5. 「生活扶助」で受け取れる金額は?地域と世帯構成で変わる仕組み

生活保護は、誰にでも同じ金額が支給される制度ではありません。

世帯の収入と必要な支出を突き合わせ、不足する分を補う仕組みになっており、支援の中身は8つの扶助に分かれています。

  • 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱水費等)
  • 住宅扶助:アパート等の家賃等 定められた範囲内で実費を支給
  • 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費等
  • 医療扶助:医療サービスの費用。費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)
  • 介護扶助:介護サービスの費用。費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし)
  • 出産扶助:出産費用。定められた範囲内で実費を支給
  • 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用(高等学校等に就学するための費用を含む。)定められた範囲内で実費(高等学校等に就学するための費用の一部は定められた基準額)を支給
  • 葬祭扶助:葬祭費用。定められた範囲内で実費を支給

このうち、日々の暮らしを支える「生活扶助」の金額が気になる方は多いでしょう。

生活扶助の額は、住んでいる地域や世帯の人数、年齢構成によって変わります。

世帯構成:東京都区部等/地方郡部等

  • 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
  • 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万6450円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
  • 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円

これに、住宅扶助など対象となる扶助が上乗せされていきます。

同じ生活保護制度であっても、暮らす地域や世帯の構成によって受け取れる金額が変わることがわかります。

筒井 亮鳳
高齢者単身世帯の生活扶助額7万7980円(東京都区部等)という数字は、先ほど確認した65歳以上単身無職世帯の実収入13万1456円と比べると低く見えるかもしれません。ただし生活扶助とは別に住宅扶助が支給され、医療費・介護費は本人負担なしで扱われる点が大きく異なります。単純な金額の比較だけでは、制度の実像はつかめないのです。

6. 監修者コメント:「制度を知らないまま迎える老後」が、いちばんのリスク

中本 智恵

窓口で日々多くのお客さまのご相談をお受けしてきたなかで強く感じたのは、制度そのものを知らないまま不安だけを抱えている方が非常に多い、ということです。

生活保護というと身構えてしまう方もいらっしゃいますが、今回のデータが示すとおり、受給世帯の55.3%は高齢者世帯であり、その大半がひとり暮らしです。特別な誰かの制度ではありません。

もうひとつお伝えしたいのは、生活保護に至る前の段階にも使える制度がいくつもある、という点です。年金の上乗せにあたる給付金や、医療・介護の自己負担を抑える仕組みなどは、いずれも申請しなければ受け取れません。

制度を並べて確認しておきたい方は、【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説もあわせてご覧ください。

6.1 【シミュレーション】同じ「高齢者単身世帯」でも、住む地域で年間いくら変わる?

記事本文で確認した生活扶助額の例をもとに、東京都区部等と地方郡部等で受け取れる金額がどれだけ違うのかを年額換算してみましょう。生活扶助のみを対象とした、単純計算による目安です。

  • 高齢者単身世帯(68歳)の月額差:7万7980円-6万6450円=1万1530円
  • 年額に換算すると:1万1530円×12カ月=約13万8360円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)の月額差:12万2460円-10万8720円=1万3740円
  • 年額に換算すると:1万3740円×12カ月=約16万4880円

同じ世帯構成でも、住む地域によって年間13万円から16万円ほどの開きが生じる計算になります。これは地域ごとの物価や住宅事情の違いを反映したものであり、どちらが有利・不利という話ではありません。ただし、老後の住まいを検討する際には、家賃の水準だけでなく、こうした公的な支援基準にも地域差があるという視点を持っておくと、判断材料が増えるはずです。

なお、ここで示した金額はいずれも令和7年4月1日現在の基準にもとづく例です。生活保護の基準額は改定されることがあるため、実際に検討される際は、お住まいの自治体の福祉事務所で最新の基準をご確認ください。

7. まとめ

ここまで、生活保護を受けている世帯の内訳と、生活扶助の支給額について確認してきました。

データからは、生活保護の受給世帯の多くが単身の高齢者であるという実態が浮かび上がってきます。

また、昨今の物価上昇によって、日々の暮らしがより厳しくなっていると感じている方も多いのではないでしょうか。

とくに現役世代の方は、今の生活を維持することはもちろん、老後に向けた資産形成も並行して考えていく必要があります。

そのためには、保険料や通信費、光熱費といった毎月の固定費を少しでも抑え、余裕資金を生み出しておくことが有効です。まずはご自身で見直せる支出がないか、確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

筒井 亮鳳