9月を迎え、朝晩の風に秋の気配を感じる季節になりました。

夏の疲れが出やすいこの時期は、日々の健康管理とあわせて、老後の家計をじっくり見直す機会でもあります。

高齢期の家計で大きな比重を占めるのが医療費です。厚生労働省の調査では、75歳以上の1人当たり年間医療費は約95万円にのぼります。

2026年には「団塊の世代」が全員75歳以上となって後期高齢者医療制度への加入が進み、2025年秋には2割負担者への配慮措置も終了しました。「窓口での支払いが増えた」と感じる方は少なくないはずです。

本記事では、後期高齢者医療制度の窓口負担割合(1割・2割・3割)の判定基準と、実際にかかる医療費の内訳を整理し、家計として備えておきたいポイントを解説します。

1. 窓口負担は1割・2割・3割のどれ?世帯単位で判定される自己負担割合

後期高齢者医療制度では、加入者全員が一律の負担割合になるわけではありません。

所得や年金収入の水準に応じて、医療機関の窓口で支払う自己負担割合は「1割」「2割」「3割」のいずれかに判定されます。

【早見表】後期高齢者医療制度「窓口負担割合」の判定基準1/2

後期高齢者医療制度「窓口負担割合」の判定基準

出所:東京都後期高齢者医療広域連合神奈川県後期高齢者医療広域連合の公表資料をもとにLIMO編集部作成

  • 1割負担(一般所得者等):世帯内の被保険者全員の住民税課税所得が28万円未満の場合など
  • 2割負担(一定以上の所得がある方):世帯内に課税所得28万円以上145万円未満の方がおり、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」の合計が単身で200万円以上、2人以上世帯で合計320万円以上の場合
  • 3割負担(現役並み所得者):世帯内に課税所得145万円以上の方がおり、かつ収入の合計が単身で383万円以上、2人以上世帯で合計520万円以上(70〜74歳と同居の場合は合計520万円以上)の場合

窓口負担の割合は毎年8月に定期的な見直しが行われるほか、世帯構成や所得情報に変化があった場合にも随時再判定されます。現在の負担割合は、資格確認書やマイナポータルで確認できます。

1.1 世帯合算の落とし穴:「自分は低収入」でも3割負担になるケース

負担割合の判定でとくに注意したいのが、個人単位ではなく、同じ世帯の後期高齢者全員で合算して判定されるという点です。

「自分自身の年金収入は少ないから1割負担のはず」と考えていても、同じ世帯の配偶者に一定以上の所得(課税所得145万円以上など)がある場合、世帯全体が3割負担(現役並み所得者)と判定されることがあります。

収入が一方に偏りやすい夫婦世帯は、単身世帯に比べて世帯合計の収入基準(320万円や520万円など)を超えやすく、負担割合が上がりやすい傾向があります。「個人の収入」だけでなく、世帯全体の所得状況を把握しておくことが大切です。

2. 75歳以上の医療費は年間約95万円 通院・薬代が半分以上を占める

老後の医療費対策を考えるうえでは、実際にどれくらいの医療費がかかっているかを知っておくことも欠かせません。

厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」によると、年齢層別の1人当たり年間国民医療費は次の通りです。

  • 65歳未満:約22万円
  • 65歳以上:約80万円
  • 75歳以上:約95万円

75歳以上は65歳未満と比べて医療費が約4.4倍にのぼる計算になります。

加齢に伴い高血圧や糖尿病などの慢性疾患が増え、通院や検査、入院の機会が増加することが主な要因です。

また、75歳以上の1人当たり年間医療費と内訳は以下の通りです。

75歳以上の1人当たり年間医療費と内訳(令和5年度)2/2

75歳以上の1人当たり年間医療費と内訳

出所:厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 入院医療費:37.1%
  • 入院外(外来・通院)医療費:34.7%
  • 薬局調剤医療費(薬代):17.6%

外来費用(34.7%)と薬代(17.6%)を合わせると、全体の52.3%と半分以上を占めています。

1回あたりの窓口負担は小さく見えても、毎月の通院や処方薬の支払いが一年間積み重なることで、家計を圧迫する「隠れ固定費」となります。

3. 監修者からのコメント

熊谷 良子

窓口負担の割合だけでなく、実は「高額療養費制度」の自己負担限度額も、負担割合と同じ所得区分にもとづいて細かく分かれています。

住民税非課税世帯では外来・入院を合わせた自己負担が月8000円程度に抑えられる区分がある一方、現役並み所得者(3割負担)では所得区分に応じて月8万円台から25万円台まで、より高い自己負担限度額が設定されており、所得が上がるほど上限も引き上がる仕組みになっています。

窓口での支払いが増えたと感じたら、まずは加入している後期高齢者医療広域連合の窓口やマイナポータルで、自分の所得区分と自己負担限度額を確認してみましょう。

入院や高額な治療が想定される場合は、事前に「限度額適用認定証」(マイナ保険証利用者は原則不要)の手続きを済ませておくと、窓口での立て替え負担を1か月分の限度額までに抑えられます。