厚生労働省が2026年(令和8年)8月7日に公表した最新の「厚生年金保険・国民年金の令和7年度収支決算の概要」によると、時価ベースの年金積立金が過去最高の302兆5893億円に達しました。公的年金の財政状況にニュースなどで注目が集まるなか、将来自分が受け取る「国民年金や厚生年金の受給額平均」が実際にいくらになるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

横野 会由子

私自身、ファイナンシャルアドバイザーーとして日々お金の相談をお受けするなかで、「将来もらえる年金だけで老後の生活を乗り切れるのか不安だ」という声を数多く耳にします。

物価上昇によって日々の生活費の負担が増す昨今、公的年金は老後の生活を支える土台となる極めて重要な資金です。

今回は、最新の決算資料や厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、現代の現役世代の動向から紐解く将来の受給額の目安や、公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の最新実績についてわかりやすく解説します。老後の備えを進めるにあたり、私たちが個人で真似できる資産運用のヒントもあわせて探っていきましょう。

1. 国民年金と厚生年金、それぞれの平均受給額は月額いくら?

まずは、老後の生活の柱となる公的年金について、実際の受給額の目安を見ていきましょう。日本の公的年金制度は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入する「国民年金(基礎年金)」を1階部分とし、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」を2階部分とする「2階建て構造」になっています。

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度末時点における老齢年金の平均受給月額は以下のとおりです。

  • 厚生年金保険(第1号)の老齢年金:月額15万1142円
  • 国民年金の老齢年金:月額5万9431円

単純にこの2つの数字を比較すると、月額で9万1711円の差があることがわかります。ここで一つ注意しておきたいのは、厚生年金の平均月額である「15万1142円」のなかには、1階部分である「老齢基礎年金(国民年金)」の月額も含まれているという点です。

会社員や公務員として長年働いていた方は、国民年金に上乗せする形で厚生年金を受け取る仕組みとなっているため、受給額全体が大きくなる傾向にあります。また、国民年金の平均月額である「5万9431円」についても、見方には少し注意が必要です。

この金額は「自営業などで国民年金だけを受け取っている方」のみを対象とした平均額ではありません。会社員として一定期間働き、老齢基礎年金に加えて厚生年金も同時に受け取っている方の「基礎年金部分」もすべて含んだ全体の平均値となっています。

そのため、自営業の方などの平均額がそのまま約5.9万円になるわけではなく、あくまで受給者全体の基礎年金部分の平均であると理解しておくことが大切です。

1.1 厚生年金加入者の平均給与、男性と女性でどれくらい違う?

厚生年金保険(第1号)の標準報酬月額等の推移1/2

厚生年金保険(第1号)の標準報酬月額等の推移

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金の年金額を考えるうえでは、現役時代の報酬にも注目しておきたいところです。令和6年度末の標準報酬月額の平均は、次のとおりです。

  • 全体:33万1936円
  • 男性:37万7056円
  • 女性:26万6974円

男女の差は月額11万82円となっています。また、令和6年度の標準賞与額1回当たりの平均は、次のとおりです。

  • 全体:46万282円
  • 男性:54万2691円
  • 女性:33万2213円

男女の差は21万478円です。さらに、一人当たり標準報酬額を総報酬ベースの年額で見ると、

  • 全体:469万1345円
  • 男性:538万3938円
  • 女性:368万4637円

となっており、男女では年間169万9301円の差があります。厚生年金の受給額は、加入期間だけでなく現役時代の報酬によっても変わります。男女の年金額に差が生じる背景を見る際には、現役時代の給与や賞与の違いにも目を向ける必要がありそうです。

2. 年金財政は大丈夫?年金積立金を支える「GPIF」の役割と運用益221兆円の実績

私たちが将来受け取る年金について考えるとき、非常に参考になるのが公的年金の積立金を運用している「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」の取り組みです。

GPIFとは、私たちが納めた年金保険料のうち、将来の給付のために計画的に積み立てられている大切な資金を金融市場で運用し、年金財源を増やす役割を担う公的機関です。少子高齢化が進む日本において、この運用によって得られる収益は、年金制度を長期的に安定させるための非常に重要な財源となっています。

2026年(令和8年)8月7日に公表されたばかりの「2026年度第1四半期運用状況(速報)」のデータによれば、2001年度の市場運用開始から現在に至るまでの累積収益は「プラス221兆201億円」という巨額に達しています。現在の運用資産残高は約317兆7596億円にのぼっており、GPIFは世界最大級の機関投資家として日本の年金制度の基盤を力強く支えています。

投資や資産運用と聞くと、「一時的な株価の下落で大切な年金資金が減ってしまうのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、GPIFの運用で注目すべきポイントは、株価などの資産価格の上昇によって得られる利益(キャピタルゲイン)だけを狙ったハイリスクな運用をしているわけではないという点です。

GPIFは、債券の利子や株式の配当金など、資産を保有しているだけで継続的に得られる定期的な収入(インカムゲイン)によって、プラス63兆3662億円もの収益を着実に確保しています。日々の相場の変動に一喜一憂するのではなく、長期間にわたって安定した収入を生み出す仕組みを構築していることが、年金財政の揺るぎない安定につながっているのです。