来月10月には今年5回目となる公的年金の支給日を迎えます。秋が深まるとともに、来年に向けた税制改正や社会保険の法改正に関するニュースも少しずつ報道され始める時期となりました。振り返れば、2026年1月に厚生労働省から発表された年金額改定により、国民年金(基礎年金と呼ばれる、原則すべての人が加入する年金)は前年度比1.9パーセント、厚生年金(会社員や公務員が上乗せして加入する年金)は2.0パーセントの増額が決定され、物価高が続く中での明るい話題として注目を集めました。

実務で資産形成のご相談を受けていても、「まわりの同世代は月にいくらくらい年金をもらっているのか」「自分の年金だけでやっていけるのか」と尋ねられる機会は非常に多くあります。親しい間柄であっても、他人のお財布事情や年金額は直接聞きづらいものです。だからこそ、公的なデータを通じて客観的な目安を知っておくことは、将来への安心につながります。

今回は、厚生労働省などの最新データをもとに、厚生年金の平均受給額のリアルを確認しながら、長寿化に伴う健康リスクと、豊かな老後を迎えるための具体的な対策について詳しく解説します。

なお、厚生年金の受給額や老後の家計・資産管理に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!
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1. 厚生年金の受給額「月額15万円」もらえる人はどれくらいいる?

厚生年金の平均月額と受給額の分布については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。

厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(国民年金の金額を含む)。1万円ごとの受給額分布をみると、10万円以上11万円未満が111万2828人と最も多く、次いで11万円以上12万円未満が107万1485人、15万円以上16万円未満が96万5035人と続きます。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じます。

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

将来の受給額に不安がある方は、まずはご自身の正確な年金見込額を把握することが何より大切です。日本年金機構が提供している「ねんきんネット(インターネット上でご自身の年金記録や見込額を確認できるサービス)」を活用したり、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」をしっかりと確認したりして、早い段階から老後の資金計画を立てていきましょう。

老後の資金計画を立てる上で決して忘れてはならないのが、寿命の伸びとそれに伴う健康リスクへの備えです。次の章で詳しくみていきましょう。

2. シニアの「約4人に1人」以上が直面する課題!長寿化の現実と「認知症」への備え

厚生労働省が公表する「令和7年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.35年、女性が87.33年。前年と比較して男性は0.25年、女性は0.20年上回っており、長期的にも大きく伸びています

このように長い老後を心豊かに過ごすためには、金融資産の形成に加えて、医療や介護のリスクに対する正しい理解が欠かせません。中でも、長寿化の進行に伴って避けて通れないのが「認知症」への備えです。

2.1 認知症の現状、「シニアの約4人に1人」認知機能に何かしらのサインが現れている状態

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)2/4

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)

出所:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」

65歳以上のシニア層3603万人を対象にした令和4年度(2022年度)の推計によると、65歳以上の高齢者における現状は以下の通りです。

  • 認知症: 約443万人(12.3%)
  • 軽度認知障害(MCI): 約559万人(15.5%)

認知症やその前段階とされるMCI(軽度認知障害)を含めると合計で約1002万人、およそ3人に1人が認知機能に関して何らかのサポートや注意が必要な状況にあると推計されています。認知症は今や身近な問題であり、MCI段階での対応が生活の質を左右します。

こうした背景から注目されているのが「終活」です。認知症による資産凍結や成年後見制度のリスクも、あわせて押さえておきたいところです。

3. 健康寿命を延ばす2つのアクション!運動習慣と学びの継続が家計を助ける

老後の生活の質を高め、経済的な負担を和らげるための前向きなアプローチとして、高齢期における「運動」と「学び」の重要性がデータからも浮き彫りになっています。ここからは、内閣府「令和8年版高齢社会白書」をもとに解説していきます。

3.1 高齢者の健康づくりに欠かせない「運動習慣」の実態

運動習慣のある者の割合3/4

運動習慣のある者の割合

出所:内閣府「令和8年版高齢社会白書(全体版)」

老後の自己負担を最小限に抑え、国の社会保障を健全に保つための最も有効な「自助努力」は、生活習慣病を防ぐための運動の実践です。白書によると、高齢化が進展する中でも、一定時間以上の運動を習慣化しているシニアの割合は高い割合を維持しており、とりわけ女性より男性、そして年齢層が高いシニアほど運動に意欲的です。高齢期における「運動習慣」の割合データは以下の通りです。

