酒類が稼ぎ、食品飲料が伸び悩む。5期で見た利益構造
過去5期の営業利益をたどると、2021年12月期は220億円、2022年12月期は101億円、2023年12月期は118億円、2024年12月期は56億円と低空飛行が続いた。
2025年12月期に244億円まで戻し、ROE(自己資本利益率)は9.4%となっている。会社は中期経営計画で掲げた2026年度の財務目標であるROE8%を、1年前倒しで達成したとしている。
食料品業種のROEの中央値は6.7%なので、直近期に限れば業種の標準を上回った。ただし2022年12月期のROEは3.3%、2024年12月期は4.1%であり、5期を通して見れば水準はまだ安定していない。
利益の出どころは偏っている。2025年12月期のセグメント別では、酒類の売上収益が4,002億円で全体の79.0%を占め、営業利益は303億円、利益率は7.6%だった。
一方の食品飲料は売上収益1,066億円に対して営業利益18億円、利益率は1.8%にとどまる。前期比では▲63.8%の減益である。食料品業種の営業利益率の中央値3.9%と比べても低い。
ビール事業の稼ぐ力が全体を支え、食品飲料が足を引っ張る構図が続いてきた。上期に国内食品飲料で構造改革と価格改定を進めているのは、この歪みへの対応と考えられる。
カールスバーグとの合弁に1,029億円。切り出した先で何をするのか
同社は2026年7月1日、100%子会社であったサッポロビール株式会社を吸収合併し、商号をサッポロホールディングス株式会社からサッポロビール株式会社へ変更している。持株会社の看板を下ろし、事業会社の名前に戻した形だ。
上期のセグメント別では、国内事業の売上収益が1,745億円で▲1.2%、事業利益は117億円で+32.0%。海外事業は売上収益614億円で+4.8%、事業利益2億円で+21.2%となった。
数量面では、ビール類の総需要が前年同期比97%と縮むなか、同社のビール売上数量は105%と市場を上回った。海外でもサッポロブランドビールの売上数量が北米で113%、アジアで120%と伸びている。
そしてもう一つ、重要な後発事象がある。会社は取締役会で、カールスバーグ社と東南アジア・香港における戦略的な資本業務提携を構築することを決議した。
シンガポールに設立予定の合弁会社に対し、同社は約643百万米ドル(約1,029億円)を出資して25%の持分を取得する。出資比率はカールスバーグ社75%、同社25%である。
不動産の資本を外部に開き、そこで得た資金の一部を海外ビール事業の持分に振り向ける。資本配分の向きが明確に変わったと読み取れる動きだ。
筆者コメント
この会社の姿が変わろうとしている局面だと考えている。
長らくサッポロは、ビールの会社でありながら都心の不動産を抱える会社でもあった。株式市場でもその二面性が語られてきたし、資産の重さが資本効率の議論を呼び続けてきた。
今回の一連の取引は、その二面性を段階的にほどく作業に見える。不動産子会社の議決権は三回に分けて移り、最終的にはすべて手放す予定とされている。恵比寿ガーデンプレイスの信託受益権の一部などを手元に残したうえでの整理だ。
ここで注意したいのは、身軽になること自体は目的ではないという点である。厚くなった自己資本をどう使うかが決まらなければ、資本効率はむしろ落ちる。海外ビール事業への出資は、その問いに対する最初の答えという位置づけになるだろう。
一過性の利益で膨らんだ数字に目を奪われず、切り出した先で何を建てるのかを追いかける。そういう見方で決算を追っていくことをおすすめしたい。
参考資料
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
石津 大希