3. 個人投資家もマネしたい!リスクを抑えるGPIF式「4つの資産分散」の基本
GPIFがこれほどまでに安定した運用成果を長年にわたって上げている背景には、「徹底した分散投資」という確固たるルールが存在します。この運用スタイルは、これから老後に向けた資産運用を始めたいと考えている初心者の方にとっても大いに参考になるアプローチです。
運用資産額・構成割合(年金積立金全体)

出所:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)「2026年度の運用状況」
GPIFは、運用資金を以下の4つのカテゴリーに約25%ずつ均等に配分する「基本ポートフォリオ(資産の組み合わせ)」を維持しています。
- 国内債券:25%
- 外国債券:25%
- 国内株式:25%
- 外国株式:25%
このように、投資先を一つの国や一つの資産に偏らせず、国内外の「株式」と「債券」にバランスよく分ける手法を「分散投資」と呼びます。
一般的に、株式は景気が良いときに値上がりしやすく、大きな利益が期待できる反面、価格の変動リスクが大きいという特徴があります。一方で債券は、株式に比べて大きな利益は狙いにくいものの、満期まで保有すれば原則として元本と利息が支払われる仕組みとなっており、価格の変動が比較的穏やかです。
さらに、投資先を「国内」と「海外」に分けることで、日本の景気が落ち込んだ場合でも海外経済の成長を資産に取り入れることができ、為替の変動によるリスクも軽減できるというメリットがあります。仮に、投資資金のすべてを国内株式だけに集中させていた場合、日本の株式市場が暴落した際に資産全体が大きなダメージを受けてしまいます。
しかし、GPIFのように値動きの異なる4つの資産に分けて投資を行っていれば、ある資産が値下がりしても他の資産が値上がりすることで、全体としての損失をカバーし合い、資産の目減りを最小限に抑える効果が期待できるのです。
個人で投資信託などを選ぶ際にも、特定の国や業界に集中投資する商品ばかりを選ぶのではなく、世界中の株式や債券に広く分散して投資する「バランス型ファンド」や「全世界株式型」などを取り入れることで、GPIFのような堅実で安定した運用を目指すことができるでしょう。
4. 60代に多い「特定の国や資産に集中投資してしまって大丈夫だろうか」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が伝えたいこと
新NISAの普及に伴い、将来に向けた資産形成に関心を持つ方が増えています。その一方で、「特定の国や資産に集中投資してしまって大丈夫だろうか」「市場が大きく変動したときに資産が目減りするのが怖い」といった不安の声もよく聞かれます。手堅く運用したいと考えつつも、具体的な分散投資の方法が分からず、一歩を踏み出せないという方もいらっしゃいます。
4.1 60代に多いお悩み相談は「特定の国や資産に集中投資してしまって大丈夫だろうか」

その後は、相談の場を通じてNISA口座を活用し、少しずつご自身の考えを整理していくことになります。
4.2 【ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が回答】リスクを理由に決めつける前に、地域・タイミング・心構えを整理する
組み合わせによってより手堅く運用することも可能なため、一つの投資方法に依存せず、出口を意識した資産運用が成功の秘訣です。
4.3 ポイント1:投資先の地域と資産を適切に分ける
まず見直したいのは、投資先の地域や資産を適切に分けることです。この方はご自身の資産状況を振り返る中で、「アメリカの資産に偏っている部分があるので、国内の株式などを組み合わせてバランスを取りたい」と気づかれたように、特定の国に依存しないバランスを意識するようになりました。世界中の株式や債券に幅広く投資する年金積立金(GPIF)の運用でも、国内外の資産にバランスよく配分することが基本とされています。話題の国や特定のテーマだけに集中するのではなく、国内の資産や異なる値動きをする資産を組み合わせることが、リスクを抑えた手堅い運用につながります。
4.4 ポイント2:一括投資と積立投資でタイミングを分ける
そのうえで、投資するタイミングを分けることも重要です。まとまった資金がある場合、一度に全てを投資してしまうと、その後の市場変動の影響を大きく受けてしまいます。この方は、「為替の動きは読みにくいものの、長期的な視点で資産を分散させるために、安定した資産と国内株の積立を組み合わせて進めたい」という理解に至りました。市場の先行きや為替の動向を正確に予測することは誰にもできません。だからこそ、一部の資金を一括で投資しつつ、残りを毎月の積立に回すといった組み合わせが有効です。時間的な分散を図ることは、長期的な資産形成において欠かせない視点になります。
4.5 ポイント3:市場の下落局面でも慌てず長期的な成長を信じる
また、市場が大きく下落したときの心構えもあらかじめ持っておく必要があります。運用を続けていれば、一時的なパニック売りや暴落に直面することもあります。しかし、この方は「一時的に資産が目減りしても一喜一憂せず、その投資先の将来性がどうかが一番のポイントになる」という気づきの通り、目先の値動きに惑わされない姿勢を身につけられました。一時的なマイナスに慌てて手放してしまうのではなく、投資先の長期的な成長を信じて保有し続けることが、最終的な成果を生み出す原動力となります。
投資にはリスクが伴うからと決めつける前に、投資先の地域、資産の種類、そして投資のタイミングを一つずつ整理してみることが、手堅い資産形成の出発点になります。
5. まとめにかえて
今回は、最新の厚生年金と国民年金の平均受給額や、公的年金の積立金を運用するGPIFの取り組みについて解説しました。令和6年度のデータによれば、厚生年金の平均受給額は月額約15.1万円、国民年金の平均受給額は月額約5.9万円となっています。年金の平均額はあくまで目安であり、実際の受給額は現役時代の働き方などによって異なるため、「ねんきん定期便」などでご自身の正確な年金見込み額を把握し、早いうちから老後の資金計画を立てておくことが大切です。
また、GPIFの運用実績が示しているように、長期的な目線で「徹底した分散投資」を行うことは、リスクを抑えて安定した資産形成を行うための王道といえます。私たち個人も、まずは公的年金という土台をしっかりと理解したうえで、新NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などの非課税制度を上手く活用し、無理のない範囲で少しずつ老後に向けた資産づくりを始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
横野 会由子
