毎日家事や育児をしている人間として、夫がする家事は特別なものではないと断言できます。しかし、家事や育児を分担することで一人で背負い込むものが減り、イライラする回数が減りました。ある日、夫に家事や育児の手伝いを感謝する言葉をかけると、子供の前で褒められて照れていましたが、思わぬ本音をこぼしたのです。「下手に手を出すと叱られると思っていたから…」と。

夫の言葉に唖然としましたが、たしかに世の中には妻を怒らせないよう、あえて手伝わない夫もいることでしょう。思いもよらぬ告白に、これまでのイライラした思い出が走馬灯のように駆け巡りました。ストレスを感じたり、悩んだ日々が馬鹿らしく思えましたが、これもまた人生です。結局、筆者があえて下手に出て夫を褒めたことで本心を引き出したとポジティブに考えることにしました。

「家庭で求められている人」と思わせることの効果

仕事で忙しく、平日は家庭での存在感がゼロな夫ですが、家族から求められているという雰囲気を演出したことで自分から家事を手伝うようになりました。これまでは「気持ちを察して」と待ちの姿勢を貫いていましたが、戦略を変えて家事も育児も積極的に頼むようになりました。最初は下手に出る作戦なんて馬鹿げているかもという気持ちが半分ありましたが、今では実行して良かったと感じています。

求められる夫でいることに、嫌な気持ちになる人はいないでしょう。「あの人は気が利かないから」と諦めるのではなく、夫の性格を踏まえて作戦を練って攻略していくことが功を奏するのではないかと経験者として感じています。下手に出ることは自分を卑下しているようにも感じますが、状況を改善するためには時には必要な手段でしょう。

一人で家事や育児を抱え込むとストレスが増加するだけ

夫の「下手に手を出すと叱られると思っていた」という一言に拍子抜けしたものの、案外男性側は妻の怒りスイッチを押さないよう無言を貫いているのかもしれません。日頃から家事も育児も妻任せなので、「俺がやろうか?」と口をだしてペースを乱したくないという考えもあるのだと、結婚10年目にして気がつけて良かったと思っています。

「あのまま我慢していたらどうなっていたのだろう?」と折に触れて考えることもあります。状況を変えず、一人で何でも抱え込んだままだったら、心身ともに疲れて夫婦関係もギクシャクしていたことは間違いありません。こういった負の連鎖から脱出するためにも、あえて下手に出て夫を誘導する方が得策ではないでしょうか。

中山 まち子