決算の数字を見て株価が大きく動くと、良い決算だったのか悪い決算だったのかと身構える人は多いだろう。エムスリー(2413)は2027年3月期1Q決算の後に、株価を大きく下げた。
売上は伸びたのに利益は減る。この増収減益という組み合わせを、どう受け止めればよいのか。医療プラットフォームという事業の中身に降りて、数字を追ってみたい。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
増収でも利益が縮んだ2027年3月期1Q、株価はなぜ急落したのか
エムスリーの株価は、8月7日終値で1,530円となった。前日の1,841円から311円安、率にして▲16.9%の急落である。直近1カ月では7月末に一時1,900円台後半をつける場面もあったが、そこから一転して大きく水準を切り下げた。
下落は2027年3月期1Q決算の発表直後に起きている。株価がどこまで決算を映したのかを一言で断じることはできないが、市場が数字に敏感に反応した可能性は高いだろう。
ではその1Qはどうだったのか。売上収益(IFRS)は901億円で前年同期比4.5%増と、増収は保った。一方で営業利益は180億円と前年同期比▲8.6%、税引前四半期利益は186億円で▲5.3%、当期利益は105億円で▲21.8%と、利益は軒並み前年を下回った。
増収なのに減益となった理由はどこにあるのか。会社の説明によると、利益率の高い製薬マーケティング支援事業の売上が前年同期を下回ったことに加え、国内外での先行投資費用が利益を押し下げた。売上の伸びを、費用の増加が上回った四半期だったといえる。
通期では売上収益4,000億円(前期比13.8%増)、営業利益800億円(同8.8%増)という増収増益計画を掲げる。1Qの営業利益180億円は、その通期計画に対しておよそ4分の1弱の進捗にとどまる。年間を通せば計画線に乗るのか、下期の巻き返しが要るのか。ここが目先の焦点になる。
PER19倍台という水準が映すもの
直近時点のエムスリーのPER(株価収益率、株価が1株利益の何倍か)は19倍台、PBR(株価純資産倍率、株価が1株純資産の何倍か)は2.5倍台となっている。
医療従事者向けサイト「m3.com」を核に、製薬企業向けマーケティングから治験支援、人材、患者サポートまでを束ねる同社は、高い成長期待とともに語られてきた銘柄だ。そのイメージからすると、PER19倍台という水準は、市場平均と比べて特別に高いとはいえない。高成長のラベルと、目の前のバリュエーションの間には、いつの間にか小さくないずれが生まれている。
もっとも、PERやPBRの一点だけで水準の高低を語るのは危うい。利益が減れば分母が縮み、株価が動けば分子も動く。指標は今の株価と直近の利益の関係を写した鏡にすぎず、事業がこの先どれだけ稼ぐ力を取り戻すかまでは教えてくれない。
数字の水準よりも、減益がどこから来ているのかという中身にこそ、目を向けたい局面だろう。
