4. 平均寿命は延び続けている—70歳からの「老後の時間」を考える

老後の家計を考えるうえで欠かせないのが、「あと何年ぶんの暮らしを支えるか」という視点です。厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」によると、2025年の平均寿命は男性81.35年、女性87.33年。前年(男性81.09年・女性87.13年)からいずれも延び、長寿化の流れが続いています。

ここでいう平均寿命とは、2025年に生まれた0歳の子どもが平均してあと何年生きるかを示した数字です。すでに年齢を重ねた方が「自分はこの先あと何年か」を考えるときは、平均寿命よりも「平均余命」のほうが実感に近い目安になります。平均余命とは、ある年齢の人がその先あと何年生きるかの平均を表したものです。

実際に、いま70歳の人の平均余命をみると、男性15.78年、女性20.10年です。つまり、70歳の男性は平均しておよそ86歳、女性はおよそ90歳まで生きる計算になります。70歳を迎えた時点でも、なお15年から20年ほどの時間が待っているのです。

ここで大切なのは、これがあくまで「平均」だということです。また、とくに女性は男性より4年ほど平均余命が長く、夫に先立たれたあとをおひとりさまとして過ごす期間が生じやすい点も見落とせません。長生きはよろこばしいことですが、その分、蓄えにも長く働いてもらう必要があります。90歳、95歳まで続く暮らしを想定して、資金の見通しを立てておくと、いざというときにあわてずにすむでしょう。

5. 元証券会社員からのアドバイス

70歳代の貯蓄は、二人以上世帯で平均2416万円・中央値1178万円、単身世帯で平均1489万円・中央値500万円でした。平均寿命が延びるなか、蓄えを「長く持たせる」視点が、これまで以上に大切になります。

証券会社で多くのシニアの資産のご相談を受けてきた立場から、70歳代の方に、今日からできることを3つお伝えします。

まずは「資産の寿命」を試算してみることです。いまある貯蓄を、年金でまかなえない毎月の不足額で割ると、蓄えがおよそ何年もつかの目安が出ます。先ほどの平均余命(70歳で男性約16年・女性約20年)と見比べれば、取り崩しのペースが速すぎないかを確かめられます。

次に取り崩しを「年単位」で管理することです。1年間に使う額を先に決め、毎月一定額を生活口座へ移すようにすると、使いすぎを防ぎ、蓄えを長持ちさせやすくなります。

そして医療・介護の備えを、生活費とは分けておくことです。長生きするほど、医療費や介護費がかかる期間も延びます。日常のお金とは別に、いざというときの予備費を取り分けておくと、急な出費でも蓄えを大きく崩さずにすみます。

宮野 茉莉子
人生を100年と考え、65歳からを老後とした場合、35年間。実に人生の3分の1が老後となります。その間、仕事による収入がなくなるからこそ、早くから「老後生活の備え」を考えることが重要なのです。現役世代の方の場合、今ある年金制度や資産形成などに関わる制度についても興味をもち、まず制度を知るところからはじめてみるのもよいでしょう。

参考資料

宮野 茉莉子