3. 【2026年8月施行】高額療養費の何が変わった?3つのポイント

ここからは私たちの家計に直結する変更点です。先月、2026年8月から「高額療養費制度」が一部見直されました。

高額療養費の年間上限の新設3/4

高額療養費の年間上限の新設

出所:厚生労働省「高額療養費の年間上限の新設」

高額療養費制度とは、ひと月あたりの医療費の自己負担額が一定の金額(上限額)を超えた場合、その超えた分が払い戻される家計の強い味方となる制度です。今回の見直しには、大きく分けて3つのポイントがあります。

3.1 ポイント1:ひと月あたりの「自己負担上限額」が引き上げへ

医療費全体の伸びなどに合わせて、月ごとの負担上限額が引き上げられました。
たとえば、70歳以上で年収約260万円から約370万円(標準報酬月額20万円から26万円)の方の場合、8月からは以下のように変わっています。

  • 通常の上限額:これまでの5万7600円から「6万1500円」に引き上げ
  • 外来特例(通院のみの場合の上限):これまでの1万8000円から「2万2000円」に引き上げ

3.2 ポイント2:長期療養者の味方となる新たな安心「年間上限」がスタート

月額の負担が引き上がる一方で、長期にわたって治療を続ける方の負担を軽くするための「年間上限」という仕組みが新たに始まりました。対象期間は毎年8月から翌年7月の1年間です。

月ごとの自己負担額が積み上がり、決められた「年間上限額」に達した場合は、それ以上支払う必要がなくなるという仕組みです。先ほどの70歳以上の方の場合、この年間上限は53万円に設定されています。

3.3 ポイント3:長期治療を支える「多数回該当」の金額はそのまま維持

過去12か月間で、3か月以上高額療養費の対象となった場合、4か月目以降はさらに上限額が下がる「多数回該当(たすうかいがいとう)」という仕組みがあります。この多数回該当の上限額については、これまで通り引き上げられずに据え置きとなっており、重い病気などで長く治療が必要な方への配慮がされています。

4. 【令和8年成立】暮らしが変わる医療保険制度の大改革

さらに、令和8年5月に成立した法律案では、高額療養費の見直し以外にも、私たちの生活に影響する4つの大きな変更が予定されています。

今回の医療保険制度改革のポイント4/4

今回の医療保険制度改革のポイント

出所:厚生労働省「医療保険制度改正法が成立しました」

4.1 OTC類似薬の薬剤給付の見直し(公布後1年以内)

ドラッグストアなどで買える市販薬で代用できる一部のお薬(ビタミン剤やうがい薬など)について、病院で処方してもらう際の保険適用は維持されますが、お薬代の4分の1相当が窓口での追加負担となります。ただし、こどもや難病の患者さんなどへの特例措置も検討されています。

4.2 後期高齢者医療における金融所得の公平な反映(公布後5年以内)

これまで、窓口での負担割合を決める際、株の配当金などの金融所得は反映されにくい仕組みでした。この不公平をなくすため、上場株式の配当などの金融所得も負担割合の判定にしっかり反映されるようになります。個人の手続き負担が増えることはありません。

4.3 妊娠・出産に対する支援の強化(公布後2年以内)

出産にかかる標準的な費用を、医療保険から病院などの施設へ直接支払う仕組み(現物給付化)が導入されます。これにより、退院時に窓口で多額の現金を立て替える負担が減ります。

4.4 子育て世帯の保険料負担軽減(令和9年4月1日より)

国民健康保険において、こどもにかかる保険料(均等割)を半額にする軽減措置があります。これまでは「未就学児」までが対象でしたが、この対象が大きく広がり「高校生年代まで」となります。

5. 40代に多い「今の共済や団体保険だけで十分なのか」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が伝えたいこと

高額療養費制度の見直しなど、将来の医療費負担に対する不安は、実際の相談の場でもよく聞かれます。とくに、現役時代は会社の制度などで自己負担が少なくても、退職後の負担増を心配するという方が多いです。

5.1 40代に多いお悩み相談は「今の共済や団体保険だけで十分なのか」

40代のお客様
40代の会社員です。将来の医療費と保険の備えについて見直しを検討しています。医療現場での勤務経験があり、現在は職場の制度で医療費の負担が抑えられている状況です。また、家族にがんの既往歴があることから、「自分も長生きしないかもしれない」と考え、老後を見据えた長期の医療保障はそれほど重視していなかったというのが、正直な気持ちです。しかし、子どもの独立が近づき、自分の老後を具体的に考えたとき、将来の医療費負担に対して、今の共済や団体保険だけで十分なのかと迷いを感じるようになりました。さらに、過去の健康状態に懸念があり、先進医療などへの備えに不足を感じつつも、そもそも新たな備えができるのかという不安もあります。

