近年、「デジタル遺産」という言葉を耳にする機会が増えました。キャッシュレス決済やネット銀行が普及した現代、故人の財産状況はかつてないほど「目に見えにくいもの」になっています。
紙の通帳や郵送物が届いていた時代と異なり、現在はアプリでの管理やペーパーレス化が主流です。「故人のスマートフォンが開けないと、どの銀行や証券会社、スマホ決済アプリに資産があるのかさえ分からない」と頭を抱えるご遺族は少なくありません。
しかし、注意すべきは「財産の探し方」だけではありません。仮に口座を見つけることができたとしても、口座が凍結される前に慌てて預金を引き出してしまうと、思わぬ法的リスクや親族間のトラブルに発展する危険性があります。
本記事では、見落としがちなデジタル遺産を効率よく探すステップから、口座凍結前の預金引き出しに潜む3つのリスク、そして葬儀費用などを安全に確保するための「預貯金の払戻し制度」まで分かりやすく解説します。万が一のときに慌てず、大切な家族の財産と自分自身を守るための知識として、ぜひ最後までお読みください。
この記事の3つのポイント
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デジタル資産は物理的な手がかりが乏しく発見しにくい -
死亡届提出と口座凍結は連動せず引き出しにはリスクが伴う -
葬儀費用等は「預貯金の払戻し制度」で最大150万円まで対応可
相続手続きの出発点:故人の財産をどう探すか
最も理想的なのは、故人がエンディングノートや資産の一覧を残していたケースです。
ただし、突然の別れであれば、そうした準備が整っていないことも珍しくありません。
その場合は、身近に残された手がかりを一つずつ確認していくことになります。
- 郵便物:金融機関からの取引明細書、カード会社からの請求書、各種通知
- メール:ネット銀行やスマホ決済アプリからの送付履歴
- スマートフォンのアプリ一覧:入っている金融・決済系アプリのチェック
- 確定申告書・源泉徴収票:配当や利子の記載が口座の手がかりになることもあります
ただ、スマホにパスコードがかかっていたり、メールを定期的に消す習慣があったりすると、これらの方法では手がかりを得にくくなります。
見当がついている場合は金融機関への「照会」を使う
取引していたであろう金融機関の見当がついているなら、直接「照会」という形で問い合わせることができます。
銀行やネット銀行、証券会社の多くは、次のような書類の提出によって、故人の取引状況を調べてくれます。
- 死亡の事実が確認できる書類(除籍謄本など)
- 照会者が相続人であることを証明できる書類(戸籍謄本など)
- 照会者ご自身の本人確認書類
注意したいのは、故人のオンラインアカウントに無断でログインして操作する行為です。これは各サービスの利用規約に違反する可能性があります。
必ず、各金融機関が案内する正式な相続手続きの窓口を通して進めるようにしましょう。
複数の金融機関にまたがる照会や、必要書類の収集に手間がかかると感じる場合は、司法書士や弁護士に依頼するという方法もあります。
費用はかかりますが、相続する財産の規模や手続きの煩雑さによっては、専門家に任せることで結果的に早く解決するケースもあります。
見つけにくい「デジタル遺産」への対処法
最近は、次のような目に見えにくい資産を持つ方も増えています。
- ネット銀行の口座(紙の通帳は発行されない)
- PayPayなどのスマホ決済サービスの残高
- 仮想通貨(暗号資産)
- ペーパーレス化された株式・証券口座
こうした資産は物理的な形として残らないため、ご遺族がその存在自体に気づかず、そのまま埋もれてしまうおそれがあります。
取引の有無すら分からない場合、次のような調査方法があります。
- ネット銀行:心当たりのある銀行に照会する(死亡事実と相続人であることが分かる書類が必要)。判明すれば、通常の相続手続きに進めます
- スマホ決済サービス:故人の端末が開けないと特定は難しくなります。残高を相続できるかどうかはサービスによって異なるため、個別に問い合わせが必要です
- 仮想通貨(暗号資産):心当たりの取引所に照会する(ネット銀行と同様の書類が必要)。特定できれば通常の相続手続きが可能です
- 株式・証券口座:証券会社が分からない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に必要書類を提出し、口座開設先を照会します(有料)。判明した証券会社や信託銀行で手続きを進めます

