その時その時が最大になるのは子どものかわいさだけでないでしょう。子育ての大変さや辛さも、その時その時が最大。喉元過ぎれば熱さはすっかり忘れるけれども、喉元を通過する時の熱さは耐えられないほど苦しいものです。
筆者は育児日記をつけていますが、日記を見返すと「この時の自分、悲観しすぎだし、パニックになりすぎ!」と突っ込んで笑ってしまいたくなる内容がたくさんあります。2時間おきの頻回授乳でまとまった睡眠時間がまったくなかった時、乳腺炎で40度の高熱を出した時、子どもと二人きりで1日中家にいるのが苦痛だった時、何をやっても泣き止まない子どもにイライラしてしまい、「母親失格だ」と自己嫌悪に陥った時…。
1歳も過ぎ、保育園にも預けている今となっては「当時はそんなこともあったな」と懐かしく感じる余裕さえあります。そして「大変だったけど、あの時の自分はすごく頑張っていたな」「子どもも一生懸命泣いていたんだな」なんて美談にもできます。
しかしその時は、いつかそんな風にポジティブに捉えられるとは想像だにできず、本当に孤独で辛くて苦しくて、「こんなに大変なのは世界中で自分だけなんじゃないか」と錯覚しながら、なんとか解決策を見出そうと必死にもがいていました。
日記を見返していて思うのは、子育てとは次から次へと悩みごとや苦労が出てくるということ。“一難去ってまた一難”がずーっと続いていくので、とにかく今まさに目の前にある壁を乗り越えることに全力を注がなくてはいけません。
子育ては毎日大変だけれど、今この瞬間を大事にしたい
そんな風にその時その時の“今”が最も辛いからこそ、子どもを大事に思う気持ちや慈しみがその時その時の“今”、最も大きくなる。「今が一番(子どもが)かわいい時期ね」とはつまり、「今が一番(親にとっては)大変な時期ね」と同義なのかもしれないな、と最近筆者は思います。
そして「今が一番大変な時期だけど、その大変さを懐かしんで『こんな時もあったな』と笑える時もくるよ」とも続くのでしょう。実際に筆者自身が自分の1年前の育児日記を読んで今そう思えているのだから、子育てを経験した年配の方であればなおさらそう思うのかもしれません。
年配の方がよくかけてくれる「今が一番かわいい時期ね」という言葉の裏にあるのは、そんなエールなのだとすると、なぜいつなん時でもこの言葉がかけられるのかが少しわかったような気がします。そして、子どもはすぐに大きくなってしまうから、今はとても大変だけれどもこの宝物のような一瞬を大事にしようと、子育てに対して心新たに奮起できる魔法の言葉なのかな、とも思います。
秋山 悠紀