赤ちゃんを連れて電車やバスなどに乗ると、おばさまからこんな声をかけられたことはありませんか? 「今が一番かわいい時期ね」と。筆者もこれまで、街行く人や親せきのおじさんやおばさんなど、特に年配の方から幾度となくこの言葉をかけられてきました。しかし、生後間もない時期でも半年を過ぎた頃でも1歳を過ぎた今でも、どんな時でも「今が一番かわいい時期ね」と言われます。
一体どうして常に「今が一番かわいい時期ね」と言われるのか。ずっと疑問だったこの答えが最近になってわかった気がしています。
“かわいい”が更新していく我が子
子どもを産んでからというもの、スマートフォンのカメラロールにはぎっしりと子どもの写真が並ぶようになりました。筆者は子育てに慣れ始めた生後3カ月頃から、眠りに就く前には我が子の写真を生まれた時から現在まで、成長過程をなぞるように眺めるのが日課となっています。すぐ隣には眠っている本人がいるのに、です。
それらの写真を見ていると、ふと驚くことがあります。それは当時「天使みたい!」と身も心もとろけるような愛おしさで愛でていた新生児期の子どもが、今写真で客観的に見ると、まるでシワクチャなお猿さんのような、赤ちゃんなのかもよくわからないふにゃふにゃした生き物に見えるのです。
もちろん、あまりにも小さく尊いその姿はかわいらしくてたまりません。しかし、あの時抱っこしていた筆者は、たとえば子どもを見て毎日「この子は目がぱっちりしててかわいい~!」と思っていましたが、写真に写っている子どもは腫れぼったい瞼と常に眠そうな目。そう、お世辞にもぱっちりしているなんて言えない目なのです。
そんな風に我を忘れてそのかわいさを全身全霊で感じていた当時と比べると今は冷静に新生児期の我が子を捉えられ、その数カ月間の感受性のギャップには自分で驚いてしまいます。
これはつまり、親にとって子どもの“かわいい”とはその時の一瞬一瞬が最大であるために、時間を追うごとにどんどん更新しているのだと気付きました。
自分では何もできずおっぱいを飲んで寝るだけだった時もかわいかったのですが、今、自分の意志を持って歩いたり拍手をしたり「ママ」「ちゃちゃ(お茶)」と喃語を話すようになった現在進行形の我が子は、今現在の筆者にとっては一番かわいい。そしてきっと、明日は今日よりもかわいいと感じるだろうし、明後日は明日よりかわいいと感じるでしょう。そんな風に、“かわいい”がどんどん更新していく存在が我が子なのだろうと感じます。