みると、金融機関がサービス対価の手数料を徴求できるのは、金融機関の方が一般顧客よりもよりよいサービスを提供できたり、より優れた情報を提供できたりする分野です。そして、これらのサービスは、結果的に顧客の儲けにつながらないといけません。私はこれを、“情報の非対称性による裁定取引(アービトラージ)”と言っています。

情報格差がなくなっている今の時代

ところが、今では銀行など金融機関の社員と一般個人顧客との情報格差はほとんどありません。つまり、“情報の非対称性による裁定取引”が成り立たなくなっています。もちろん、一般個人顧客が金融機関担当者と同じレベルになる必要はありますが、ネットでいくらでも情報は取れます。個人がしっかり勉強すれば軽く追いつけるのです。

ということは、それなりの知識を身につければ、バカ高い手数料の金融商品の勧誘も避けることができます。もっとも、こういうことを教えてくれる身近な人が必要ではありますが。

フィンテック化が進めば進むほど、金融サービスや商品は汎用品化してきます。同時にサービスの種類も増えてきますから、自分に必要なサービスを見極める必要があります。くれぐれも、「テレビコマーシャルで見た」で決めるのではなく、内容をよくわかった上で選んでいきましょう。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)