4. 30年国債利回り5%が引き起こす「アセットアロケーション」の変化
金利の動向でもう一つ重要なのが、絶対的な金利水準の高さです。2026年7月20日時点で、米国の30年国債利回りは5.11%に達しています。これは、リーマンショック直前の2007年に記録したピークである5.35%に再接近する高い水準です。
この「長期金利5%」という数字は、投資家の心理に大きな影響を与えます。米国債は、米国政府が破綻(デフォルト)しない限り元本が保証される極めて安全性の高い資産です。その安全な資産で、年間5%もの利回りが長期間にわたって確定するのです。
インタビュワーから「米国株のインデックス投資の長期的な期待利回りが約7%と言われる中、元本が戻ってくる債券で5%の利回りが得られるなら、そちらでも十分なのではないか」という疑問が投げかけられると、泉田氏は次のように答えます。
「株じゃなくて債券を買いたいなという人も出てくる。これが『アセットアロケーション』なんですよ。株を売って債券を買う動きが出てくるんだとすると、株式市場も今まで通りではないよね」
アセットアロケーションとは、自分の資産を株式、債券、現金などのどの資産(アセット)に、どのような割合(アロケーション)で配分するかを決めることです。
金利が低い時代であれば、債券を持っていてもほとんど利息がつかないため、投資家はリスクを取って株式市場に資金を振り向けます。しかし、ノーリスクで5%の利回りが得られるとなれば話は別です。現在の株式市場は、AI関連銘柄を中心に1日で数パーセントも乱高下する激しい相場となっています。こうしたハイリスクな相場に疲れた投資家や、確実なリターンを求める機関投資家が、「割高な株を売って、安全で利回りの高い債券を買う」という行動に出る動機が十分に揃っているのです。
5. バブル相場との向き合い方:「音楽が鳴っているうちは踊れ」
信用買い残の膨張、長短金利差の特殊な形状、そして長期金利の高止まり。これら複数のデータが、相場がいつ反転してもおかしくない土台が形成されていることを示しています。JPモルガンのダイモンCEOが「市場はリスクを過小評価している」と警告する背景には、こうしたマクロ経済の客観的なデータがあるのです。
では、私たち一般の投資家はこのような相場環境とどう向き合えばよいのでしょうか。ウォール街には「音楽が鳴っているうちは踊れ」という有名な格言があります。これは、相場が上昇している間は、その波に乗って利益を追求すべきだという考え方です。泉田氏はこの格言の真意について、バブル相場の特徴を交えて解説します。
「バブルでよくある現象なんですけど、最後が一番上がるんですよ」
相場の最終局面では、「今買わなければ乗り遅れる」という心理が働き、株価が垂直に打ち上がるような急激な上昇を見せることがあります。そのため、ギリギリまで相場にとどまることで大きな利益を得られる可能性があります。しかし、その反面、相場の反転も非常に早いという恐ろしさがあります。
「いつ音楽が止んでパーティーが終わるか分からないんですよ。これがバブルです」
暴落がいつ起きるのか、その正確なタイミング(ゼロデイ)を事前に当てることは、プロの投資家であっても至難の業です。リスクを承知の上で最後まで踊り続けるか、あるいは相場の過熱を警戒して、安全な債券運用などに資金を避難させるかは、投資家個人のリスク許容度次第となります。
しかし、日々の値動きに一喜一憂せず、長期的な資産形成を目指す初心者にとっては、より堅実なアプローチがあります。泉田氏は、一般の投資家が取るべき王道の戦略を次のように結論付けます。
「普通の人はよく言われる話だけど、積立投資をして、高い時は少なく買って安い時はいっぱい買うというのがいいかなという気はします」
これは「ドルコスト平均法」と呼ばれる投資手法です。毎月一定の金額で機械的に買い続けることで、株価が高いときには少ない数量を、株価が暴落して安いときには多くの数量を買うことができます。
市場に暴落のシグナルが点灯しているからといって、慌てて全ての株を売却する必要はありません。また、必ずしも暴落が起きると決まっているわけでもありません。重要なのは、現在の市場がどのようなメカニズムで動いており、どのようなリスクが潜んでいるのかをデータに基づいて客観的に理解することです。その上で、自らのリスク許容度に合った投資ルール(積立投資など)を淡々と守り続けることが、不確実な相場を生き抜くための最大の防御となるのです。
6. まとめ
- 過去最高水準の信用買い残は、相場下落時に追証による「投げ売り」を誘発し、暴落を加速させるリスクがある。
- 将来の不況を織り込む「逆イールド」は解消されたものの、再逆転リスクを孕む特殊な形状であり、市場の警戒感は拭えていない。
- 30年国債利回りが5%を超える中、ノーリスクで高い利回りを求めて、株式から債券へ資金を移すアセットアロケーションの変化が起こり得る。
- バブル相場は最終局面で最も上昇するが、反転のタイミングを当てることは不可能なため、初心者は淡々と積立投資を継続することが推奨される。
参考資料
- FINRA「Margin Statistics」
- セントルイス連邦準備銀行「FRED T10Y2Y」
- 米財務省「Daily Par Yield」
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
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