8月から9月にかけては、所得が一定の基準を下回る年金受給者に向けて、年金生活者支援給付金の請求書が順次発送される時期にあたります。
また、日本年金機構が2026年6月に公表した「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」でも、個人住民税が非課税となる限度額の目安が示されており、単身・65歳以上の場合で155万円(1級地)などと定められています。
こうした非課税水準の収入で暮らす高齢者が一定数いるなかで、生活保護制度については「働けない人や子育て世帯を支える仕組み」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし実際のデータを見ると、受給世帯の大きな割合を高齢者世帯が占めています。
とくに一人暮らしの高齢者は、年金収入だけで生活費をまかないきれないケースが少なくありません。
本記事では、生活保護を受けている世帯の内訳や高齢単身世帯の家計の実態を確認したうえで、生活保護の支援内容と生活扶助の支給額について整理していきます。
なお、65歳以上の単身無職世帯の家計収支に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. この記事を読むとわかる3つのポイント
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生活保護受給世帯の55.3%が高齢者世帯で、そのうち51.7%は単身世帯が占めている -
年金を受給していても、最低生活費に届かない場合は不足分を補う形で利用できる -
高齢者単身世帯の生活扶助額は東京都区部等7万7980円、地方郡部等6万6450円と地域差がある
2. 「生活保護を受けている世帯の半数以上が高齢者」というデータの中身
厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和8年5月分概数)」によると、2026年5月時点で生活保護を受けている人は約197万人(1,970,237人)にのぼります。
人口100人あたりに置き換えると、1.60人が生活保護を利用している計算です。
全体としては、被保護実人員数・被保護世帯数はいずれも前年同月から減っていますが、今回は新規の申請件数や保護開始世帯数といった「入り口」の数字も同様に減少しています。
- 保護の申請件数:2万991件(前年同月比2,037件減少・8.8%減)
- 保護開始世帯数:1万8062世帯(前年同月比1,860世帯減少・9.3%減)
では、実際に受給している世帯はどのような構成になっているのでしょうか。
【世帯類型別世帯数及び割合(保護停止中を含まない)】
- 高齢者世帯:55.3%
- 単身世帯:51.7%
- 二人以上世帯:3.6%
- 高齢者以外世帯(高齢者世帯を除く世帯):44.7%
- 母子世帯:3.4%
- 障害者・傷病者世帯:25.5%
- その他の世帯:15.8%
目を引くのは、単身の高齢者世帯だけで全体の51.7%を占めているという事実です。生活保護制度が、年金収入だけでは暮らしが立ちゆかない高齢のひとり暮らしを支える役割を担っている様子が読み取れます。
また、障害者・傷病者世帯は25.5%を占めており、前年同月と比べて3,389世帯(0.8%)増えています。
3. 年金をもらいながらでも申請できる?生活保護の基本ルールを整理
前の章で見たとおり、生活保護を受けている世帯の半数以上は高齢者世帯であり、その大半がひとり暮らしです。
生活保護は、暮らしに困っている人の最低限度の生活を保障し、自立を後押しするための制度ですが、「年金をもらっていると使えない」「持ち家があると対象外になる」と考えている方も少なくありません。
しかし実際には、公的年金を受け取っていても、それだけでは最低生活費に届かない場合、不足分を補うかたちで生活保護を利用できることがあります。
さらに、住まいがない状態でも申請そのものは可能です。居住用の持ち家についても、資産価値や暮らしの状況などを踏まえたうえで、そのまま持ち続けることが認められるケースがあります。
つまり生活保護は、働けない人だけを対象にした制度ではありません。
収入や資産を活用してもなお最低限度の生活を維持できない場合に、誰でも利用を検討できる制度だといえます。
それでは、高齢のひとり暮らし世帯の家計は実際にどのような状況にあるのでしょうか。
4. 65歳以上のひとり暮らし、毎月の家計はどうなっているのか
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとに、65歳以上の単身無職世帯の平均的な家計収支を確認してみましょう。
【65歳以上 単身無職世帯】
- 実収入:13万1456円
- 可処分所得(手取り収入):11万8465円
- 消費支出:14万8445円
- 毎月の赤字額:2万9980円
平均的なケースで、毎月およそ3万円の赤字が生じていることになります。
4.1 【シミュレーション】毎月約3万円の赤字が続くと、10年でいくら取り崩す計算になる?
上記の赤字額が同じペースで続いた場合、貯蓄からどれだけ取り崩すことになるのかを試算してみましょう。物価変動や収入の増減は考慮しない、単純計算による目安です。
- 1年間の赤字額:2万9980円×12カ月=35万9760円
- 10年間の累計:35万9760円×10年=約359万7600円
- 20年間の累計:35万9760円×20年=約719万5200円
65歳から85歳までの20年間で見ると、約720万円を貯蓄から取り崩す計算になります。「毎月3万円」という数字だけを見ると小さく感じられるかもしれませんが、老後の期間全体で積み上がると、まとまった金額になることがわかります。しかも、これはあくまで平常時の家計を前提とした目安に過ぎません。
厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、総所得のすべてを公的年金・恩給が占める世帯は41.3%にのぼります。
年金以外の収入源を必要としている高齢者が、決して少なくないことがうかがえます。
加えて、この家計収支には医療費や介護費、葬儀費用といった臨時の支出は含まれていません。
こうした事情を重ね合わせると、生活保護受給世帯の半数以上を単身高齢者世帯が占めているという冒頭のデータも、自然に理解できるのではないでしょうか。
それでは、生活保護では具体的にどのような支援が行われているのかを見ていきます。


