6つのセグメントに分けて見える減益の所在
エムスリーは6つの報告セグメントを持つ。1Qの中身を分けて見ると、減益の所在がはっきりする。
中核のメディカルプラットフォームは、売上収益255億円(前年同期比1.2%増)に対しセグメント利益88億円(同1.2%減)。会社の説明では、医療現場のデジタル化支援は堅調だった一方、利益率の高い製薬マーケティング支援の売上が前年同期を下回った。稼ぎ頭の伸びが鈍った点が、全体に効いている。
ブレーキが目立つのはサイトソリューションだ。売上収益141億円と前年同期比9.0%増で伸びたにもかかわらず、セグメント利益は前年同期比97.9%減とほぼ消失した。米国事業や居宅訪問看護事業での新規開設に向けた先行投資費用が、利益を一気に飲み込んだ格好である。
海外でも売上収益227億円(同9.8%増)と伸びつつ、先行投資を積極化してセグメント利益は▲4.9%。エビデンスソリューションは前年の大型・高収益案件の剥落でセグメント利益が▲33.1%と落ち込んだ。
裏を返せば、ペイシェントソリューションはセグメント利益が前年同期比66.2%増と伸びている。事業ごとに温度差が大きく、伸ばす事業と、投資で今は利益を抑えている事業が同居しているのが今の姿だ。
単体の連結利益だけでなく、この内訳に着眼して観察していくことが大切だろう。
売上は伸びるのに営業利益が踊り場、成長の質をどう見るか
視野を1四半期から数年に広げると、別の構図が見えてくる。過去5期の売上収益は2,081億円から3,513億円へと着実に伸びてきた。
ところが営業利益は、2022年3月期の951億円をピークに719億円、643億円、629億円と3期続けて後退し、2026年3月期に735億円へ持ち直したという経緯をたどっている。
ROE(自己資本利益率、株主資本がどれだけ利益を生んだか)も、この間に27.9%から12.5%へと大きく下がった。買収を重ねて事業の幅を広げる過程で、のれんや先行費用が積み上がり、売上の成長に利益と資本効率がついていかない時期が続いてきたと読み取れる。
もっとも、直近の営業利益率は2割を超え、サービス業の中央値である6%台を大きく上回る。ROE12.5%も業種の中央値8%台より高い。絶対水準の後退と、業種内で見た相対水準の高さが同時に成り立っている局面だ。
連続増益銘柄という響きから連想される右肩上がりのイメージと、利益がいったん踊り場を挟んだ実データを並べると、この会社の成長の質が見えてくる。
筆者コメント
売上の伸びと営業利益の踊り場を並べると、この会社の今の姿がつかみやすい。売上は増え続け、事業の幅も広がっている。にもかかわらず利益と資本効率は一度大きく下がり、いまようやく戻し始めた。
買収と先行投資という前向きな理由で利益が削られてきた期間が長かったことの裏返しでもある。
今回の1Qで市場が神経質に反応したのは、単なる一時的な減益というより、「投資が利益に変わる時期はいつか」という問いに、明快な答えがまだ見えないからではないだろうか。
サイトソリューションや海外の先行投資が、どの四半期から利益として顔を出すか。そこが成長の質を測る物差しになる。
株価の一日の値動きに一喜一憂するより、セグメント別の投資と回収のサイクルを、腰を据えて追っていくことをおすすめしたい。
参考資料
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石津 大希