「年金の不足分」を毎月分配型投資信託で補うという考え方

年金だけでは毎月の生活費が不足する場合、その穴埋め策として「毎月分配型投資信託」を活用するのも1つの考え方です。

毎月決まった分配金が口座に入ってくる仕組みは、年金の補填として魅力的に映ります。しかし、この商品を検討する際は、仕組み上のメリットとデメリットを正しく理解しておくことが重要です。

神田 翔平
65歳以上を対象に、毎月分配型投信を非課税で扱えるようにする「プラチナNISA」構想が話題となりました。結論から言うと、令和8年度税制改正で見送りとなり、現在は開始時期が白紙(STAY)の状態です。現時点では制度化されていませんが、「年金の不足分を分配金で補いたい」というシニア世代のニーズの高さを示す動きとして、知っておきたい知識の一つです。

毎月分配型投信のメリット・デメリット

デメリット:資産を「増やす」目的には不向き

  • 複利効果が得られにくい: 利益が出るたびに分配金として払い出してしまうため、利益を再投資して資産を大きく増やす「複利効果」が働きにくく、効率的な資産形成には向きません。
  • 元本が減るリスクがある: 運用成績が振るわない時期は、自分の預けた元本を取り崩して支払われる「特別分配金(元本払戻金)」となるため、知らないうちに資産全体が縮小してしまう可能性があります。

メリット:「お金に働いてもらい」資産が減るスピードを遅らせる

  • 資産の目減りを緩やかにする: 不足分をすべて銀行預金の取り崩しだけで賄うと、資産は右肩下がりに減る一方です。しかし、資産の一部を運用に回すことで「お金に働いてもらう」状態を作り、運用益を得ながら取り崩すことで、資産が減っていくスピードを遅らせる効果が期待できます。
  • 定期的な収入感を得られる: 毎月自動的に現金が入ってくるため、生活費の計画が立てやすく、精神的な安心感につながります。

補填策として活用する際のポイント

毎月分配型投信は「資産を増やすツール」ではなく、「資産を延命させながら上手に取り崩すツール」と割り切ることが大切です。

なお、活用する際は「手元の資産を全額投じないこと」が鉄則です。

日常の生活費や万が一の備え(数ヶ月〜1年分)は安全な預金として確保し、残りの「当面使う予定のないお金」の中で運用を行いましょう。

毎月分配型以外の選択肢:低コスト投信の定期売却サービス

「毎月決まった額が口座に入ってくる」という安心感を求める気持ちは、多くの人にとって自然なものです。

年金に上乗せする収入が定期的にあれば、老後の生活の見通しは立てやすくなります。

なお、この安心感は、実は毎月分配型投信でなくても得られます。

ネット証券などが提供する「投資信託の定期売却サービス」を使えば、現行のNISA(成長投資枠)に置いた低コストのインデックスファンドを毎月一定額ずつ自動的に売却し、現金化することができます。

信託報酬を抑えたまま、毎月分配型に近い受け取り方を自分自身で組み立てられる点が特徴です。

神田 翔平
毎月分配型投信と定期売却サービス、どちらが合うかはライフスタイルや資産状況によって変わります。「毎月決まった額が自動で入ってくる仕組みそのものに安心感がある」という方は毎月分配型、「コストを抑えたい」「NISAの非課税枠を活かしたい」という方は定期売却サービスが向いているケースが多い印象です。どちらを選ぶにしても、まずは現在の資産のうち「いくらまでを取り崩し・運用に回せるか」を整理するところから始めてみてください。

補填策として毎月分配型投信や定期売却サービスを検討する場合も、資産の全額を一つの商品に集中させることは避けてください。生活費数か月〜1年分は預金で確保し、残りの資産を「使う予定のない資産」として運用に回すと、市場が下がった時期に無理な取り崩しをせずに済みます。「年金+補填の仕組み+預金」という3つの柱で考えると、老後の資金計画がより安定しやすくなります。

まとめ

令和8年度のモデル年金は夫婦2人で月23万7279円とされていますが、実際に受給している人の平均は厚生年金で15万289円、国民年金で5万9310円にとどまり、モデルケースより少ない世帯のほうが多いのが現実です。

この差から生まれる「年金だけでは足りない」という不安が、65歳以上向けに毎月分配型投信を非課税にする「プラチナNISA」構想への注目につながりましたが、実際には令和8年度税制改正で見送りとなり、実現の時期はまだ見えていません。

制度が実現するかどうかにかかわらず、毎月分配型投資信託には元本を取り崩す可能性があり、資産を積極的に増やしたい人には向きません。

それでも、年金の不足分を預金の取り崩しだけで乗り切るよりは、資産の一部を運用に回しておいたほうが、目減りのスピードを緩められる可能性はあります。

ポイントは、資産をすべて毎月分配型に集中させず、生活費用の預金と運用資産をきちんと切り分けておくことです。今の資産をどこまで取り崩しに使い、どこから運用に回すのか、その線引きを一度整理してみることから始めてみてください。

参考資料