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が回答】長生きするリスクに備え、選択肢を冷静に整理する

菅原 美優
医療技術の進歩により、かつては不治の病とされていた病気でも、長い期間をかけて治療するケースも増えており、より一層「長生きするリスク」への備えが重要視されています。健康状態に不安がある方でも加入条件が緩和されている保険などもあるため、健康状態にあった選択肢を冷静に比較すると良いでしょう。
また、現役時代と退職後で変わる公的制度の違いを把握しておくことが、将来の医療費不安を和らげることにつながります。公的制度でカバーしきれない部分を備えることができることが、民間保険の強みです。現在加入中の保険が、今の医療事情に合ったものになっているか、まずは見直すところから始めてみましょう。

5.3 ポイント1:医療技術の進歩と「長生きするリスク」に備える

まず見直したいのは、医療技術の進歩と「長生きするリスク」への備えです。この方は当初、家系的な事情から老後の保障を重視していませんでしたが、相談を通して「医療技術が向上しているため、65歳以降も手厚い保障があったほうが安心できる」と気づいたように、治療を受けながら長く生きることを前提とした備えが重要になります。かつては不治の病とされた病気でも、現在では通院しながら長く治療を続けるケースが増えています。高額療養費制度の上限額見直しなどが議論される中、退職して職場の医療費補助がなくなった後の長期的な負担をどうカバーするかは、多くの方にとって共通の課題と言えます。

5.4 ポイント2:健康状態に合った選択肢を冷静に比較する

そのうえで、自身の健康状態に合った選択肢を冷静に探すことも大切です。過去に健康上の不安があると、新しい備えを作るのは難しいと感じる方が多いようです。しかし、加入条件が緩やかな保険などを複数比較することで、現在の状況に合った保障と負担のバランスを見つけることができます。この方も、複数の選択肢を比較検討することで、無理のない負担で必要な保障を確保できるプランにたどり着き、将来への備えを整えることができました。健康状態に不安があるからこそ、いざというときの医療費負担を軽減する仕組みを持っておくことは、精神的な安心感にもつながります。

5.5 ポイント3:現役時代と退職後で変わる公的制度に注意する

また、現役時代と退職後で利用できる公的な制度が変わる点にも注意が必要です。現役時代は職場の付加給付などで医療費が大きく抑えられていても、退職後は一般的な高額療養費制度の適用のみになることが少なくありません。さらに、制度の変更によって月額や年間の上限額が引き上げられれば、家計への影響はさらに大きくなります。とくに先進医療など、公的医療保険の対象外となる治療を受けた場合の全額自己負担は、老後の資産計画を大きく狂わせる要因になりかねません。だからこそ、公的制度でカバーしきれない部分をどう補うかという視点が、年齢を重ねるにつれてより大切になります。

「今の制度があるから大丈夫」「自分には新しい備えは無理」と決めつける前に、医療環境の変化や自身のライフステージに合わせて、必要な保障期間や利用できる選択肢を一つずつ整理してみることが、将来の医療費不安を和らげる出発点になります。

6. まとめにかえて

今回は、膨らみ続ける医療費の現状と、2026年8月に施行された高額療養費制度の変更点、そして今後の医療保険制度の4つの大改革について解説しました。

ひと月あたりの自己負担上限額が引き上げられた一方で、長期療養者を守る「年間上限」が新設されるなど、制度は時代に合わせて変化を続けています。

公的制度の変更点を正しく理解することは、家計防衛の第一歩です。ご自身の生活防衛資金(いざという時のための貯蓄)や加入している民間の医療保険のバランスを、この機会にぜひ見直してみてください。

菅原 美優

高額療養費の月額上限が引き上げられたことで、急な入院や手術の際、窓口で支払う一時的な費用はこれまでより少し多くなる可能性があります。

いざという時に慌てないよう、常に生活費の3か月から半年分程度の現金は手元に確保しておくことをおすすめします。また、年間上限が新設されたとはいえ、差額ベッド代や食事代は全額自己負担となるため、不安な方は必要最低限の民間医療保険でカバーすることも検討してみましょう。

参考資料

菅原 美優