10. 【FPコラム】40代・子育て世代の資産形成:漠然とした不安を解消する「目的別の色分け」と「長期投資」の考え方

子育てや日々の仕事に追われる中、ふと将来のお金に対して漠然とした不安を感じることはありませんか?

今回は、ある40歳代のご相談者様が面談を通じてその不安を解消し、我が家に最適なロードマップを見つけるまでのヒントをご紹介します。

10.1 資産形成に取り組む中で生まれる「漠然とした不安」の正体

40歳代のお客様
すでに資産運用は始めているのですが、今のやり方がベストなのかが分からなくて…。

子どもの教育資金や自分たちの老後を考えると、本当にこれで大丈夫なのか不安で、一度家計の全体像をしっかり見直したいのです。

働き盛りで、これから教育費や生活費のピークを迎える子育て世代。そうした中で、「老後資金に対する漠然とした不安」を抱えている方は本当に多くいらっしゃいます。

将来のためにと、ご自身でNISAなどを始めてはみたものの、「本当にこのやり方で、この金額で足りているのだろうか……」と、現状の取り組みにいまひとつ自信を持てずにいるケースも少なくありません。

以前、私のところにご相談にこられた40歳代のある子育て中の方も、同じようなお悩みを抱えていらっしゃいました。

その方はすでに、ご自身なりに調べてNISAや共済をスタートされていました。

しかし最初の面談では、「我が家全体で見たときに、このやり方がベストなのかが分からないんです。子どもの教育資金や自分たちの老後を考えると、本当にこれで大丈夫なのか不安で、一度家計の全体像をしっかり見直したい」と、率直な思いを打ち明けてくださいました。

そこで、まずは現状を整理し、将来のライフプランに基づいたシミュレーションを行ってみました。すると、年金以外に個人で準備すべき「具体的な必要額」が数字として見えてきます。

その金額の大きさに「やはり具体的な対策が必要ですね」と驚かれる一方で、「いざ本格的に運用を増やすとなると、元本割れなどのリスクを自分で負ってまで、自信を持って銘柄を選べる気がしません……」という投資への不安や、「万が一の備えとはいえ、毎月の固定費になる保険を増やすのはちょっと抵抗がある」といった、本音の迷いも口にされていました。

「何から手をつければよいか分からない」という状態から、どのように頭の中を整理し、一歩を踏み出していったのか。私たちが面談を通じてたどり着いた、安心の資産形成に向けた3つのヒントをご紹介します。

10.2 資産形成の「手段」を「目的」に合わせて使い分ける

資産運用への不安を和らげるための第一歩は、お金を準備する「手段」を、それぞれの「目的」に合わせて賢く使い分けることです。

面談を重ねる中で、相談者様は「運用は大事だけれど、自分で銘柄を選ぶ自信がないからこそ、万が一のときに保障(保険金など)がついている保険も魅力的に思える」という、大切な気づきにたどり着かれました。

資産形成には、大きく分けて2つのアプローチがあります。

効率よく「増やす」ための手段(NISA、iDeCoなど)

運用の成果(値上がり益など)に税金がかからない税制優遇を活かして、お金を効率よく、大きく育てていくための手段です。

「保障(もしもの備え)」を確保しながら備える手段(変額保険など)

万が一のときの死亡保障などを持ちながら、同時にお金も運用していく手段です。

完全に「自己責任の投資」だけで進めるのが不安な方にとって、保障という「安心の土台」がセットになっていることは大きな心の支えになります。

どちらか一方だけに偏る必要はありません。「リスクを自分でコントロールしながら能動的に増やす枠」と、「もしもの保障を確保しながら着実に備える枠」を、ご自身のライフスタイルや気持ちのゆとり(リスク許容度)に合わせてバランスよく組み合わせることが、長期的な安心感につながるのです。

10.3 使う時期に合わせた「資金の色分け」と適切な置き場所

次に大切なのは、お金が必要になる「時期(時間軸)」に合わせて、資金の置き場所(金融商品)を決めることです。すべてのお金をひとまとめにして考えるのではなく、いつ使うお金なのかによって「色分け」をしていきます。

「近い将来」に使う資金(例:数年後にやってくる子どもの教育資金など)

近い将来に使うことが確定しているお金は、一時的な値下がりリスクを避ける必要があります。価格変動が少なく、将来受け取れる額がはっきりしている「債券」や、手堅い元本確保型の方法で確実に準備するのが鉄則です。

「遠い将来」に使う資金(例:数十年の時間がある老後資金など)

使うまでに十分な時間があるお金は、物価上昇(インフレ)からお金を守るためにも、株式など成長が期待できる資産で積極的に運用するのが適しています。

この考え方をお話ししたところ、相談者様からも「教育資金は手堅い方法(債券など)でしっかりキープして、その分、老後の介護への備えなどは長い時間をかけてじっくり運用を続けていけば良さそうですね」と、非常にクリアなご意見をいただきました。

このように、時間軸に合わせてお金を配置する(アセットアロケーション)ことで、家計に無理のない、納得のいく準備計画が作れるようになります。

10.4 「長期・分散」と時間を最大限に活かすアプローチ

「自分で投資先を選ぶ自信がない」「損をするのが怖い」という不安は、実は正しい「資産運用のルール」を知ることで大きく和らげることができます。

特に、老後資金のように「使うのがずっと先」の資産形成では、以下の2つのルールが強力な味方になってくれます。

「時間」を味方につける(長期投資)

投資する期間が長くなればなるほど、一時的な値動きのブレ(リスク)は平準化され、結果として安定したリターンに落ち着きやすくなります。

「世界」にまるごと投資する(分散投資)

1つの国や企業だけでなく、世界中のたくさんの企業に分散して投資する「株式型の投資信託」などを活用すれば、一部の企業の業績悪化による大ダメージを防ぐことができます。

最初は「自分で銘柄を選べない……」と不安そうにされていた相談者様も、「老後までたっぷり時間があるからこそ、世界の株式に広く分散されたファンドを選び、毎日の値動きに一喜一憂せずじっくり持ち続けることが最大の対策になるんだ」と理解を深められ、驚くほど前向きな表情に変わっていかれました。

11. 筆者からのコメント:まずは「現状の整理」から、安心の未来へ

 

菅原 美優

老後の資金準備について、「何から手を付ければいいか分からない」と立ち止まってしまうのは、とても自然なことです。

しかし、「自分には投資は向いていない」「運用の才能がない」と決めつけてしまう前に、まずはご自身の家計や将来の計画を可視化し、「NISA」「iDeCo」「保険」「債券」といった様々な選択肢をテーブルに広げて、1つずつ整理してみることをおすすめします。

大切なのは、どれか1つに100点満点を求めることではありません。

ご家族の将来設計に合わせて、それぞれの手段の役割を理解し、バランスよく組み合わせていくことです。

参考資料

菅原 美優