3. 資産形成のニュースタンダード?「新しい富裕層」の2つの形
今回の調査レポートで注目されているのが、親からの相続などに頼らず、自らのキャリアや投資によって資産を築いた「新しいタイプの富裕層」の存在です。
1つ目は、「いつの間にか富裕層」と呼ばれる層です。40歳代後半から50歳代の一般的な会社員を中心に、長年の地道な株式投資などを通じて、気づけば富裕層の仲間入りを果たしていたという方々です。
2つ目は、「スーパーパワーファミリー」と呼ばれる層です。主に都市部に住む共働き世帯で、夫婦合わせた世帯年収が高く、20歳代から30歳代にかけては教育費や住宅ローンに追われつつも、40歳前後からの昇給を機に一気に資産を増やしていく傾向があります。
これらの層に共通しているのは、「金融知識を身につけ、自分たちの力で資産を築き上げている」という点です。誰もが彼らと同じように1億円を目指す必要はありませんが、その堅実な計画性からは学ぶべき点が多くあります。
4. 世帯年収1000万円台に多い「節税のはずが思わぬ落とし穴」への戸惑い。ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が伝えたいこと
世帯年収が1000万円を超えてくると、税負担の重さを実感し、節税目的で資産運用を検討し始めるという方が多いです。しかし、いざ制度を調べてみると、思わぬ落とし穴に戸惑うという声をよくいただきます。
4.1 40代に多いお悩み相談は「節税になると思い込んでいたが、受け取り時の税金や長期間の縛りがあることに驚いた」

4.2 【ファイナンシャルアドバイザー・横野会由子が回答】節税だけで決めつけず、資金の役割を分けて整理する
目的は今後変わる可能性もございますので、出来るだけ多くの選択肢を比較することも重要なのではないでしょうか。
どんな方法があり、どんな順番で始めていくのか、一例をご紹介します。
4.3 ポイント1:節税ありきでなく、自分に合った運用スタイルを選ぶ
まず見直したいのは、節税ありきではなく、自分に合った運用スタイルを見つけることです。iDeCoの出口戦略に不安を覚えたこの方は、手元のまとまった資金の運用先として、外貨建ての債券運用に着目しました。「株のように毎日の値動きを気にしなくて済む債券運用は、自分にとって精神的に楽だ」と気づいたように、税制優遇の有無だけでなく、日々のストレスが少ない運用方法を選ぶことは、長く資産形成を続けるうえで大切な視点になります。「せっかくまとまった資金を投入するなら、将来潤うことを期待して、為替の状況を見ながらタイミングを計りたい」という気づきの通り、一時払いの保険などを活用して手堅く増やす方針を固めました。
4.4 ポイント2:NISAだけに絞らず複数の選択肢を比較する
そのうえで、毎月の余剰資金を使った積立へとステップを進めました。その際、NISA一本に絞るのではなく、個人年金や変額保険など複数の選択肢を比較しています。「もしもの時の保障が不要ならNISAだけで十分だが、少しでも不安があるなら他の選択肢も有効だ」という理解は、まさに資産形成の王道と言えます。最終的に、NISAでは価格変動リスクを受け入れつつ、個人年金で手堅く安定性を確保するというように、それぞれの役割を分けて無理のない範囲で積立を始めることになりました。
4.5 ポイント3:分散投資とインフレ対策をアップデートし続ける
また、運用を続ける中で市場の急激な上昇に不安を感じる場面もありましたが、積立投資であれば時間を分散してリスクを抑えられるという仕組みに納得されました。「やってみないと分からない部分もあるが、まずは分散投資で始めてみたい」という言葉のように、世界株と日本株に分けて積立をスタートさせています。その後、給与の増加に伴って積立額を増やす段階になると、「給料が上がったので積立額を増やしたいが、インフレ対策として他の資産も気になっている」と話すように、現物資産である不動産投資などにも関心を広げていきました。資産状況の変化に合わせて、インフレ対策をアップデートしていく姿勢は、これからの時代に欠かせない考え方です。
世帯年収が上がり、税負担やインフレへの懸念が強まると、つい「一番得な制度はどれか」と正解を探してしまいがちです。しかし、節税効果だけで決めつける前に、手持ちの資金を「手堅く増やすもの」「リスクを取って増やすもの」「もしもに備えるもの」と一つずつ整理してみることが、自分らしい資産形成の出発点になります。
5. まとめにかえて
今回は、日本の富裕層の実態や、資産形成における節税の注意点について解説しました。世帯年収が上がると「一番お得な制度はどれか」と正解を探してしまいがちですが、節税効果だけで判断するのは危険です。手持ちの資金を「手堅く守るお金」「リスクを取って増やすお金」「もしもに備えるお金」に分け、ご自身のライフスタイルに合った選択をしていくことが大切です。
投資や資産形成に「絶対の正解」はありません。日々の生活を大切にしながら、無理のない範囲で一歩ずつ、ご自身の将来に向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 株式会社野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 総務省「令和7年度 市町村税課税状況等の調」
横野 会由子