  • 75歳以上の男性の運動習慣割合:54.7%(約半数以上が実践)
  • 75歳以上の女性の運動習慣割合:44.4%
  • 65~74歳の男性の運動習慣割合:44.3%
  • 65~74歳の女性の運動習慣割合:36.4%

60歳代から70歳代前半の前期高齢者よりも、75歳以上の後期高齢者世代の方が日常的に身体を動かしている人の比率が高くなっています。

75歳を過ぎると要介護認定や受療のリスクが跳ね上がるため、「これ以上衰えたくない」というシニアの真剣な健康意識がこの高い数値を支えています。運動による病気の予防は、結果的に高額療養費などの公的保障にお世話になる回数を減らし、手元の年金資産を守る防衛策となります。

3.2 新しい学びが人生を豊かにする、約3割が「健康・福祉・介護」に関心

高齢者自身が健康寿命を延ばすために、単なる運動の実践に留まらず、体系的な学びの場に参加する動きが活発化しています。白書の「参加している学習活動」の調査において、何らかの勉強を行っているシニアは全体の28.4%を占めており、その学習プログラムは実生活に即したものになっています。

65歳以上の者の参加している学習活動4/4

65歳以上の者の参加している学習活動

出所:内閣府「令和8年版高齢社会白書(全体版)」

高齢者が参加している具体的な学習テーマは次の通りです。

  • 家政・家事(料理・裁縫など):12.0%(学習者の最多項目)
  • 芸術・文化(絵画、歴史など):10.6%
  • パソコンなどの情報処理(IT機器活用など):10.4%
  • 新しく得たい知識として「健康・福祉・介護」を選択した割合:30.5%

約3割もの高齢者が、自らの体調管理や介護予防に関する正しいリテラシー(知識を適切に理解し活用する能力)を身に付けたいと願っているのです。

正しい知識を学ぶことは、日々のちょっとした体調の変化に気づき、適切なタイミングで医療機関を受診できる判断力につながります。運動と学びの両輪で自己管理能力を高めることが、長い老後を力強く支える最高の武器となります。  

4. 医療費削減にもつながる!IFAが考える「健康という最大の資産」の守り方

金融の専門家として家計の相談に乗る中で強く感じるのは、「健康こそが最大の節約であり、最強の資産である」ということです。

老後の生活費を見積もる際、多くの方は食費や住居費に目が行きがちですが、実際には年齢とともに医療費や介護費の負担が家計を圧迫するケースが少なくありません。もちろん、日本の公的な医療保険制度や高額療養費制度(ひと月の医療費が上限を超えた場合に払い戻される制度)によって一定の自己負担に抑えられますが、通院のための交通費や、保険適用外のベッド代など、目に見えにくい細かな出費は確実に積み重なります。

だからこそ、日頃からバランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、定期的に健康診断を受診することが、結果として家計を守る強力な防衛策になるのです。健康であれば、長く働き続けて収入を得る選択肢も広がり、趣味や旅行に使えるお金と時間も増えます。毎月の収支計算や投資の勉強を行うのと同じくらい、「健康寿命をいかに延ばすか」という視点をライフプランの真ん中に据えることが、これからの老後準備には不可欠です。

5. まとめにかえて

今回は、厚生年金の平均受給額の現状と長寿化に伴う認知症リスク、そして健康寿命を延ばすための運動や学びの習慣について解説しました。

最新のデータから、厚生年金の平均月額は約15万円であることや、65歳以上の約4人に1人以上が認知機能低下のリスクに直面している現状が見えてきました。また、75歳以上の多くの方が運動を習慣化し、健康への学びを深めていることもわかりました。

年金制度の基本を正しく理解し、資産形成を進めることはもちろん大切ですが、同じくらい「心身の健康」という見えない資産を育てることが重要ですね。

参考資料

長井 祐人